堺雅人・高畑充希共演で、西岸良平原作のコミックを映画化した「DESTINY 鎌倉ものがたり」のBlu-ray&DVDがいよいよ発売。「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズに続き、本作でも独特の西岸ワールドに挑んだ山崎貴監督にインタビュー。
どういう結果になるか、自分でも想像がつかなかった
◆本作を撮るにあたって、山崎監督がいちばん大切にされたことを教えてください。
主人公である、一色先生(堺雅人)と亜紀子さん(高畑充希)の夫婦2人の距離感。誰が見ても「この2人を別れさせたくない」と思ってもらうことが大事でした。2人がかわいらしく、いいカップルであればあるほど、引き裂かれたときの痛みは大きいし、夫が“黄泉の国”に妻を助けに行く展開にも入り込みやすくなりますから。なので、堺さんと高畑さんにはひたすらイチャイチャしてくださいとお願いしました。あそこまでやっても嫌味に見えないのはすごいことだと思います(笑)。
◆堺雅人さんと高畑充希さんは山崎組初参加でしたが、お二人の印象を教えてください。
僕の映画のようにVFXがたくさん出てくる作品に一切参加したことのないお二人だったので、現場では勝手が分からず、合成するグリーンバックの前で、とても不安だったと思います。僕もできるだけ伝えようとしていましたが、舞台劇のように想像してもらう感覚で乗り越えてもらうしかなかったですし。だからこそ、すべて出来上がったものを見たときにとても喜んでくださって、僕らスタッフもうれしかったです。
◆いっぽう、堤真一さんら「ALWAYS 三丁目の夕日」メンバーも出演されていますよね。
彼らは「三丁目~」メンバーだからということでお願いしたわけではなく、「この人がやったら面白いだろうな」と思ってお願いしたわけですが、やはり僕のちょっと変わった現場を一回体験している人と初めての人では大きな差があると思うんですよ。だから、現場で堤さんは堺さんや高畑さんに「大丈夫、うまいことやってくれるから」みたいなことを言ってくださって、とてもありがたかったです。
◆劇中のキーとなる黄泉の国の描き方については、どのように考えられましたか?
日本では死というものに対する距離感って、荘厳なものというか、襟を正すもののような感じがするんですよ。実際、僕も子供の頃、怖くてしょうがなかったですし。でも、原作にある匂いというか、死の扱いがどこかライトなんです。一般的に怖いと思われている死神や貧乏神を愛すべきキャラにしようと思いましたし、役者の方もイキイキとやってくださったので、そこも良かったと思います。だから、そこを強調することで、いろんな方から「死ぬのがそこまで怖くなくなった」と言われたのは、作り手としてはありがたかったですね。後々「話が違う!」と思われるかもしれませんが(笑)。
◆一方で、黄泉の国は“「スタジオ・ジブリ映画」的な世界観”という意見もありました。
じつは93年ごろに立山美術館の展示用に作った映像(「新・立山曼荼羅」)が元ネタになっているんです。現代建築が積み上がっている地獄の映像だったんですが、それを明るくした感じですね(笑)。もちろん『三丁目~』的なにおいもあるし、日本人がくつろげる空気感のような、いろんなものの複合体になっていると思います。なので、こちらが意識してなくても日本的というか、アジアを意識しながらファンタジーを意識すると、ジブリ的な世界観に行きつく気がしますね。
◆結果、2018年のお正月映画 邦画No.1大ヒット作となりました。
公開直後は高い年齢層のお客さんが多かったんですが、だんだん下の層も増え、お正月にかけて、口コミが広がったのはうれしかったです。「人間ドラマ」や「夫婦の話」が描かれていますが、題材としては決して王道ではない珍しいタイプの作品なので、どういう結果になるか、自分でも想像がつかなかったんです。
◆“王道ではない珍しいタイプの作品”とは、どういうことでしょうか?
基本、大人をターゲットにした日本の映画で、ややコミカルなタッチで黄泉の国や魔物が出てくる作品はあまりないです。そういう意味では、企画としてハードルが高くてデンジャラス。作り手がやりたいと思っていても、なかなか作らせてもらえないタイプの作品だったと思います。
◆とはいえ、「ジュブナイル」「リターナー」といった山崎監督の初期作品のファンも満足できる作品にも仕上がっています。
ここ数年、「永遠の0」「海賊と呼ばれた男」のような“This is映画”な作品を撮っていることもあって、「『ジュブナイル』『リターナー』のころの作品をやってほしい」という意見も多いんです。そう言ってくださる方の気持ちもうれしいので、「『DESTINY~』は割とそっち路線の作品ですよ」とツイッターで発言していたぐらい。基本的に、僕は立派な作品ばかり作りたいと思っている人ではないんですよ(笑)。
◆今回のソフト化にあたって収録された映像特典の見どころも教えてください。
ミニチュアとCGを使い分けしたVFXのメイキングは面白いと思いますし、意外と苦労して作っているのが分かると思います。オーディオコメンタリーは、プロデューサーとの飲み屋の会話のようですが、キャラクターの裏話なども満載なんじゃないかと思います。
■PROFILE
山崎貴…やまざき・たかし
1964年6月12日生まれ、長野県出身。2000年『ジュブナイル』で映画監督デビュー。日本映画界におけるCGを駆使した映像表現・VFXの第一人者。05年、『ALWAYS 三丁目の夕日』が第29回日本アカデミー賞の12部門で最優秀賞を受賞。後にシリーズ2作品が制作されるほか、「STAND BY ME ドラえもん」「寄生獣」「永遠の0」などヒット作を手がけ、日本を代表する映画監督として注目を集める。
■作品情報
Blu-ray豪華版 7344円(税込)
DVD豪華版 6264円(税込)
Blu-ray通常版 5184円(税込)
DVD通常版 4104円(税込)
【豪華版特典】※Blu-ray&DVD共通
<音声特典>
・本編オーディオコメンタリー(山崎貴監督 ほか 製作スタッフ)
<特典映像>
・予告編集(特報/予告/TVスポット)
・映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」メイキング
・映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」VFXメイキング
・舞台挨拶集
・東京暇人特番キャスト座談会 完全版
・ZIP!×DESTINY 鎌倉ものがたり スペシャルムービー
<封入特典>
・スペシャルブックレット(P48)
・オリジナル魔物シール
・西岸良平先生劇場用描き下ろしイラストポストカード
【通常版特典】※Blu-ray&DVD共通
<音声特典>
・本編オーディオコメンタリー(山崎貴監督 ほか 製作スタッフ)
<特典映像>
・予告編集(特報/予告/TVスポット)
<出演>
堺雅人、高畑充希、
堤真一、安藤サクラ、田中泯、中村玉緒、
市川実日子、ムロツヨシ、要潤、大倉孝二、神戸浩、國村隼、
古田新太、鶴田真由、薬師丸ひろ子、吉行和子、橋爪功、三浦友和ほか
<監督・脚本・VFX>
山崎貴
<原作>
西岸良平「鎌倉ものがたり」(双葉社「月刊まんがタウン」連載)
<ストーリー>
幽霊や魔物、妖怪といった“人ならざるもの”が日常的に姿を現す古都・鎌倉。
この地に居を構えるミステリー作家・一色正和(堺雅人)のもとに嫁いできた亜紀子(高畑充希)は、妖怪や幽霊が人と仲良く暮らす鎌倉の街に最初は驚くが、次第に溶け込んでいく。
正和は本業の執筆に加え、魔物や幽霊が関わる難事件の捜査で警察に協力することもあり、日々はにぎやかに過ぎていった。
ある日、亜紀子が不測の事態に巻き込まれ、黄泉の国へと旅立ってしまい、正和は亜紀子を取り戻すため、黄泉の国へ行くことを決意する。
公式サイト:http://kamakura-movie.jp/
©2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
●photo/中田智章 text/くれい響