10月18日(金)公開の映画「楽園」の舞台あいさつが大阪・TOHOシネマズ 梅田で行われ、綾野剛、佐藤浩市、瀬々敬久監督が登壇した。
「皆さん、こんばんは。大阪~大好き~!」と投げかけた綾野は、観客から「イェ~イ!」とレスポンスが返されると「いいですね~。これがやりたかったんです。今日の一番やりたかったことができました」と喜んだ。
佐藤は「今日は朝から稼働していて、ちょい壊れかけています(笑)。楽しめるような作品ではないと思いますが、何か持って帰っていただきたいなと思います」と。
瀬々監督は「一時期関西に住んでいたこともあったので、お!ナビオ阪急か。と思って来ました。あとこの劇場は、シネコンらしからぬ、昔ながらの劇場スタイルなので、いい感じだなと思っています。今日はよろしくお願いします」とあいさつした。
関西への思いに対する質問に「関西大好き!」と即答した綾野は「大阪で撮影をしたことがないので、今後ぜひ大阪で撮影がしたい」と熱望。
撮影場所はたくさんあるのでぜひというMCに対し「ほんまですか?いや、ゆうてもでしょ~?」と関西弁でツッコみ、会場を沸かせた。
佐藤は「僕らの世代は京都の撮影所が非常に多くの作品を撮っていた時代なので、僕にとっての関西は京都ですね」と語った。
「64-ロクヨン-」以来の再集結となった3人。瀬々監督は綾野と佐藤の魅力について「綾野さんは15年以上前、まだこんなにメジャーになる前から知っているけれど、繊細さとインディーズ魂を持ち続けており、作品の大小にかかわらず取り組んでくれ、それが作品によく出ているなと思います。浩市さんは、見えないと思いますけど同い年で(笑)、頼れる上司みたいな役が多いですが、実はとても優しい心の持ち主だなと思っています」と語った。
綾野は佐藤に対し「『64-ロクヨン-』からずっと背中を見続けていますね。浩市さんの背中には修羅があるというか、今まで起こったいろいろなことや思いを背中から感じるんです。今回ご一緒できることになった時も、とても安心感がありました。普段はプライベートでも食事に行ったりします」と。
佐藤は綾野について「ハードな部分とソフトな部分を持ち合わせていますね。中堅と呼ばれる一番難しい年齢に差し掛かっていますが、例えば、綱渡りをするにしても安全な渡り方をしたいって思う役者もいるけれど、どうせやるなら目隠しして渡った方が面白いでしょって言えるハードな面もあるし、冷静にちゃんと人を観察している面もあり、すごく多面的な部分を持った役者だと思います」と絶賛。照れた綾野は「今めっちゃ観察してます」と客席を見つめ、笑いを誘った。
本作の役柄にちなんで“追い詰めたこと、追い詰められたこと”について、綾野は「自分で自分を追い込んで、追い詰められていますね。どうやったら映画に対して等価交換できるのかということを考えて精神的にも追い込んで、今回もいいとこまでいけたかなと思います」とストイックさを感じさせた。
佐藤は「僕らの時代は追い込まれまくりですね。相米 慎二監督というワンシーンワンカットで有名な監督がいて、『魚影の群れ』という映画の撮影初日は午前中いっぱいリハで、午後になってやっとテイクを回し始めて、何十テイクも撮った後に、今日はもうやめようと言われてすごくショックでした。けれどそういった追い込まれた状況っていうのは、その後の自分にとって決してマイナスじゃなかったと思いますね」と当時を振り返った。
一方、前日に飲みすぎたという瀬々監督は「僕はもう毎日追い詰められて生きてますよ。今も追い詰められてます。早く帰りたいです」と。するとすかさず綾野が「ただの二日酔いじゃないですか」とツッコみ、会場は笑いに包まれた。
また、最近大盛り上がりのスポーツに話題がおよぶと、スポーツ大好きな綾野は「ラグビーに、世界陸上に、マラソンのMGCに、そろそろ出雲駅伝も始まりますよね!本当によだれダラダラです。映画はどこか虚構な部分がありますが、スポーツは無条件で本当に圧倒的なノンフィクションですよね」と目を輝かせた。
佐藤は「我が横浜ベイスターズは阪神タイガースさんに先日負けましたもので。ぜひ阪神タイガースの皆さんには巨人戦頑張っていただきたいと思います!!」とエールを送り、客席から大きな笑いと拍手が起こった。
すると巨人ファンだという瀬々監督が「さっき速報を見たら現在巨人が勝っているそうです!僕の嫁は阪神ファンなので、帰ったらバトルが起きると思います」と続けた。
最後に瀬々監督は「ちょうど1989年に監督になって30年目になるのですが、『楽園』は30周年記念映画だと思っています。いつの間にかなんでこんな時代になっちゃったのかなぁと、普段思ったりします。こんなにいがみ合ったりとか、国と国が憎しみあったり、こんなはずじゃなかったなぁと。そんなことを思いつつ作った映画です。何か感じてもらえればいいなと思います」と語った。
佐藤は「掛け違えたボタンというのは掛け直すことができるんですけど、掛け違えたボタンを掛け直すこともできずに、自分で一番望まない所に向かってしまう弱者がいるということを、観て考えていただけたらうれしいなと思います。その中で、そこに『楽園』というこのタイトルの意味合いとかをいろいろオーバーラップにして考えてほしいです」と。
そして綾野は「この映画が皆さんにとって、出会ってよかったと思える作品になったら本当に幸いですし、舞台あいさつ前も流れていましたけど、『一縷』という曲があります。これは“一括り、ひとまとめ”という言い方もできるんですけど、きっとこの作品で皆さん打ちのめされる部分もあると思いますし、苦しくなる部分もあると思います。ですがこの楽曲が必ず皆さんを包み込んでくれていると信じております。帰られた後、ご家族だとか、お子さんなのか、兄弟なのか、彼氏なのか彼女なのか、自分にとって大切ないとおしい人をもう一度抱きしめてみてください。この映画は、世の中には抱きしめなければいけない人がいるということを、僕たちは映画という形で伝えられたらと思っておりますので、皆さんにこの映画を託します。ぜひ受け取っていただけたら幸いです」と締めくくった。
映画「楽園」
10月18日(金)公開
<出演>
綾野剛/杉咲花
村上虹郎 片岡礼子 黒沢あすか 石橋静河 根岸季衣 柄本明
佐藤浩市
主題歌:上白石萌音「一縷」(ユニバーサルJ)
作詞・作曲・プロデュース:野田洋次郎
原作:吉田修一「犯罪小説集」(角川文庫刊)
監督・脚本:瀬々敬久
配給:KADOKAWA
制作プロダクション:角川大映スタジオ
公式サイト:rakuen-movie.jp
第76回ヴェネチア国際映画祭公式イベント“Focus on Japan”正式出品作品
第24回釜山国際映画祭“A Window on Asian Cinema”正式出品作品
©2019「楽園」製作委員会