ナチス高官ハイドリヒ暗殺に挑む2人の若き青年の姿を描いた『ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦』が、8月12日(土)に公開される。公開に先駆け、トークショーが行われ、映画評論家の松崎健夫と放送作家・映画活動家の松崎まことが登壇した。
本作は、第二次世界大戦のさなか、ヨーロッパ全土を恐怖に陥れたナチス高官ラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件を描いたサスペンス。自らの命を犠牲にして、ナチスに立ち向かった若き男たちの戦いを、史実をもとに『フローズン・タイム』などのショーン・エリスが映像化した。
上映後の開催となったこのイベント。拍手の中、登場した松崎健夫は「またナチスの映画かよ、と思うかもしれませんが、命を失った一人一人のドラマがあるので、何ひとつとして同じものはない。戦争はひとつの命を大事にしなきゃいけないのに、全く大切にされないのだと感じました」と本作の感想を。また、松崎まことは本作と同じくハイドリヒ暗殺事件を題材にした『死刑執行人もまた死す』『暁の7人』と比較しながら「『死刑執行人もまた死す』が作られたときはプロパガンダ的な意味合いもあったが、この作品は当時のチェコの人々がどのように感じていたのかが描かれている。そうゆう点では『暁の7人』と近いのかもしれないけど、主演2人がイケメンだし、より映画的になっていますね」とコメントした。
話題は、本作の監督、ショーン・エリスについて。松崎健夫は「この監督は元々フォトグラファーで、『フローズン・タイム』などアーティスティックな作品を撮っていた人なのですが、これを観て、こんな作品も撮れる人なんだと思いました」と驚きを。さらに、「今ヨーロッパが不穏な状況になっているからこそ今この映画を撮らなくてはいけないと思う若い監督が出てきているということに意義がありますよね」と映画界についてコメントすると、松崎まことも「日本も他人事みたいに言ってられないよね」と深く頷きながら語った。
また、松崎健夫は「300年後に『2017年は戦前』と書かれてほしくない。もちろんこの映画は昔の話として描かれているけど、今に通じる話としても見れます」と観客も人ごとではない、と。松崎まことは、「今のに付け加えると、こうゆう局面になったとき、『絶対に裏切らない自信はあるか』という問いかけもありますよね。だからこそ、こうなる前に止めなくてはならないということも描かれていますよね」と日本の現状を含めつつ、映画に込められたメッセージを解説した。
【作品情報】
『ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦』
8月12日(土)より新宿武蔵野館他順次公開
©2016 Project Anth LLC All Rights Reserved
■監督・脚本:ショーン・エリス
■出演:キリアン・マーフィ、ジェイミー・ドーナン、ハリー・ロイド、シャルロット・ルボン、アンナ・ガイスレロヴァー
■配給:アンプラグド
<公式HP>
shoot-heydrich.com
<ストーリー>
第二次世界大戦直下、ナチスはヨーロッパのほぼ全土に占拠地域を広げていた。ヒトラーの後継者と呼ばれ、ナチス第三の実力者であるラインハルト・ハイドリヒは、ユダヤ人大量虐殺の実権を握っていた。イギリス政府とチェコスロバキア亡命政府はハイドリヒ暗殺計画を企て、ヨゼフ(キリアン・マーフィ)、ヤン(ジェイミー・ドーナン)ら七人の兵士の暗殺部隊を、パラシュートによってチェコ領内に送り込む。ヨゼフとヤンはプラハの反ナチス組織や家族と接触し、暗殺計画を進めていく。ついに無謀なミッションは実行されるが、ハイドリヒ襲撃に憤慨したナチスは常軌を逸する残虐な報復を始める―――。