木村拓哉さんが主演するテレビ朝日系『BG~身辺警護人~』((木)後9・00)が、3月15日に拡大スペシャルで最終回を迎える。民間警備会社のボディーガードの活躍を描いた作品で、最終回は主人公の島崎章(木村)たちが発砲事件で命を落とした上司・村田五郎(上川隆也)の名誉を守ろうと奔走する姿が描かれる。その村田の息子で、物語のキーパーソンの1人となる庸一を演じているのが堀家一希さん。2016年に『ラストコップ』(日本テレビ系)でデビューし、昨年の『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)でのテロを起こす若者役でもインパクトを残した、岡山県出身の注目の若手俳優にインタビュー。
西田敏行さんがきっかけで俳優の道へ…デビュー作で「難しい仕事」と実感
◆俳優を志すきっかけになったのは、西田敏行さんだそうですね。
そうなんです。「ザ・マジックアワー」(2008年・三谷幸喜監督)を見た時でした。その中で西田さんが演じていたマフィアのボスというのが、最初はこわもてなんですけど、物語が進むにつれてかわいい表情を見せるようになるんです。そのギャップがすごく面白くて、僕もお芝居をやってみたいなと。
◆そこから俳優になるために、どんなアクションを起こしたんですか。
俳優になりたいということは母にずっと伝えていたんです。そうしたら中学3年生の時に今の事務所のオーディションを見つけてきてくれて、受けてみようと。そのオーディションの時、僕はサッカーが得意だったのでリフティングを披露したんですけど、緊張しすぎていたのと慣れてない靴だったのもあって、全然できなかったんです。「すいません!もう一回やらせてください!」って何度も何度もチャレンジさせてもらったんですけど、結局10回くらいしかできなくて、これはもうダメだと落ち込みながら帰った記憶があります(笑)。それでも結果、合格できたのでうれしかったですね。
◆地元の岡山から東京に出てくることに不安はなかったですか。
不安はありました。1人でやっていけるだろうかと。お金だって稼がなきゃいけないですし。でも、両親も応援してくれたのでありがたかったです。東京に出てきて今2年目くらいで、生活にも大分慣れてきましたけど、やっぱりたまに帰りたくなりますよね。
◆岡山はどんなところが魅力的ですか。
自然が美しいのと、あとご近所さんが皆さん温かいところですかね。作った野菜をあげたり、お返しにお米をくれたり。そういうつながりが深くて、いるだけで心地よくなります。
◆そういう温かさは、東京ではなかなか感じにくいですよね。
上京してきた当時、東京の電車の扉がこんなに早く閉まると思わなくて。とっさにキャリーバッグを先に乗せたらそこで扉が閉まって、自分自身はホームに取り残されたことがあったですけど、電車の中にいた乗客の方たちはそれに気づいても何のリアクションもなくて…。窓越しにそれを見ていて、あぁ、東京ってこういう感じなんだなとショックを受けました(笑)。もちろん、みんながみんなそうじゃないですし、今の自分があるのもたくさんの方たちに支えていただいているおかげなので感謝しています。
◆デビュー作となった『ラストコップ』は、どんな経験になりましたか。
唐沢(寿明)さんをはじめ、第一線で活躍されている方たちのお芝居を目の前で見るのが初めてだったので、すごく勉強になりました。唐沢さんが長ぜりふを言うシーンがあったんですけど、カットがかかった瞬間、「今、何か音鳴ったよね?」とおっしゃったことがあったんです。同じシーンにいて、何もせりふがなかった僕でも聞き落としてしまうほどの小さな音にちゃんと気づくんですよね。自分のせりふをただ言うだけじゃなく細かいところまでアンテナを張り巡らせていて、やっぱりすごいなと思いました。それに引き換え、僕なんてたった一行のせりふも言えなくて…。
◆お芝居に対する憧れと現実にギャップがありましたか。
正直、それまで高をくくっていた部分はありました。笑ったりとか泣いたりとか、それなら自分にもできるんじゃないかと。でも、いざやってみると全然できない。当たり前ですけど、俳優さんはただ笑ったり泣いたりしているわけじゃなくて、そこまでのプロセスをしっかり掘り下げて、その上で表現されているんですよね。本当に難しい仕事だなと実感しました。
◆自信を打ち砕かれた一方で、俳優の面白さも見出せたんでしょうか。
そうですね。やっぱりお客さんに見ていただけて、反応がもらえるのがうれしいですよね。元来目立ちたがり屋でもあるので(笑)。自分のお芝居で笑ってくれたり、切なくなってくれたりすると、モチベーションにもつながりますし。
◆その後キャリアを重ねていく中で、お芝居に対する向き合い方はどう変わっていきましたか。
変化は常にしています。『ラストコップ』で唐沢さんたちのホンモノのお芝居を見て僕もこうなりたいと思い、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』では小栗(旬)さんからアドバイスを頂いてアプローチの仕方は1つじゃないんだなと学んで。これからもそうやって変化を続けていくんだと思います。
木村拓哉さんの動きを見て、僕も下手なりにどうやったら相手も生かすお芝居ができるかを考えるように
◆『BG~身辺警護人~』で演じている庸一は発砲事件で父親の村田を失ってしまうという役どころですが、どうとらえましたか。
国家権力によって発砲事件のことが闇に葬られて、ネットでは父親が悪者のように言われ、そのせいで予備校にも行けなくなり…。19歳という大人になりかけている年ごろで社会に影響され、大人になれずにいるというか。根は真面目で素直なんですけど、そういう自分を出せなくなってしまっている。状況は自分には置き換えにくいですが、僕自身が今20歳で年齢が近いので、気持ちは理解できなくはないなと。
◆演じる上ではどんなところを意識されましたか。
庸一は人を信じられなくなっているので、そういう時は視界も狭まっているんだろうなと。それを表現するために、人をにらむような目つきでいるようにして。それと、やっぱり息子として父親への思いは忘れずにいようと心がけていました。
◆その時は上川さんの顔を思い浮かべるんですか。
そうですね。今回、残念ながら上川さんと一緒のシーンはなかったんです。だから、思い浮かべるのは僕が勝手にイメージする上川さんなんですけど、すごく優しい顔をしていて。それで切なさが高まって気持ちを作りやすくなりましたね。
◆主演の木村さんはどんな方でしたか。
まず作品をよりよくしたいという思いが軸にあって、そのためにすごく周りのことを見ているし、大事にもされている方。だから周りからの信頼も厚いんだろうなと。僕が一日中、花粉で鼻がぐじゅぐじゅになっていた時も「大丈夫?まだ治らないの?」と優しく心配してくださいました。
◆お芝居の面ではどんな学びがありましたか。
木村さんがシーンに沿って動きを足し、それによって僕にも新しい動きが生まれる、ということがあって。あぁ、お芝居ってこうやってお互いに作り上げていくんだなと。それからは僕も下手なりに、どうやったら自分も相手も生かすお芝居ができるかと考える意識を持てるようになりました。それはすごく大きな学びでしたね。
◆最終回では、庸一が物語にひと波乱起こすと聞いています。
そうですね。最終回は、発砲事件の真相を詳らかにできるのかどうかが最大の見どころ。人を護る、自分を護る、名誉を護る。いろんな「護る」がキーワードになっています。その中で、庸一の心はどう変化していくのか。木村さんたちボディーガードの方たちの活躍と共に見届けてほしいです。
また西田敏行さんのお話になっちゃうんですけど…「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(2017年・廣木隆一監督)を見に行った時、ポスターに写っている西田さんの顔を見て、それだけですごく幸せな気持ちになれたんです。だから僕も同じように、この人を見るだけで、この人の作品を見るだけで幸せだなって、そう思ってもらえる人になりたいです。
◆西田さんとはまだお会いしたことはないんですか。
ないです、ないです! もしお会いできたらきっとうれしすぎて、握手を求めちゃうと思います(笑)。
◆いつか西田さんと共演できるといいですね。
何十年後になるか…。でも、その時まで頑張りたいです!
■PROFILE
●ほりけ・かずき…1997年11月21日生まれ。岡山県出身。2016年に『ラストコップ』でデビュー。昨年は『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』『明日の約束』、映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(石井裕也監督)などに出演。『明日の約束』では、初の連続ドラマレギュラー出演を果たした。
■ドラマ情報
「BG~身辺警護人~」
テレビ朝日系
毎週(木)午後9・00~9・54
※3月15日の最終回は午後9・00~10・09の拡大版
●photo/中村圭吾 text/甲斐 武