最新作『ベイビー・ドライバー』が8月19日(土)より公開されるエドガー・ライト監督が6年ぶり3度目の来日を果たし、記者会見を行った。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホットファズ-俺たちスーパーポリスメン!』『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う』など、エッジの効いたコメディセンスとヴィジュアル・テクニック、そしてさまざまな映画の引用で、世界中のファンから愛されているエドガー監督。
イギリス出身の彼の本格的ハリウッド長編映画デビューとなった最新作『ベイビー・ドライバー』は、大迫力のカーアクション×監督自ら厳選した全30曲の名曲の数々で送る“ロックンロール・カーチェイス・ムービー”だ。
エドガー監督が登場し、フォトセッションが始まると「逆に撮らせてください」と自身のカメラを取り出し、報道陣を撮影。和やかな雰囲気で会見がスタートした。
◆本作で音楽と演技を合わせるために撮影現場で細かく指示をしたり、曲をかけながら撮影したと思うが、具体的なシーンをあげて説明してもらえますか?
エドガー監督「リハーサルの段階から、実際に音楽を現場でかけて撮影しました。セリフがないシーンは大音量で音楽をかけたり、主人公ベイビーだけが楽曲を聴いているというシーンはアンセル・エルゴート自身がヘッドホンで楽曲を聴いて撮影しています。また、すべての登場人物が楽曲に反応しているシーンでは、皆にイヤーウィックを使用して撮りました。シーンによってメソッドは違いますが、全編音楽をかけながらの撮影でしたし、ここで大きな鍵となったのは、出来上がった作品で流れる音楽をキャストも実際に撮影で聴いているということです。」
◆本作の主人公ベイビーが、事故の後遺症である耳鳴りを音楽を聴いて消すという設定はどうやって思いついたのか?
エドガー監督「割と初期の段階からいくつかのアイデアがあって、それがひとつになった感じなんです。ベイビーは元々音楽を常に聴いていて、音楽を聴いている時でしか機能できないキャラクターなんです。オリヴァー・サックスの『音楽嗜好症』という書籍の中で、人によっては耳鳴りの症状を抑えるためにずっと音楽を聴いている人もいると知って、影響を受けました。また、ベイビーの音楽好きなところは自分自身にも似ています」
◆『ザ・ドライバー』の監督であり、親交のあるウォルター・ヒル監督から本作を製作するにあたって何かアドバイスはもらいましたか?
エドガー監督「ウォルターにベイビーの事を話すのは緊張してしまって、アドバイスはもらわなかった気がします。ただ、本作の最後の5分に声の出演をしてもらっているのですごく嬉しかったです。彼を試写会やプレミアに招待していたんですが、なかなか来てもらえず、もしかしてこの作品を観たくないのかと思っていたけれど、『僕はこの作品をお金を払ってみたいんだ。だから初日に劇場へ観に行くよ』と言って、本当に初日にセンチュリーシティーモールへ観に行ってくれました。本作にも影響を与えたウォルターの代表作『ザ・ドライバー』もそのモールの地下駐車場で撮影が行われていたので縁を感じました。彼にはいつかディナーをご馳走しないとと思っています」
◆ギレルモ・デル・トロ監督も劇場でご覧になって、連続13ツイートをしていた事についてはどう思っていますか?
エドガー監督「彼がツイートする前に、本人から連絡がありました。たくさん誉めてもらえて驚きました。他の映画監督に褒めてもらえるのは本当にうれしいです。『フレンチ・コネクション』『L.A.大捜査線/狼たちの街』という史上最強のカーチェイス映画を2本も作ったウィリアム・フリードキン監督からも電話をもらい、お褒めの言葉をいただきました」
◆本作ではカーアクションと音楽が見事にマッチしています、そのアプローチのアイデアはどのように生まれましたか?
エドガー監督「アイデアを思い付いたのは『ショーン・オブ・ザ・デッド』を製作するよりも前でした。21歳の時から音楽とアクションを融合させるビジョンは持っていて、長いスパンで製作できないかとずっと考えていました。過去作品でも同様のシーンはありますが、『ベイビー・ドライバー』では全編で挑戦しています」
◆続編のオファーもきているようですが具体的なアイデアはありますか?
エドガー監督「実は続編の話は公開前からオファーされていましたが、作品に着手するまでは続編の事は考えていなかったです。製作中は、キャラクターたちについて考えるのが楽しくて、彼らが今後どうなっていくのかには興味があります。今はまだ決定しているわけではないけれど話は出ています」
◆日本のポップカルチャーに言及していたこともあるし、本作にはスバルのWRXが登場したりしますが、 日本で映画をつくる予定は?
エドガー映画「日本で映画をぜひつくりたいと思っています。ただ、そのためにはピッタリくる物語に出会わないといけないですね。『ベイビー・ドライバー』では、脚本の段階ではトヨタのカローラをオープニングで使用する予定でしたが、スタントチームからアドバイスがあり、四輪駆動車でラリーカーと同じ走りができるセダンタイプのスバルWRXを最終的に起用しました。お陰でスバルファンには大変好評です」
◆主人公“ベイビー”にアンセル・エルゴートを起用した理由は?
エドガー監督「アンセルのほうが僕よりずっと背が高いけれど、彼との共通点は音楽に対する情熱があるところだと思います。彼はカリスマ性があるし、スクリーンでも自信に満ちています」
◆日本の映画で個人的にインスパイアされた作品はありますか?
エドガー監督「この映画を観た人からは、鈴木清順監督の『東京流れ者』に似ているとよく言われます。10代の時に『HANABI』や『ソナチネ』『その男、狂暴につき』など北野武の作品を観ていました」
『ベイビー・ドライバー』
8月19日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
<ストーリー>
天才的なドライビング・センスを買われ、犯罪組織の“逃がし屋”として活躍する若きドライバー、通称「ベイビー」(アンセル・エルゴート)。彼の最高のテクニックを発揮するための小道具、それは完璧なプレイリストがそろっているiPod。子供のころの事故の後遺症で耳鳴りが激しい彼だが、音楽にノって外界から完璧に遮断されると、耳鳴りは消え、イカれたドライバーへと変貌する。ある日、運命の女の子デボラ(リリー・ジェームズ)と出会ってしまった彼は犯罪現場から足を洗うことを決意。しかし彼の才能を惜しむ組織のボス(ケヴィン・スペイシー)にデボラの存在を嗅ぎ付けられ、無謀な強盗に手を貸すことになり、彼の人生は脅かされ始める――。
監督・脚本:エドガー・ライト(『アントマン』)
製作:ニラ・バーク、ティム・ビーバン、エリック・フェルナー
出演:アンセル・エルゴート(『きっと、星のせいじゃない。』)、ケヴィン・スペイシー(『アメリカン・ビューティー』)、リリー・ジェームズ(『シンデレラ』)、エイザ・ゴンザレス(『フロム・ダスク・ティル・ドーンザ・シリーズ』)、ジョン・ハム(『MAD MEN マッドメン』シリーズ)、ジェイミー・フォックス(『ANNIE/アニー』)
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント