作家・東野圭吾の同名ベストセラー小説の実写映画化となる『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が9月23日(土・祝)に公開。本作で、児童養護施設「丸光園」でセリ(門脇麦)と共に育ち、その生い立ちから心に傷を抱える川辺映子を演じた山下リオさんにインタビュー。
◆最初に本作の台本を読んだ時の印象を教えてください。
ファンタジーな雰囲気になるのかなという感じがして、レースの糸のような、繊細で優しい作品だなと思いました。
◆演じた映子は難しい役どころだったのでは?
そうですね。強く生きていこうとしていたんですが、心のヒビはあって、あるきっかけでそれが割れてしまって…。私自身もすごく弱い部分があるので、映子の気持ちを分かり切ってはいないかもしれませんが、そういうもろい部分に関しては共感できました。
◆実際に演じる部分以外の、人物のバックグラウンドにいろいろなことがある役柄ですが、撮影に入る前に考えたことは?
「丸光園」ではどう過ごしたんだろうとか、そういう部分は台本には説明がないので、いろいろ想像を膨らませながら、という感じでした。
◆完成した映画はご覧になりましたか?
はい。最初に台本を読んだ時にファンタジーだと思ったのはぜんぜん違っていて、やっぱり廣木監督が撮るからこそ、みんな人間くさかったりして本当に繊細な作品だなと思いました。
◆廣木組の現場はいかがでしたか?
本当に幸せな現場でした。デビューしてすぐくらいに短編のドラマでご一緒したことがあって、それ以来の作品だったので約10年ぶりにお仕事をしたんです。
◆ちなみにその作品は?
「麻婆少女」という作品です。私、その作品のことも廣木監督のことも、強烈に覚えていたんです。ずっとお仕事をしたいなと思っている中で、今回お話をいただいて。廣木監督ってそんなに説明をされない方で、役者を信じ切ってくれる方なんだろうって私も信頼を寄せていたので、心配事はまったくなかったです。
◆門脇麦さんとの共演はいかがでしたか?
すごく好きで気になる女優さんだったので、共演の話を聞いたときはすごくうれしかったですし、ドキドキ、ワクワクしました(笑)。
現場で最初にお会いしたのが、2人の関係性があって初めて成り立つシーンだったので、少し不安がありました。
でも、お芝居を通じてこんなにあったかいんだって、自分で感情を作らなくても自然と感情が生まれていく瞬間がたくさんあって。
麦ちゃんとはそのワンシーン目から信頼関係ができて、麦ちゃんでよかった!って思いました。
◆デビューから10年ですが、振り返っていかがですか?
私はけっこう三日坊主というタイプなんですけど(笑)、このお仕事に飽きたことは一度もなくて。現場にいるのが大好きなんです。
この先もやりたいって思えるお仕事に出会えてよかったなと思いますし、廣木監督との出会いもそうですが、いろいろな出会いがあって、すごく幸せだなって思います。
◆たくさんの作品に出演してきましたが、自分の成長を感じる部分はありますか?
うーん…(考え込む)。お芝居で言ったら、昔の作品を見返したときに、何にも考えてないときのお芝居のほうがなんか良かったなあと思うこともあるんです。
でも、自分自身、山下リオとして生きてきた時間も積み重なってはいるので、その分、いろんな引き出しは以前より増えていると思うんです。
良くも悪くもなんですけど、すごく考えるようになったというか…。意味を考えるようになりましたね。
でも、確実に言えるのは、お芝居をしている時間は今のほうが楽しいです。たくさんの役者さん、監督さんと出会って、ちょっとずつ自由になれてきたというか。
セリフがないときの間だったり、いかようにもできるんだということを最近思って。
けっこう視野は広くなったのかなあと思います。
◆山下さんにとって女優というお仕事の醍醐味は?
やっぱり、いろんな役柄を通じて人生経験を積めるっていうことはありますね。
あまり自分の感覚を信用はしていないですけど、“山下リオではなかった時間”みたいなものの意識はちょっとあって。それが、分身じゃないですけど、細胞の1つひとつに入っていってる気がするんです。
◆それでは、これから映画を見る方へのメッセージをお願いします。
たくさんの登場人物がいる中で、感情が複雑に重なっていて、それがすごくあったかいんです。さまざま人に感情移入できるので、あったかいなって思う人がいてもいいし、悲しくなる人がいてもいい。それでも最後にちょっと何かが心に残る気がするんです。それをちゃんと感じてもらえたらいいなと思います。
■PROFILE
やました・りお…1992年10月10日生まれ。徳島県出身。
2007年「三井のリハウス」12代目リハウスガールに抜擢され、注目を集める。08年、映画「魔法遣いに大切なこと」で初主演。主な出演作は「武士道シックスティーン」(10)、「ほしのふるまち」(11)、「はじまりのみち」(13)、「シャニダールの花」(13)、「セブンデイズリポート」(14)、「コトコトコトコ」(14)など。2018年には「伊藤くん A to E」「寝ても覚めても」が公開予定。
■作品情報
<ストーリー>
2012年。少年時代を養護施設で過ごした敦也(山田涼介)は、幼なじみの翔太、幸平と悪事を働いて1軒の廃屋に逃げ込む。そこはかつて人々が悩み相談をすることで知られていた「ナミヤ雑貨店」だった。今はもう廃業しているはずだったが、シャッターの郵便受けに何かが投げ込まれる音を聞く。それは、悩みを持つ人からの相談の手紙だった。何と、その手紙は1980年に書かれたものだった。敦也たちは戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治(西田敏行)に代わって返事を書く。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、その背景にある敦也たちがいた養護施設と浪矢の知られざる関係。
そして、これまで誰かのために何かを真剣に考えたことなど一度もなかった3人が気付いていく他者とのつながり。
敦也たちが雑貨店の秘密をすべて知った時、1980年にいる浪矢との手紙のやりとりでもう一度再生する希望をもつ。
悩みを相談した人々をつなぐ奇妙な運命。その日、敦也たちに起きたのは、時空を超えたたった一夜だけの奇蹟だった。
原作:東野圭吾(『ナミヤ雑貨店の奇蹟』角川文庫 刊)
出演:山田涼介、村上虹郎、寛一郎、成海璃子、門脇麦、林遣都、鈴木梨央、山下リオ、手塚とおる、PANTA、萩原聖人/小林薫/吉行和子、尾野真千子/西田敏行
監督:廣木隆一
脚本:斉藤ひろし
主題歌:山下達郎「REBORN」(株)ワーナーミュージック・ジャパン
配給:KADOKAWA/松竹 (共同配給)
公式サイト:namiya-movie.jp
公式twitter:https://twitter.com/namiya_movie
©2017「ナミヤ雑貨店の奇蹟」製作委員会