大河ドラマ『おんな城主 直虎』の39話(10/1放送)から、徳川家康(阿部サダヲ)の嫡男・信康が登場する。演じるのは、これまで舞台を中心に活躍し、本作が大河ドラマ初出演となる平埜生成さん。大河の撮影裏話から、ストイックに役と向き合う平埜さんの演技論についてもインタビュー。
“準備”が好き。信康にまつわる本は結構読みました
◆大河ドラマ初出演ですが、出演が決まったときの心境はいかがですか?
僕はまだ映像経験が少なく、まさか自分が出られるとは思っていなかったので、このタイミングでやらせていただけるのはすごくありがたい半面、やはり不安もありました。本当に右も左も分からずNHKのどこにスタジオがあるかも分からなかったので(笑)、何から何まで教えてもらいながらやっています。
◆撮影にあたって、何かご準備されたことはありますか?
準備するのが好きな性格なので、信康にまつわる本は結構読みました。でも、本によって書かれていることが全然違うんですよね。だから、クランクインするまでは信康をどう演じるべきかずっと疑問を抱えていたんですけど、今は台本を信じて演じています。ただ、台本には書かれていないような三河武士としての在り方や三河の文化のヒントが本にあったりするので、下調べも無駄にはならなかったのかなと思っています。
◆台本には、信康について「鷹揚さ、頼もしさを感じる佇まい」というト書きはありました。そういう部分を表現する上で意識されていることは何ですか?
正直、出せているか分からないです…(笑)。そういうのってやっぱり所作や姿勢も含めてのことなので、正直苦戦しているところでもあるんです。中でも、姿勢には一番気を使いました。菜々緒さん演じる母の瀬名は今川の貴族的血筋の生まれなので、しつけも相当厳しかったはず。どうすれば座り方や立ち方だけで上品に見えるかはかなり意識しました。言葉よりは姿勢ですね。
◆信康は、若くして自害に追い込まれた悲劇のプリンスでもあります。
『直虎』での信康は己の欲よりも徳川家を優先するような人で、かつ家臣にも優しい。こんなカッコいい人なかなかいないだろうなと思って演じています。最初は阿部さん演じる家康の要素も取り入れようと思っていたんですけど、あの家康には阿部さんにしかできない表情や挙動が数多くあって、そこだけ真似てもただのコピーになってしまうと思ったんですよね。だから、家康の挙動というよりは、お父さんの頭の中にどうやってアクセスするか、意思の疎通の部分に重きを置いて演じています。自害を余儀なくされることについては、「この時代じゃなかったら…」とすごく感じました。多分、信康は悔しさや悲しさを背負ったまま、自分と同じような人はこれ以上増えないでほしいと思いながら死んでいったのかもしれないですし、僕としてもこういうことは受け継ぎたくないと思いながら演じていました。
◆父が阿部さん演じる家康、母が菜々緒さん演じる瀬名、そして義理の父は市川海老蔵さん演じる織田信長と、豪華なキャストに囲まれています。撮影現場はいかがですか。
役と普段の関係性がリンクしていることが多いので、緊張感は感じつつも逆にそれを楽しんでいます。万千代役の菅田(将暉)とは同い年で共演も3度目なので、距離感も近かったです。
◆43話(10/29放送)では、万千代と信康が一緒に碁を打つシーンがありますね。
たまたまなんですけど、小学生の時に囲碁教室に通っていたので何だか懐かしかったです。菅田とも一緒に碁石の持ち方を練習したりしてましたね。
大河の主演もいつかはやってみたい
◆信康と平埜さんの共通点はありますか?
これまで演じたどんな役も共通点しかなくて、全く理解できない役を演じたことがないんです。今回の場合は、家族を愛する気持ちとか、身分関係なく誰にでもフラットに接するところとか、僕が憧れる理想像を信康が持っているので、信康に自らを寄せていきたいなと思っています。
◆どんな役も共通点しかないとのことですが、ご自身とかけ離れた役を演じられるときはどうされているんですか?
去年、舞台で演じたイスラム教徒の役は、頂いた当初全く理解できなかったんですけど、コーランを聞いたりモスクに行ったりしているうちに、どんどん自分の中に落ちていくものがあったんです。だから、分かるまで徹底的に調べるようにしています。
◆今年春に放送されたドラマ『バウンサー』(BSスカパー!)では、ド派手なアクションシーンを生き生きと演じられていたのが印象的でした。今回はどちらかというと受け身のお芝居だと思うのですが、役どころによってお芝居のアプローチの仕方も違いますか?
受け身の芝居がすべてだと思っていて、自分はそこがまだまだだと思っています。だから「人と会話するって何だろう?」というのはすごく考えていますね。どんなお芝居でも、自分が最初からボールを打つことは絶対になくて、何かがあるからボールを打つんです。それは言葉じゃなくても空気とか環境とか…。それをどうしたらビビットに受けられるんだろう、ということは常に考えていますね。
◆いずれ大河ドラマの主演を務めたいという思いはありますか?
今回出演してみて、そう思いました! 過去の大河ドラマを調べたとき、自分の好きな俳優さんが主演だったりすると、「大河で主演をやる意味って何だろう?」と考えるようになって。答えは全然出ないんですけど、主演した時にその答えが分かるかもしれないし、どんな世界が待っているのか、いつか知れるときが来たらいいなと思っています。
◆では、最後にドラマの見どころをお願いします。
新章が始まる39話から見れば、これまでの展開が全部分かるしナレーションも多めなので、まだ『直虎』を見たことない人も絶対に分かるはず。こんな分かりやすい回はほかにないので(笑)、ここからラストスパートにかけて楽しんでいただければと思います。
◆ありがとうございました。それにしても、年齢以上に話しぶりがものすごく落ち着いていらっしゃいますね!
そうですか? こう見えて、すぐテンション上がるんです。遊園地行ってもはしゃぐし、まだピチピチです(笑)。
■PROFILE
平埜生成
●ひらの・きなり…1993年2月17日生まれ。東京都出身。映画「亜人」が9/30(土)、斉木楠雄のΨ難」が10/21(土)公開。
公式サイト:http://artist.amuse.co.jp/artist/hirano_kinari/
公式ブログ:https://ameblo.jp/hirano-kinari/
公式Twitter:https://twitter.com/kinarichan
■放送情報
大河ドラマ『おんな城主 直虎』
NHK総合 毎週(日)後8・00~8・45
BSプレミアム 毎週(日)後6・00~6・45
●photo/金井尭子 text/金沢優里 hair&make/白石義人(ima.)styling/渡辺慎也(Koa Hole)衣装協力/CURLY