人がうそをつく瞬間の0.2秒間だけに現れる、その人固有の“マイクロジェスチャー”を読み取り、「被疑者のうそを見破る」女性刑事・楯岡絵麻を演じている栗山千明さん。演じる上で意識していることや、撮影現場のエピソードなどを聞きました。
キャピキャピな絵麻を演じている自分にテンションが上がっちゃいました!(笑)
◆絵麻は、行動心理学を用いて被疑者の自供を聞き出そうとします。専門用語も含めてセリフも多いかと思いますが、絵麻を演じる上でどんなことを意識していますか?
絵麻が行動心理に関して詳しくて、饒舌に話しながら被疑者を追い詰めていく…というシーンは、このドラマの面白さ、一番の見どころだと思うんです。脚本を頂いた時から、セリフ量や専門用語がたくさん出てくる大変さは覚悟していたんですが、予想どおり大変でした(笑)。一番意識しているのは、絵麻の作戦ともいわれる、最初に被疑者の行動パターンやクセからマイクロジェスチャーを見極めるために、相手の警戒心を解こうとフレンドリーに接しながらお喋りするところ。いわゆる“キャバクラトーク”のようなもので、相手の緊張がほぐれたと思った瞬間から核心に迫るようなことを聞き始めて追い詰めていきます。その前半部分のトークを、どう立てていくかというのは常に考えています。
◆確かに、相手が不快に思わない程度に、かつ親しくなるようなところまで被疑者との距離を縮めていきますよね。
そうなんです。被疑者とのパーソナルスペースをいかに詰めていくかが大事になる半面、コメディ要素もあって。あまりフレンドリーすぎてテンション高く接してしまうと、「相手をバカにしているように見えないかな?」とか、意外とバランスが難しくて。例えば「そのTシャツかわいい!」って言うのも、どれぐらいの声のトーンやテンションで言えばいいのか…今でも探りながら演じています。深い時間まで撮影をしていると、そのあたりのバランスが分からなくなってハイテンションになったりするので気をつけています(笑)。
◆栗山さん流のテンションの上げ方はありますか?
私自身、語尾に“☆”や“怒”マークがついたセリフは初めてですし、ボディタッチをしながら距離を詰める“キャバクラトーク”のようなお芝居もやったことがなくて新鮮です。そんな絵麻を演じていくうちに自分自身が面白くなってしまって、自然とテンションが上がっています(笑)。最近は、その話し方にプラスして、あひる口やおちょぼ口をしながら「~ってどういう意味ですかぁ?」ってぶりっこしたり、口をとがらせて「チンプンカンプン~」って言ったりして、バディの西野(白洲迅)にツッコまれまくってます(笑)。あまりやったことないしぐさばかりなので、やっていて楽しいです。
◆そういった表情も含めて、新しい挑戦が詰まっているんですね。
これまでもコメディ作品だったりシリアスな刑事ドラマにも出演させていただきましたが、絵麻みたいにコミカルな部分もあってシリアスな部分もあるという、いろんな要素がある役は初めてです。なので、撮影前に森田(昇)プロデューサーや監督さんとお話しさせていただいて、絵麻のキャラクターを固めていきました。
私より若いのにしっかりされているので、すごいなと感心しています。合間には、アニメの話とか、食べ物について話したり、たわいない話が多いですね。あと、西野は絵麻のバディですが、取調室では心の声が多い分セリフがあまりなくて。その代わり絵麻は行動心理学などの説明ゼリフが多いので、この前「そろそろ話数も重ねてきたし、もう心理学の説明は覚えたでしょ?言えるでしょ?」って冗談で白洲さんに提案しました(笑)。毎話必ず出てくる3つのF(Freeze、Flight、Fight)に関しても西野が「“(被疑者が)今、フリーズしましたね”とか説明できるんじゃない?」って言ってます(笑)。
◆作品のテイストと違って和やかな現場なんですね。
そうですね。今まで私が経験してきた撮影は、1日で撮る分量は多くても台本で20ページぐらいだったんですが、この作品は1日に40ページぐらい撮らないといけなくて。ありがたいことに絵麻はずっと出ているので、合間の時間も少なくて「次なんだっけ?」って毎回確認するぐらい、ついて行くのに精いっぱいなんです。でも、ごはん休憩の時に共演者の皆さんといろんな話をさせていただくのが気分転換になっています。朝から夜遅くまで丸一日取調室での撮影が多いので、休憩時間と差し入れが楽しみで(笑)。あとは、時間があれば飲食店を検索しています。食べに行く時間はなくて見るだけなんですけど(笑)、それだけでもリフレッシュできます。本当は、もうすぐ秋だからサンマのお刺身とか、魚介類を食べに行きたいんですけど…難しいかな~。
◆絵麻を演じていくうちに栗山さん自身も心理学に詳しくなるのでは?
意外と実施できそうなものがないんです。私自身、うそもつけないし見抜く力もあまりないから、マイクロジェスチャーを見つけてもその人のクセなのか判断できないんじゃないかな(笑)。唯一できそうと思ったのは、2話で出てきたパーソナルスペースの話。相手との距離によって自分の深層心理が分かると思うし、自己分析にもなりそうだなって演じながら思いました。
◆そういった見方もできるドラマなのは面白いですよね。最後に、今後のドラマ展開や見どころを教えてください。
今までの被疑者もクセ者ぞろいでしたが、今後も弁護士を取り調べるというある意味正義と正義がぶつかり合う回もあります。絵麻が真相を暴く謎解きはもちろん、真相に近づくためのバトルもどんどんインパクトが強くなっていきます。取調室で取り調べをするというベースは変わりませんが、また心理学の違った角度から切り込んでいく絵麻の姿も見ていただけると思います。何となく行動心理学について知っている方も、「本当はこういうことだったんだ!」って腑に落ちる情報も知ることができるので。ドラマを見続けていただき、それを皆さんの知識にしていただけたら、さらに楽しめると思います!
■PROFILE
●くりやま・ちあき…1984年10月10日生まれ。A型。最近の主な出演作に『遺留捜査』シリーズなど。舞台「十二番目の天使」が2019年3月16日(土)より上演。映画「チワワちゃん」が2019年公開。
■番組情報
土曜ドラマ9
『サイレント・ヴォイス
行動心理捜査官・楯岡絵麻』
BSテレ東
後9・00~9・54
●Hair&Make/奥原清一(suzukioffice)Styling/ume 衣装協力/KAMISHIMA CHINAMI
●photo/山越隼 text/宮西由加