「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズのチームによる感動作「DESTINY 鎌倉ものがたり」で、年齢の離れた作家夫婦・正和と亜紀子を演じた堺雅人さんと高畑充希さん。本作が初共演作ながら息の合ったお二人に撮影時のエピソードなどを伺いました
堺:僕が『真田丸』をやってきたときに、隣のスタジオで高畑さんが『とと姉ちゃん』の収録をしていたので、よくごあいさつをしていたんですよね。
高畑:私、NHKの廊下で「次、共演できるね!」と言ってくださったのを覚えています。堺さんの作品を拝見していて「いつかご一緒できたらいいな」と思っていたのですが、こんなに早く実現するとはびっくりでした。しかも、夫婦役で! でも、ものすごくうれしかったのと同時に、めっちゃ緊張しました。
堺:僕の中では勝手に“お芝居が巧い人”というイメージがあって、どこか信頼感を持っていたんですよ。年齢を聞いて、こんなに(19歳)離れているの?って驚いたぐらい! でも、ここまで年齢差があるイメージもありませんでしたし、その印象はクランクインしてからも変わりませんでしたね。
高畑:(笑)。とにかく大先輩ばかりの現場でしたが、ふわっとした感じで中心にいてくださる堺さんに「ついて行きます!」という気持ちでした。
◆とてもファンタジックな作品ですが、最初に台本を読んだときの印象を教えてください。
堺:原作が何巻もある長い物語なので、登場人物一人ひとりが持っている情報の豊かさに、ちょっと圧倒されてたんです。でも、正和と亜紀子さんとの関係性だけを見てみると、とてもシンプルなラブストーリーだったので、できるだけ亜紀子さんだけを見て演じようと思いました。
高畑:すぐに亜紀子さんのことが好きになったんですが、自分がどう近づいていけばいいんだろうと不安でした。幼い部分もあれば、夫を立てる芯の強い部分もある、とても人間らしいキャラクターだと感じたのですが、その生命力みたいなもののスイッチがなかなか見つからなくて。でも、私も堺さんと同じで、最初から最後まで、正和先生を好きでいる気持ちを大切にしようと思っていました。
◆こちらも初めてとなる山崎貴監督による演出はいかがでしたか?
堺:最初は正和と亜紀子さんとの間に、照れみたいなものがあると思っていたんですが、監督からは「もっとラブラブな雰囲気になってほしい」と言われました(笑)。そこから、木を裂かれるように別れるのが逆算としてあったようで。あと、「趣味に対してオタクであるときのオタク度をもっと上げてほしい」と言われました。それによって、どこか虚無感に満ちた人なのかと思っていた正和の印象は変わりました。
高畑:CGのシーンが多くて、実際に見えないものを前にした演技もあったので、そこはすべてが頭の中にある山崎監督の指示に従い、思い切って、いろいろと試してみようと!と。CGのシーンはどこを見ていいのか戸惑いの毎日だったのですが、、周りのスタッフから何度も「これが山崎組だよ!」と言われました(笑)。
堺:後でCGを作るのも山崎監督だから、僕たちは「そこは監督にお任せします!」という感じで。一応、どのシーンでも目印があったんですが、大ボスである天頭鬼がかわいらしい絵だったので、あまり敵意がわかなかったかも。
高畑:周りから“にゃん頭鬼”と呼ばれていましたもんね(笑)。
堺:あと主演の僕ら2人は、本当はホスト&ホステスの役割なんですが、堤真一さんら山崎組の常連の方が多い現場でもあったんです。どこかで僕らも招き入れてくれているような雰囲気もあって、そこでも山崎組の温かさを感じましたね。
◆そんな中、お互い夫婦役を演じて、印象的だったシーンは?
堺:僕は女性からのラブラブ光線に鈍感な方だと思うんですが(笑)、意識を失って布団で寝ている正和を亜紀子が介抱しているシーンが印象的ですね。
高畑:あそこは映画の中でも、もの静かな珍しいシーンで、夫婦がしっかり向き合うシーンでもあったんです。私にとっても印象的で、台本を読んだときから大好きなシーンです。
堺:僕を愛してくれている気持ちが伝わって、撮影中ちょっとドキドキしてしまいましたね。あのときの高畑さんは確実に目から何かが出ていたね!
高畑:ほんとですか!?(笑) あと、冒頭の海岸線を車で走りながら、イチャイチャと会話してるシーンも好きです。
◆お二人がイメージする「黄泉の国」があれば教えてください
堺:絶対行きたくないところです(笑)。というか、全く知らないステージに行くような気がします。例えば、1つの役が終わったときに、昔やった役のことを思い出すことがあるんですが、あれが死んだときの残存記憶なのか?と思うんです。それで次の役として、生まれ変わっていくような。この映画の中では「ただいま」と帰ってくることができる懐かしい人に会える場所として描かれているので、そこは山崎監督の優しさに溢れた感じですよね。
高畑:私、黄泉の国という隙間を考えたことがないんです。死んだ瞬間にフッとなくなって、次の瞬間に「おぎゃー!」と生まれていたらいいなぁって。でも、人間かどうかは分からないし、全然違う世界かもしれないし。こういうことを考え出すと…沼ですね(笑)。
◆お互いが持たれている鎌倉のイメージを教えてください。
堺:海と山、そして歴史のあるお寺があって、おしゃれなんだけど、心落ち着く場所だと思います。あと、洞窟がいっぱいあるのも特徴的で、それが異界との出入口にも見えて面白い気がします。
高畑:古さと新しさが混在していて、東京では起こりえないことが起こっても、不思議じゃない場所のような気がしました。私、6月になると、あじさいを見にふらっと行っていたんです。竹林を見るのも好きなんですが、今回は3日ぐらいしか鎌倉の撮影がなかったので、ちょっと残念でしたね(笑)。
堺:スタジオのシーンが多かったからね。でも、スケールが大きい話かと思いきや、幸せな夫婦がいて、黄泉の国に行ってしまった妻を夫が連れ戻しに行くおとぎ話なのが、この映画の魅力だよね。
高畑:見る人を選ばない、見た人みんなが幸せな気持ちになれる、山崎監督らしい温かい作品になったと思います。
■PROFILE
堺雅人
●さかい・まさと…1973年10月14日生まれ。宮崎県出身。O型。主な出演作にNHK大河ドラマ『真田丸』、『リーガルハイ』など。2018年3/10(土)より映画「北の桜守」が公開。
高畑充希
●たかはた・みつき…1991年12月14日生まれ。大阪府出身。AB型。主な出演作にNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』、『過保護のカホコ』など。出演映画「泥棒役者」が公開中。2018年カレンダーが発売中。また2018年には『「リトル・マーメイド」イン・コンサート』にアリエル役で出演。
■作品情報
「DESTINY 鎌倉ものがたり」
12月9日(土)より全国東宝系にて公開
<STAFF&CAST>
監督・脚本・VFX:山崎貴
原作:西岸良平
出演:堺雅人、高畑充希、堤真一、安藤サクラ、田中泯、中村玉緒、古田新太、鶴田真由、薬師丸ひろ子、吉行和子、橋爪功、三浦友和ほか
<STORY>
鎌倉に暮らす作家・一色正和(堺)の元へ嫁いだ妻・亜紀子(高畑)は、魔物、妖怪、仏様、死神(安藤)まで現れる毎日に驚くばかり。ある日、亜紀子は魔物の仕業で死んでしまう。正和は亜紀子を取り戻すため、黄金の国へ向かうことを決意する。
©2017「DESTINY鎌倉ものがたり」製作委員会
●photo/干川 修 text/くれい 響 hair&make/保田かずみ(SHIMA)(堺)、加藤 恵(高畑) styling/高橋 毅(堺)、山本マナ(高畑)衣装協力/タトラス ジャパン(堺)、The Heartbreakers(堺)、西武渋谷店 B館5階=B TOKYO(堺)