「完全なる飼育」シリーズの9作目となる最新作「完全なる飼育 étude」の公開が決定した。
1999年の第1作以来、数々の衝撃作を送りだしてきた「完全なる飼育」シリーズ。7年ぶりとなる最新作は、劇中の舞台「完全なる飼育」の物語の中で繰り広げられる“飼育”と、その舞台に挑む若手俳優を演出家が稽古という名の“飼育”をするという二重構造。これまでとは異なり、女性が青年を飼育するというストーリーが展開される。
撮影はオール台湾で行われ、俳優たちの生々しく激しい体当たり演技と台湾ならではの美術セット、艶やかで美しい極彩色に彩られた舞台照明や衣装が、男女の間のサディスティックな世界感をより一層際立たせる。
主演の月船さららが、近寄りがたい孤高の存在であり強さと妖艶さを兼ね備えた女性演出家・小泉彩乃役を、市川知宏が若手俳優・篠田葵役を演じる。また、これまでシリーズ8作のうち7作に出演している竹中直人も出演する。
加藤卓哉監督 コメント
月船さんの類稀な表現力と、市川君の迫真の芝居が、台湾という場で化学変化を起こし、この映画を自分が想像していたよりもひとつ高いステージに押し上げてくれました。
批判し攻撃することでしか自分を保てないような今の世界に、「赦す」という言葉で何か変化を与えられたら。そんな想いを共有した信頼するスタッフの力を借り、「完全なる飼育」という冠に恥じぬよう、覚悟を持って撮った作品です。
月船さらら コメント
この物語は「舞台」のお話です。その「舞台」こそ、私が10代の頃から人生を賭けてきた世界でした。だから「彩乃」を演じることにプレッシャーも感じましたし、彼女の「舞台への情熱」に嘘がないようにしたい。
愛情や情熱が深くなるほど、それは歪み、いつか狂気に変貌するのかも知れません。
自分がいつそうならないとも言えない……でも彩乃の狂気に、私はどこか神聖さすら感じていたのです。
新しい「完全なる飼育」、楽しんでご覧頂ければ幸いです。
市川知宏 コメント
映画「完全なる飼育」に出演させて頂きました。
過去に何作と作られてきた「完全なる飼育」シリーズに参加することができ、とても光栄です。
今回は「孤独」と「赦し」がテーマになっています。
是非その2つに着目して観て頂きたいと思います。
そして今回の作品はオール台湾ロケということもあり物語の中心となる劇場や街並み、海など全てが幻想的で素敵な場所になっています。
その情景もたっぷりと味わって頂ければと思います。
柘植伊佐夫プロデューサー コメント
完全なる飼育シリーズ9作目にあたる本作に、クリエイティブ全般のプロデュースで参加させていただきました。シリーズの一貫したテーマ「エロス」をベースに、劇中劇と現実が交錯していく中に、創作への情熱や限界を越えるために現れる異常性、そして人を「赦す」ことを軸に人間たちを描きました。キャスト・スタッフともに素晴らしいチームワークで完成した作品です。お楽しみください。
作品情報
映画「完全なる飼育 étude」
2020年11月27日(金)ヒューマントラスト渋谷ほかで公開
出演:月船さらら、市川知宏、金野美穂、寺中寿之、永井すみれ、松井るな、竹中直人
監督:加藤卓哉
原作:松田美智子
脚本:山本浩貴
ストーリー
イギリスの演劇界で名を成した後、日本に凱旋帰国。その前衛的な作風で演劇界の寵児として一世を風靡した女性演出家・小泉彩乃(月船さらら)。しかしながら、ここ数年は観客動員が伸び悩み、とことん追い込むその演出スタイルは俳優からも敬遠されている。
新作舞台『完全なる飼育』の公演初日を2日後に控えている中、サディスティックな演出についていけなくなった主演俳優が突如降板してしまう。代役のオーディションがすぐさま行われたが、なかなか決まらない。もはや中止にするしかない。諦めた彩乃が劇場を後にしようとした時、一人の青年・篠田蒼(市川知宏)がやってくる。演技が上手いとは到底見えない蒼に、もうオーディションは終わったと言い、追い返そうとする彩乃。だが、蒼は、何とかオーディションを受けさせて欲しいと懇願する。そのすがるような眼差しに血が騒ぐ彩乃。 そして、二人きりの過酷な舞台稽古が始まる──。
舞台『完全なる飼育』は、実際に起きた女子高生誘拐監禁事件に着想を得た、江戸時代、藩主の娘・菊姫を貧しい鍛冶職人が拉致・監禁し、次第に二人に恋愛感情が芽生えるという前衛時代劇。
蒼に対して、稽古という名の容赦ない“飼育”をしていく彩乃。“飼育”を経て、やがて、蒼の演技は徐々に凄みを増し……遂に、二人の関係は逆転するのだった。
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