2012年、壇蜜主演で異例の大ヒットとなった映画「私の奴隷になりなさい」。その続編となる、「私の奴隷になりなさい第2章 ご主人様と呼ばせてください」が9月29日(土)より、「私の奴隷になりなさい第3章 おまえ次第」が10月13日(土)より2週間限定連続公開する。公開を目前に控え、第2章、第3章の主演を務める毎熊克哉さん、第2章のヒロイン・行平あい佳さんに、大ヒット作の続編となる本作の見どころ、また撮影裏話などを聞きました。
「濡れ場のシーンは行平さん、もうすごくて…(笑)」(毎熊)
毎熊:前作『私の奴隷になりなさい』を見て、結構な衝撃を受けました。サタミシュウさんの一連の小説を知らなかったので、その続編となると、最初はすごくエッチなのかなと身構えてしまうぐらいの衝撃でした。タイトルもインパクトがありましたし、壇蜜さんがやられていた前作より上があるのかという気持ちでしたね。
行平:オーディションのお話を頂いて、原作を読ませていただいたり、前作を拝見したりしたのですが、官能小説というものを全く知らなかったので、原作を読んでみたらとても文学作品だなと感じました。同時に映像になった時にそれがちゃんと映像として見えるのではないかとも思いました。第一印象としては性表現とかそういうものもあって刺激的ではあったのですが、脳内ではきれいな映像として映っていたので、私はとてもこの世界に入ってみたいなという気持ちが強かったです。
◆撮影前に役作りという点で意識したところはありましたか?
行平:官能的な作品、日本のものも他国のものも映画は見るようにしました。でも私が演じた明乃に関しては、至って普通の生活をしている人の役なので、それに関しては普通でいるようにしました。
毎熊:役作りというか僕が試したのは視姦ですね。電車とかで向かいに座っている人を見るっていう。
行平:シカン?(笑)怖いですよ!?
毎熊:性的な目で見るっていう。このお話は普通に生活している人がSMの世界にきてしまったという日常の中に十分可能性があるお話だと思うんですね。普段電車に乗っている時は誰とも目を合わせないようにしているんですけど、今回、実際に街にいる人たちはどうなのだろうと。この人たちは普段どういうセックスをしているのだろうとか、そういう目で観察していました。
行平:いかがでした?
毎熊:ほとんどの人が目をそらすとか興味がないというふうにしているのですが、まれに逆に何度も目を合わせてくる方がいて、その時は僕が目をそらしてしまいました(笑)
行平:(笑)
◆劇中に多くの濡れ場のシーンがあり、撮影をするにあたり意識されたことはありましたか?
毎熊:裸で絡み合うというところは2人でいろいろと話しました。壇蜜さんの前作が衝撃だったので勝つとまでは言わないですけど、それとは違うもので勝負したいよねって。また今回のお話は濡れ場のシーン以外のところが大事な気がしていたので、いわゆる“人間”をお互い演じている中でどうしていこうかという方を意識していました。どうでしたか?
行平:はい、そうでしたね。
毎熊:濡れ場のシーンは行平さんと頑張ろうって言っていたんですけど、行平さん、もうすごくて…。
行平:(笑)。すごいってどういうことですか!語弊が(笑)
毎熊:いや、すごかったんですよ(笑)。女性が美しかったり魅力的だったりエロかったり、男は男でどう導こうかとかあったと思うんですけど。…まぁちょっとすごくて…すごいんですよね(笑)
行平:明乃さん、目黒さんをのみ込みそうでしたね。
毎熊:そうそう。
行平:撮影前に監督や毎熊さんとたくさんお話しできていたので、物語の最初では主従関係がしっかりしていて、その後にあるシーンで明乃と目黒の主従関係が逆転するんだって決まっていたので、それに向けてどうするかというのを考えられたのがよかったなと思います。現場では私、監督と毎熊さんに大甘えで付いていきますって感じで演じていたので。
毎熊:お芝居に関してはいつも難しいんですけど、今回の濡れ場に関しては結構楽しかったというか。
行平:楽しかったですね!
毎熊:カメラの前でここまでやっていいんだっていう(笑)、そんな感覚もありました。
行平:どこまでできるかやってみよう!みたいな。
毎熊:あったね。
行平:目黒と明乃でどこまでいけるか合戦でしたね。スタッフさんもすごい勢いと熱意のある方ばかりで、女性も多かったので。こう撮影現場全体が熱量に包まれた感じで、楽しかったです。
毎熊:もう熱気がすごかったですよね。
行平:撮影していたホテルの窓が曇るほどの熱量でしたね。
◆「楽しかった」とのことですが、ノーパンで町中を歩くといった過激なシーンもありました。
行平:過激なシーンは多かったのですが、撮影全体を通して楽しかったですね。
毎熊:自分ではない他の人がやっていたら撮影が大変そうだなって思うと思うんですけど、いざ自分が好き放題やってくださいってなったら、はい!って。変な大変さはなかったです。
行平:撮影は大変は大変だったんですけど、役として楽しめました。解放されていました。
◆目黒と明乃の主従関係が次第に変化し、目黒と明乃の日常にも変化が訪れていきます。過激な濡れ場とは一転した日常が本作ではとても丁寧に描かれていると思いました。
毎熊:目黒が明乃と逢瀬しているシーンや『おまえ次第』で逢瀬を重ねるシーンは、“演じよう”と思っていました。例えば自宅のシーンは夫として、奥さんとは芝居をしているんですけど、オフモードであって。逆に家の外での逢瀬はお芝居をしようという感覚でした。そこがはっきりしていれば、目黒が崩れていく様が出てくると思ったので、自然なお芝居というよりかは、ご主人様を演じているという感じを意識しました。
行平:明乃も目黒さんとのシーン以外の旦那さんと一緒にいるシーンや1人で過ごしているシーンとかは特に変わったことはしないように心がけていました。突飛なことをせず、至って普通でいるように。ご覧になる方には、明乃が物語の導入になる可能性が高いので、そこでキャラクターが強すぎたりすると物語に入り込めなかったりすると思ったんです。それはなるべくゼロになるようにしたい、性格が分かっちゃうようなことはなるべくしないように心がけました。
◆以前から面識があったというお二人ですが、今回、目黒と明乃を演じたことによって、お互いの印象が変わった部分はありましたか?
毎熊:変わりました。
行平:変わっていますね。最初お会いした時は、映画『ケンとカズ』(2016年・毎熊さん主演作)の印象がものすごく大きかったので、真面目な方だろうと思っていたし、そこにちらつくケンカズの感じだったんです。でも今回ご一緒させていただいて、撮影前もコミュニケーションを取らせてもらっていたので、優しさとか慈しみのほうが強くなりました。しかもなんかちょっと笑いを取ってやろうみたいな、ちょっとだけスパイス入れてくるのが…(笑)
毎熊:ふざけた人間なんですよ(笑)
行平:ちょこちょこスパイスを入れてくるので、撮影中も目黒さんとして色気があって。そのスパイスも色気に感じちゃう何かを持っていらっしゃいます。撮影を通して、色気のある人という印象にがらっと変わりました。だから今『ケンとカズ』を見返したら、誰?ってなるかもしれません(笑)
毎熊:行平さんって透明感があって、そのさわやかなイメージに、手の届かなさみたいな距離感があったんですけど、この作品をギトギトにやって、女だなって思いました。いい意味での危なさみたいなのを感じたんですよね。この作品をやらなかったら出会わなかった要素だと思います。毒があった方が危うくて引き込まれていく…その面を見つけたっていう感じですね。他人同士って見た目の印象と肌を合わせた時の印象が違うというか、ハグとかでもそうなんですが、分かることってきっとあると思うんですよね。男同士でも。行平さんは明乃に適役だという感じがしました。
◆この作品に関わったことで新たに知ったことはありましたか?
毎熊:それ、僕も思いました。専門家の方とお話した時に分かったことは、すべてを与える存在というか、究極の愛の形でもあるような気がしました。自分の生活のすべてを懸けてその奴隷と呼ばれる人たち、女性だったり男性だったりを思っていないとできないことだと。お話を聞いている時に僕にはなれないなと思いましたね。
行平:主導権を握るってことは、やることをいろいろ決めないといけないですしね。SMのSはサービスのSとはよく言ったものだなって。
毎熊:SMという世界も傍から見ているものとその世界の人たちは違って、なんか本当に深い世界だなっていう感じです。
行平:意外と身近な世界だけど、どこまでもいってしまう深さがありますよね。
毎熊:映画の中でも明乃が目黒に対して行為をしている時に涙を流しているシーンがあるんです。でもなぜ泣いているのかは目黒も明乃も分からない。演じていく中でずっとどういうことなんだろうと考えていて。それが最終的に『おまえ次第』で目黒が鞭ではたかれるシーンにまでつながっていて。そのシーンを撮影した時に、2人の中に愛情みたいなものがないと成立しないプレイだなと思いました。それは初めて知ったというか、感じたというか。ただのSMプレイではなくて、そういう愛情の受け渡しもあるのかなって。
行平:信頼関係。
毎熊:うん、信頼関係のような愛情というか。
行平:受け入れるにはそういう気持ちがないとできないかもしれませんよね。
◆最後に本作のPRをお願いします。
行平:見た目はすごく刺激的だし、裸だったりエロス全開だったりという部分もものすごく売りでもあるし、戦いどころだっていうのもあるので、まずはそれを第一段階として楽しんでもらいたいですね。それをご覧になりながらひもといていった時に、ものすごく人間くささがあったり自分の中でよくかみ砕けられない気持ちを感じたり、まさにそれが純文学的な自分の気持ちに、もやを残してくれるような映画になっています。それを持って帰っていただいて自分の中で咀嚼していただけたら、きっと新しい世界が見つけられると思うので、そういった面でも楽しんでいただけたらと思います。
毎熊:例えばジャッキー・チェンの映画を見るような気持ちで、あのかっこいいアクションシーンが見たいみたいな気持ちで、『私の奴隷になりなさい』ではエロを、女性たちのきれいな体を見てほしいです。まずはそういう気持ちで見ていただいて、いざ見てみたら、この映画泣くと思ってなかったけど泣くかもしれないとか、想像もしないような深さを感じると思います。まずはジャッキー・チェンの映画を見るようなノリで見に来てもらって、だまされて帰ってほしいですね。
行平:それ、すてきです!
毎熊:男とか女とか超えた欲望があったり、かわいらしさもあったりするので。まずはどんなものなのかなぐらいの気持ちでね。
行平:ぜひ女性にも楽しんでいただけたうれしいです。
■PROFILE
毎熊克哉
●まいぐま・かつや…1987年3月28日生まれ。広島県出身。A型。2016年公開の主演映画「ケンとカズ」で第71回毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞ほか多数受賞。主な出演作に映画「北の桜守」「素敵なダイナマイトスキャンダル」「万引き家族」「空飛ぶタイヤ」「純平、考え直せ」など。
行平あい佳
●ゆきひら・あいか…1991年8月8日生まれ。東京都出身。2014年大学卒業後、フリーランスの助監督として映像作品に携わり、その後CMなどの絵コンテライターとして活動。女優業も並行して行う。主な出演作に映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」ほか。母は女優・寺島まゆみ。
■映画情報
『私の奴隷になりなさい第2章 ご主人様と呼ばせてください』
9月29日(土)より2W限定公開
池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
<STAFF&CAST>
監督:城定秀夫
原作:サタミシュウ
脚本:石川均 城定秀夫
出演:毎熊克哉 行平あい佳/百合沙 三浦誠己
<STORY>
大手広告デザイン会社で仕事をする目黒(毎熊)は、婚約者のいる身でありながら、ある日清楚で保守的だがどこか妖艶な雰囲気を持つ人妻・明乃(行平)に出会い、強引に口説いて関係を持つようになる。明乃は目黒の見立て通りどんどん積極的なっていき、目黒は明乃との逢瀬にのめり込んでいくが、そんな折目黒の会社に得意先広告代理店の部長で瀬尾(三浦)と名乗る男が突然訪ねてくる。男は明乃の夫であった。
瀬尾は目黒に、不倫の報復としてその場で社会的全てを奪うと宣言し、そうされたくなければ妻・明乃との関係を続け明乃を調教するように命令する。目黒は理解に苦しむが従うほかない。その日から、瀬尾の指示のもと、明乃の更なる調教が始まった。それは、目黒にとって泥沼の恋愛にも似た破滅への道となっていった。一方の明乃は、本人でも抑制できないほど奴隷としての素養を開花させていくが…。
『私の奴隷になりなさい第3章 おまえ次第』
10月13日(土)より2W限定公開
池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
<STAFF&CAST>
監督:城定秀夫
原作:サタミシュウ
脚本:石川均 城定秀夫
出演:毎熊克哉 杉山未央
百合沙 行平あい佳/池田良 石田佳央 原田裕章/川合瑞恵 範田紗々 山根千芽 福山理子 榊英雄
<STORY>
目黒(毎熊)には数年前、明乃(行平)という人妻の奴隷調教をその夫に命令されながら行い、明乃との関係にのめり込んだ矢先に関係を剥奪されて心に大きな傷を負ったという過去があった。そんな目黒は現在、自分自身が奴隷をコントロールする“ご主人様”となって何人もの奴隷を飼い、過去の自分が受けた“隷属”を他人との関係に築こうと懸命になっていた。そして、ある日繭子(杉山)という見た目からわかるほど奥手な、だが強烈に調教願望を刺激される女性と出会う。出会ったその日に、その場で繭子を奴隷として開眼させ、調教を始める目黒だったが、その視線の先にはどうしても人妻・明乃の影がちらついていた。一方、繭子は目黒の調教を受け、女としての見た目も内面も研ぎ澄まされていく。目黒はもはや繭子の成長に追いつけない自分を感じ始めていた。そんな折、複数飼っていた奴隷たちとの関係にも破綻がきたし始める…。
©KADOKAWA 2018
●photo/中村圭吾 hair&make/板谷博美