日本舞踊を身近に感じてもらうイベント『未来座SAI 大人のたしなみ講座~日本舞踊~』が5月27日、都内で開催された。
このイベントは、6月に上演される日本舞踊協会3年ぶりの新作、日本舞踊未来座『賽 SAI』の鑑賞前に、日本舞踊をもっと知って、身近に感じてもらおうと企画されたもの。第一線で活躍する舞踊家たちを講師に招き、3段階に分けて初心者でも楽しめる講座を開講した。
第一限講座「美しい所作を!」では、NHK大河ドラマをはじめ数々の作品で所作指導をしている橘芳慧先生が、日常生活でも実践できる美しい所作を講義。まずは「歩く」「お辞儀」という基本からスタート。背筋を伸ばして真っすぐ歩く、相手を敬い丁寧にお辞儀するというのは、意外にも難しく苦戦の連続。1人ひとりに熱心な指導が行われ、最終的にはどの参加者も見違えるほど美しく振る舞えるようになった。
講師を務めた橘流三代目家元 橘芳慧先生は「所作を身につけると立ち居振る舞いが美しくなり、生活そのものまで変わってきます。講座で初めて所作に触れた方も多かったと思いますが、何か一つでも新しい気づきがあったらうれしいです。人それぞれ顔も体も異なるように、同じ所作でも人によって違った表現になります。日本舞踊も同じ動きをしても舞踊家によりそれぞれの美しさがあり、本当に面白いものです。けれども、日本舞踊は自国の文化でいながら、今まで見たことがないという方がほとんど。一度見ればその素晴らしさにきっと魅了されるはずです。ぜひ多くの方に未来座を見ていただき、日本舞踊を知るきっかけになったらと願っています」と語った。
第二限講座「日本舞踊を知ろう!」では、歌舞伎や映画の所作指導や振り付けなど幅広く活躍している中村梅彌先生が、日本舞踊の振りや動きを指導。扇子の持ち方から始まり、桜が満ちている様子など1つずつ動きの意味を説明しながら踊りをレクチャー。最後には「さくらさくら」と「藤娘」の曲に合わせて全員で踊った。全身を使って踊るのは想像以上に難しかったものの、参加者は日本舞踊を心と体で深く味わった。
講師の中村流八代目家元 中村梅彌先生は「皆さん大変だったかもしれませんが、意味を理解しながら踊ることで日本舞踊を身近に感じられたと思います。来月の新作公演は、より多くの方に日本舞踊に親しんでいただけるよう現代語の歌に合わせて踊ります。振付師も舞踊家も若手を起用して、若い世代の方にも楽しんでいただけるようにしました。私自身、つい最近できなかったある踊りが突然できるようになり、芸は積み重ねられていくのだとあらためて痛感しました。日本舞踊も年月をかけて磨かれていくものです。古典を大事にしながら、今という時代に合った新たな日本舞踊に挑み、次の世代へとつないでいきたいです」と語った。
第三限講座「実践!踊ってみる!」では、舞踊家・振付師として活動する傍ら、東京藝術大学で学生を指導する花柳輔太郎先生が、未来座の演目の1つ『当世うき夜猫』の振り付けをレクチャー。参加者は5センチずつ重心を下げて“腰を入れる”という基本の動きだけで汗だくに。日本舞踊がこれほどハードだったのかと終始驚きつつ、少しずつ区切って振り付けを練習。最後にはリズムカルな音楽に合わせてみんなで楽しく踊ることができ、会場には大きな拍手と笑顔があふれた。
講師の花柳流花柳界理事 花柳輔太郎先生は「『当世うき夜猫』は、全編に猫が登場するという珍しい設定です。猫の世界を人間社会になぞらえて、災害や移民問題などさまざまなことを問いかけていきます。今まで見たことのない斬新な作品なので、従来の日本舞踊ファンの方は拒絶反応を起こすかもしれません。むしろ初めてという方こそ、自然に楽しんでいただけると思います。たくさんの方に未来座を見ていただき、まずは日本舞踊を知るところから始めてみてほしいです。講座で皆さんと一緒に踊った振付は、何度か登場してくるので楽しみに見てみてください」と語った。
いずれの講座も最後に、松本流三世家元 松本錦升(市川染五郎)が舞踊が披露。錦升は「日本舞踊は難しそうと先入観をもっている方がたくさんいます。でも、最近になってある歌の一節の意味が解明されたほど、実は分からないことだらけなんです。日本舞踊には踊りや演出はもちろん、音楽、美術、照明など様々な要素を含んでいます。例えば、書割という舞台の背景画が遠近法で描かれているなど、たくさんの発見があるはずです。ストーリーを追うより、ぜひ自分らしい楽しみ方を探してみてください。新作は、自分が見たいと思う面白いものしか作っていません。1人でも多くの方に未来座を見にきていただき、皆で息を合わせて踊る素晴らしさを肌で感じてもらえたらと思います」とコメントを寄せている。
第一回日本舞踊未来座『賽 SAI』
演目名:「水ものがたり」「女人角田~たゆたふ~」「当世うき夜猫」「擽~くすぐり~」
日程:6月15日(木)~6月18日(日)※開場は開演30分前
6月15日(木)14:30/18:30
6月16日(金)14:30/18:30
6月17日(土)11:00/15:00/19:00
6月18日(日)13:00/17:00
会場:国立劇場小劇場(東京都千代田区隼町4-1)
チケット料金:全席指定 7,000円(税込)
各種割引:障害者割引 5,600円(税込)
<チケット>
日本舞踊協会WEB特別受付:http://w.pia.jp/p/miraiza-sai17sp/(24時間)
チケットぴあ:http://t.pia.jp
0570-02-9999(Pコード:456-069)
ヴォートルチケットセンター:03-5355-1280(有人対応 平日10:00~18:00)
イープラス:http://eplus.jp
国立劇場チケットセンター:03-3265-7411(窓口取扱いのみ)
主催・お問い合わせ:公益社団法人 日本舞踊協会
電話:03-3533-6455(平日10:00~17:00)
メールアドレス:info@nihonbuyou.or.jp
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撮影:阿部章仁