角川春樹最後の監督作品と言われる映画「みをつくし料理帖」。松本穂香演じる女料理人・澪と、奈緒演じる幻の花魁・あさひ太夫こと野江の友情と絆を描いた物語だ。そんな澪に思いを寄せる町医者・永田源斉役で出演する小関裕太さんに、作品の見どころや共演者とのエピソード、プライベートについてお話を伺いました。
◆本作へ出演が決まった時はどのような気持ちでしたか?
最後の監督作と言われている作品で、源斉というすごく重要な人物を演じることになって、最初はどうしてこんな僕を?っていう感覚でした。でも後々聞いたら角川監督が僕の出ている作品をいくつも見てくださっていて、それで声をかけていただいたみたいで。こういう役に抜擢していただいてうれしかったです。
◆小関さん演じる源斉はどのような人ですか?
源斉は父親が御典医という家柄で育ってきたので、それを継ぐ前提で毎日を過ごしていたのですが、地位の高い人やお金持ちの人にしか医療を届けられないという現実に、「僕が目指しているのはそこじゃない」と葛藤し、父親とぶつかり合って家を出て。その正義感と優しさから、さまざまな人に医療を届けたいと町医者になった、志を持った男性です。
◆源斉は、偶然出会った澪(松本穂香)を気にかけ、優しく見守っていきます。
無垢に1つのことを頑張っている姿がカッコよく見えたんじゃないかな。かわいらしい部分もあるんですが、やっぱりその芯の太さ。源斉は20代前半でありながらいろいろな人に頼られている存在で、人の命や思いを背負っている責任感のある人です。なので、お店を継ぐということや、何かをやり遂げたいという澪の思いに共感してひかれたのかなって。特に吉原のお祭りの時に隣にいる澪を見ているシーンが印象的で、壁にぶつかっている彼女の視野を広げてあげたいという兄のような思いと、心をほどいてあげたいという恋の始まりのような中間の感情で見守っているシーンで、源斉の表情を表した魅力的なシーンになっているのではないかなと思います。
◆小関さん自身は澪のような女性をどう思いますか?
魅力的に感じて、ひかれると思います。実は小学生のころから「芯のある女性が好き」っていうのを自覚していて、何か1つやりたいものがあるという人はすごくカッコいいなって思って、好きになることが多いんです。
◆となると、源斉に共感できる部分や似ている部分は多かったですか?
志があるという点では似てていたいなと思います。それ以外は憧れのほうが強いです。もし恋敵になったら勝てないので、同世代にはいてほしくないですね(笑)。
◆最後の監督作となる角川監督から受けた演出や言葉で印象に残っていることはありましたか?
監督からは「違う、違う」って、よく言われていました。でも何が違うのか自分では分からない時があって、その時は監督に直接教えていただきました。それは源斉の生きるスピード感であったり、彼が過ごしている時間の重さみたいなものに対する考え方についてだったんですけど。僕もゆっくりと丁寧に捉えていたつもりでしたが、足りていなかったんです。でも、完成したものをスクリーンで見た時に源斉の姿が「自分が見たことのない自分だ」と思えて。それを引き出してくださっていたんですよね。なので、印象に残っている言葉は「違う」です。撮影では、カメラをあまり気にしないようにしていました。映画ってワンカメが多くて、常にカットに意図が大きくある。僕としても、どうしてもそれをくみ取って演じようとする部分があって。どういう角度が一番いいかなとか、どういう動きをしようかとか気にしちゃいがちだったんですけど、今回は自然と”いる”というふうに演じられたかなって思います。
◆撮影現場はどのような雰囲気でしたか?
とにかく撮るスピードが速かったです。カメラワークも既に決まっていて、あとは役者が入るだけっていう環境で。リハの時点でカメラが置いてあるから、常に回っている感じ。段取りしてテストして本番っていうのが普通なんですけど、段取りとテストが兼用されていて、あとはもう本番みたいな感じでしたね。それで早く終わった時はみんなでご飯を食べたりして、ゆったりとした雰囲気でした。
◆本作にちなみ、もし小関さんが大切な人に料理を振る舞うなら何を作りますか?
カルパッチョ!魚の切り身を薄く切って、ピンクペッパーを潰してかけて、オリーブオイルや塩コショウなどで味付けをします。料理を振る舞うというより飲むのが好きなので、まずお酒を決めてからそれに合うものを作ることが多いです。一緒に作りたいタイプなので、親友の家に遊びに行った時などは、それぞれ一品ずつ作り合ったりしますね。
◆よく料理はされるのですか?
この間は、土鍋で米を炊きました。豆を入れて豆ごはんを作ったり、塩昆布と白ごまを入れたり。最近は和食を楽しむことが多いです。劇中で源斉が発している「食は人の天なり」って言葉がすごく身になって、人は食べるものでしか作られてないんだっていうのを実感したので、口にするものを気にしていきたいなって感じながら生活しています。
◆最後にメッセージをお願いします。
僕は昔から時代劇を映画館で見るのが好きで、朝から映画館でコーヒー片手にゆっくりとした時間を過ごすことが多かったんです。なので、身近にあるスマホなどで遊ぶのも良いですが、特に自分と同世代や下の世代の方々には「こういう楽しさもあるんだ」って知ってほしいですね。ゆっくりとした時間を味わいながら見てもらいたい作品です。
PROFILE
小関裕太
●こせき・ゆうた…1995年6月8日生まれ。東京都出身。AB型。
主な出演作に連続テレビ小説『半分、青い。』、映画「わたしに××しなさい!」「シグナル100」など。スペースシャワーTV『BOOM BOOM BOOM ch. 』にMCとしてレギュラー出演中!
Twitterアカウント:https://twitter.com/yutakoseki
Instagramアカウント:https://www.instagram.com/yuta_koseki_68/
作品情報
映画「みをつくし料理帖」
2020年10月16日(金)全国一斉公開
<STAFF&CAST>
製作・監督:角川春樹
原作:髙田郁「みをつくし料理帖」(角川春樹事務所)
出演:松本穂香 奈緒 若村麻由美 浅野温子 窪塚洋介 小関裕太 藤井隆
野村宏伸 衛藤美彩 渡辺典子 村上淳/永島敏行 松山ケンイチ 反町隆史 榎木孝明 鹿賀丈史
薬師丸ひろ子/ 石坂浩二(特別出演)/ 中村獅童
©2020「みをつくし料理帖」製作委員会
●photo/関根和弘 text/片岡聡恵 hair&make/MIZUHO(vitamins) styling/吉本知嗣