湊かなえの原作の「望郷」が初の映画化され、9月16日(土)に公開される。本作は2部のパートに分かれており、「夢の国」と「光の航路」をそれぞれ貫地谷しほりと大東駿介の主演で描く。古いしきたりを重んじる家庭に縛られ、“夢の国”に憧れる夢都子を演じた貫地谷さんに、映画に対する思いを聞いた。
◆完成した作品をご覧になっての感想をお願いします。
試写を一度見ただけなので、作品を冷静に見られるまでにいたりませんでした。つい、自分のあら捜しをしてしまうので…まだ客観的には見られないんです。ただ、湊さんがご覧になって『こんなやり方があったんだ』と言ってくださって。それを菊地健雄監督に伝えたらガッツポーズをされていました(笑)。原作とはだいぶ違った描き方になっていますが、映画ならではの表現ができたんだと思って、私も嬉しかったです。
◆撮影中のエピソードは?
撮影していた因島のレモン畑がとても綺麗で、共演者の方々とも打ち解けてきて、私がどんどん元気になってしまって(笑)。監督から『はつらつとしすぎている』と注意されましたね(笑)。役柄と合わないので。
◆田舎独特の窮屈さ、故郷に縛られる苦しさが本作では描かれていますが、東京出身の貫地谷さんはどのように感じ取られました?
私は因島を、『なんてすばらしいところなんだろう』と感じたのですが、それは外から見た景色だからかもしれない。夢都子は自分に制限をかけてしまっていて、それに縛られている。その経験は都会で育った私にもあります。『どうせダメだろう』と思い込んでいて、中学生のころに『友達とお泊り会をしたい』って親に言えなかったり。でも、今思うとちゃんと聞いたら『いいよ』って言ってくれたんだと思います。近い関係だからこそ、絡まってしまうほころびって誰しもが経験したことであり、共感できることなのではないでしょうか。
◆大東駿介さん演じる航がメインとなるパート『光の航路』をご覧になった感想は?
すごく重くて、厳しいストーリーなんだけど、川島鈴遥ちゃんが演じる三浦真衣のラストの夕日のシーンが本当に美しくて…。思いやりを持つってシンプルなだけに難しくて、そんな現実と向き合うことの大切さが描かれていたと思います。理想論かもしれないけど、誰も傷つかない、みんなが幸せになれる世界を願ってしまいました。
◆劇中では願い事がかなうという石の十字架を探すシーンがありますが、もしも貫地谷さんが石の十字架を見つけられたらお願いしたいことは?
あと10センチ身長を伸ばしたい! もう少し伸びると思ったのに、早い段階で成長が止まってしまって(笑)。もっと背が高くなりたいです。
◆最後に作品の見どころをお願いします。
人と向き合うということは、最終的には自分と向き合うということ。それはつらいことでもあるけど、少し見方を変えるだけで、視界が晴れたりすることもある。そういう瞬間が描かれている作品なので、今“もやもやしたもの”を抱えている方にぜひご覧いただきたい作品です!
■作品情報
<STAFF&CAST>
監督:菊地健雄
脚本:杉原憲明
プロデューサー:辻村和也 、清家優輝
出演:貫地谷しほり、大東駿介、木村多江、緒形直人ほか
<STORY>
夢都子(貫地谷しほり)は古いしきたりを重んじる家庭に育ち、故郷に縛り付けられていた。幼い頃から自由の象徴として憧れていたドリームランド閉園の話を耳にした彼女は、ずっと胸の内にあったものを語り始める。
公式サイト:http://bokyo.jp/
©2017 avex digital Inc.
●photo/石塚雅人 text/倉光亜希 衣装協力/シーバイクロエ