8月2日(火)に放送される『夏休みドラマ「キッドナップ・ツアー」』(NHK総合 後7・30)。父子の“ユウカイ旅行”を描いた角田光代の同名小説を映像化した本作。主人公のダメ親父・タカシを演じた妻夫木聡さんが、役への向き合い方、そしてご自身の父子の絆を語ってくれました。さらに、タカシの娘・ハルを演じた豊嶋花ちゃんもゲスト登場! 2人の仲むつまじいやり取りは必見です。
――本作のオファーを受けたときの感想をお願いいたします。
うれしかったですね。父親役というか、親子が軸になった作品はあまりオファーされたことがなかったので、岸(善幸)監督がそういう目線で自分を見ていただいていたと思うとうれしかったです。
――今回、父親役を演じられてみて、いかがでしたか?
初日に岸監督から「妻夫木さんらしい、父親っぽくない感じのほうがこの作品としては合っている」と言われたので、あまり父親ということを意識せずタカシを演じました。でも、父親役をやってみて「自分もそういう年になったんだなあ」と少し感慨深くもあって。実際に子供を持つ知り合いたちを見ると、本当に父親のにおいがするんですよね。それを子供がいない僕でも出さなきゃいけないっていうのは課題でしたが、今回タカシを演じてようやく大人の仲間入りができたのかなという気持ちもあります。
――タカシの魅力というのは?
自由なところじゃないですかね。人って意外と子供じゃないですか。みんな子供でいたいと思っていると思うし、大人になったから遊んじゃいけないというわけでもない。人目とか世間体を気にせず子供と一緒にばかができるって、それはそれで魅力だと思うので、そういうところがタカシのよさであり、見習うべきところだと思いますね。タカシはどうしようもない男ですが、不器用でどこか放っておけなくなるようなかわいげもあるし、実は情に深い部分もある。だから、父親らしく振る舞わない点もそうですが、人間らしい部分を残すことはすごく意識していました。タカシの娘・ハル役の豊嶋花ちゃんも最初からぶつかってきてくれたので、構えずに撮影できてすごく楽でした。友達以上父親未満みたいな距離感でいられたんじゃないかなと思います。
――撮影はオールロケだとうかがいました。特に印象的な場所はありましたか?
キャンプは印象的でした。“テントを張ってキャンプする”という経験が僕にはまだないので、ハルと一緒に寝てみて、いつか自分もこういう立場になったらやってみたいなと思いました。穴が開いたテントだったんですが、そこから見える星は余計にきれいに見えるというか、いつも当たり前にある星が、その小さい穴から見るととてもキラキラして見えて。気づかないものが見える瞬間っていうんですかね。すごくよかったです。
――妻夫木さんの「理想の父親像」というのは?
「あれダメ、これダメ」って父親にはなりたくないですよね。だから、タカシよりは父親らしくありたいけど、ある程度はタカシとハルのような距離感でもいいのかなと思いました。子供と同じ立ち位置で、同じ目線でいろいろなことを話せるような親子関係を築いていきたいですね。
◆ここで、ハル役・豊嶋花ちゃんが急きょインタビューに参加!
――ハルを演じてみて、自分と似ているところはありましたか?
豊嶋 (ハルと)似ているところは、ちょっと冷めたところです。
妻夫木 えー!そんな子だったっけ!?(笑)
豊嶋 いろんなことが面倒くさいというか…。ハルちゃんと一緒で、私もたまに面倒くさがり屋なところがあるので、そこはちょっと似ていると思いました。
妻夫木 そうだったの? 一生懸命だったじゃん!
豊嶋 そうかなあ?(笑)
――妻夫木さんはどんなお兄さんですか?
豊嶋 最初、お父さん役はお笑い芸人さんみたいな面白くてもうちょっと年が離れてる人かと思っていたので、妻夫木さんだと聞いて「えーっ!?」ってびっくりしました。お母さんも妻夫木さんのことが好きだったので(笑)、家族みんなびっくりしていました。ずっと演技がうまい方ってイメージだったんですけど…。
妻夫木 大したことなかった?
豊嶋 えーっ!? 違う違う!(笑)「演技がうまい」に「面白い」がプラスされて、撮影期間中もすごく面白かったです。撮影現場を盛り上げてくれました。
――一番楽しかったシーンはどこですか?
豊嶋 うーん…。全部楽しかったんですけど、バーベキューのシーンの火起こしとか、そのときのやりとりがすごく楽しかったです。
妻夫木 楽しかったね~。
豊嶋 あと、小道具のガラケーでラジオをやったりして…。
妻夫木 ラジオやったね~。でも、それ全く通じないと思うよ(笑)。
豊嶋 カメラの部分を手で押さえて、マイクのとこに2人で…。
妻夫木 (笑)。ガラケーをボイスレコーダーみたいな使い方して遊んだんですよ。最初に僕が「DJタカシです。今日のゲストはハルさんです」って言って。
豊嶋 次は私が司会になって、「今日のゲストは『キッドナップ・ツアー』に出演するタカシ役の…」
妻夫木 そんな上手じゃなかったよ~(笑)。「『キッドナップ・ツアー』の、えっと、主役を、えっと…つまぶきさんです」みたいな感じ。
豊嶋 だっていきなりだったから…(笑)。
――(笑)。妻夫木さんとは仲良くなれましたか?
豊嶋 はい! 2週間ずっと一緒だったので、演技の勉強になったし、合間に遊んだのも楽しかったし、仲良くなれました。
――ありがとうございます! 最後に、妻夫木さんから作品をご覧になる方へ向けてメッセージをお願いします。
妻夫木 僕自身まだ父ではないので説得力はないんですが、父と子の在り方に「こうあるべき」ってものはないと思うんです。もっともっと子供の声を聞くべきだけどそれが聞けないのが父と子の関係性であり、不器用でもいいからただ一緒にいることも大事だと思うんですよね。以前、僕が芝居でつまずいたとき親に電話したことがあったんです。そのとき、おやじは僕が何も言わなくても分かってくれて「大丈夫だ」って言葉をかけてくれました。父と子って言葉じゃなくても通ずる何かが確実にあって、このドラマにはそれが描かれていると思います。言葉にならない親子の絆みたいなものが再確認できるようなお話だと思うんですよね。それを感じ取ってもらえたらうれしいです。
PROFILE
妻夫木聡●つまぶき・さとし…1980年12月13日生まれ。福岡県出身。O型。映画『怒り』が9月17日(土)に全国東宝系にて公開。
豊嶋花●とよしま・はな…2007年3月27日生まれ。東京都出身。
番組情報
『夏休みドラマ「キッドナップ・ツアー」』
NHK総合 8月2日(火)後7・30放送
【STORY】
夏休み初日、小学生のハル(豊嶋)は、行方が分からなくなっていた父・タカシ(妻夫木)に“ユウカイ”される。タカシの車に乗って旅をする中で、ハルは今まで知らなかった父の姿に気づき始める。
【STAFF&CAST】
原作:角田光代
脚本・演出:岸善幸
出演:妻夫木聡、豊嶋花、木南晴夏、夏帆、新井浩文、ムロツヨシ、満島ひかり、八千草薫 ほか
公式HP:http://www4.nhk.or.jp/kidnaptour/
●取材/金沢優里