“昔々あるところに”ではなく“今あるところに”「ディセンダント」ケニー・オルテガ監督インタビュー

特集・インタビュー
2015年06月30日

「ハイスクール・ミュージカル」シリーズや、「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」などを手掛け、映画監督や振付師として活躍するケニー・オルテガ。「マレフィセント」をはじめとするディズニーの悪役の子供たちを描いたテレビ映画「ディセンダント」のプロモーションで来日したオルテガ監督に話を伺いました。

伝統的なキャラクターで遊ぶのは責任を感じたね

――どのようにしてストーリーが思い浮かんだのですか?

今回はまず私のほうにストーリーをいただいて、内容自体もディズニー・チャンネルから話があったんだ。素晴らしい脚本家のジョーサン・マクギボンとサラ・パリオットが書き上げた内容になっていてね。そこから作業をしたんだ。

――それに監督から付け加えたアイデアはあるんですか?

オーイェー(笑)。一緒に作業をしましたが、私としては今回サプライズのような企画で。お話をいただいて「やります!」と即答したが、そのあとすぐに責任を感じたよ。なぜなら自分が与えられた機会というのは、新しいキャラクターを作り上げるだけでなく、“伝統的なキャラクターで遊ぶ”ということでもあった。私としてはもともとキャラクターたちが持っている高潔さ、そして内容を維持しながらも、何か新しさを持った作品に持ち込みたいというところがあったんだ。
そして、脚本には魔法のようなことが書かれていて、それを実際のものに作っていかなければならないという過程があった。実際に音楽を使いながら、振り付けをしながら、ユーモアやVFXなどの視覚効果を使いながら、素晴らしい過程を経て作品を作っていったんだ。

――マレフィセントの娘・マルが主人公ですが、それはなぜですか?

マルが主人公なのか、それに拮抗する敵なのか定かではない部分もあるんだ。彼女自身が母の後を追って母のようなキャラクターになるのか、もしくは独自の道を行くのか…。主人公というより、いわゆる物語の中心として運ぶいい役は、「美女と野獣」のベルと野獣の息子として登場する王子・ベンだね。この王子が島に収監されている子供たちを解放して、ちょっと機会を与えようとするんだ。
マルたちが島を離れるとき、マレフィセントが子供たちに目的を与えるんだ。「私のために魔法を持ち帰りなさい。魔法を持ち帰ってくれれば、私がこの世を邪悪で支配する」ってね。物語としては、その状況下でマルがどのような対応をするのかという部分を描いているよ。

「昔々あるところに…」ではなく、「今あるところに」

――昔からあるキャラクターを新しく描くに当たって、気をつけたことはありますか?

とてもいい質問だね。自分として今回気をつけたことは、ウォルト・ディズニーのキャラクターとしてちゃんと敬意を払うことや、その歴史や伝統も考えて扱うこと。しかし、またそれに新しいエネルギーを吹き込んで、新しいアイデアを新しい世代に向けなきゃいけない。
いわゆる「昔々あるところに」ではなく、「今あるところに」という設定を担っている。物語としては「めでたしめでたし」のあとになるね。
この作品は、ディズニーの悪役が20年間島に投獄されている設定で、彼らはそれを良く思っていない。「眠れる森の美女」のマレフィセントも、「白雪姫」の邪悪な女王も、「アラジン」のジャファーも、「101匹わんちゃん」のクルエラ・デ・ヴィルも、もちろんその状況に満足していない。彼らが20年間邪悪でいることができていないという状態が、とても楽しい内容になっているんだ。

――「キャラクターに新しいエネルギーを吹き込む」とのことですが、それを曲やダンスにどのように落とし込んでいったのですか?

音楽はキャラクターに合ったものであったり、物語上それに合った適切なものでないといけない。内容も共感できるものでなくてはいけないし、音楽も現代的であったり、音楽がさらに物語を前に進めていかなければいけない。
音楽はキャラクターの延長にあるんだ。例えばオープニング曲でヴィラン(悪役)の子供たちによるナンバーがあるんだけど、その曲はヴィランの子供たちが退屈して飽き飽きしていて不満もたまっている様子を曲に込めている。音楽自体も彼らと同じエネルギー、性質、個性を持っているからね。

――古い時代を扱った物語を、現代の音楽にリンクさせるのは苦労したのではないですか?

両方の曲があるんだ。例えばマレフィセントの曲は古典的でいわゆる従来のディズニーのスタイル。若い子供たちの場合は都会的な曲だね。

――メリハリをつけているんですね。

そうだね。振り幅は大きいかな。

まだ予想はできないけど、続編も作りたい

――注目してほしいところはどこですか?

以前、僕が担当した「ハイスクール・ミュージカル」の成功の秘訣には、多くの理由があると思う。ザック・エフロンやヴァネッサ・ハジェンズ、アシュレイ・ティスデイルなどの素晴らしいキャスティングだったり、音楽や振付、物語、世界観に惹かれたりね。キャストの相性、音楽や歌詞、ダンスから感じるエネルギーなど、具体的に「これ!」とは言えないけど、あの作品をご覧になった人は何かを感じていただけたと思う。それがうまく伝わったんではないかと。その何かがこの「ディセンダント」にもあると思うんだ!

――「ハイスクール・ミュージカル」は一大ヒットとなりましたが、今回もムーブメントを起こす手応えなどはありますか?

何事も予想を立てることは難しいこと。感触としては、何か特別なことを達成できたなと思っているね。あとは「ハイスクール・ミュージカル」のときと同様、視聴者の皆さんがこの作品とつながりを感じていただければ。そういう意味では自信はあるが、勝利を得たような、娯楽性の高く楽しい作品になっているから、できればあと何回か作れたらいいな(笑)。

――続編を作るということですか?

予想はできないけど、本当に携わった者全員がとにかく楽しく作ったから、また全員でやりたいと思っている。それが叶うかどうかは視聴者の皆さん次第かな(笑)。

 

●取材/金沢優里

 

PROFILE

ケニー・オルテガ/Kenny Ortega
米国カリフォルニア州パロ・アルト出身。
1950年4月18日生まれ 65歳。
映画監督、プロデューサー、振付師、ディレクターとして世界的にその名を知られている。


作品情報

「ディセンダント」
全米:7月31日(金)初放送
日本:年内にディズニー・チャンネルで日本独占初放送。11月6日(金)、7日(土)、8日(日)に東京ディズニーリゾート(R)内で開催の「D23 Expo Japan 2015」で初公開。

エグゼクティブプロデューサー/監督:ケニー・オルテガ
脚本:ジョーサン・マクギボン、サラ・パリオット
出演:ダヴ・キャメロン、ソフィア・カーソン、キャメロン・ボイス、ブーブー・スチュワート、ミッチェル・ホープ、クリスティン・チェノウェス ほか

■ストーリー
「もしディズニーキャラクターに子孫がいて、10代だったら?」という驚きの発想から誕生したオリジナル作品。ディズニーのプリンセスやヒーロー、そして悪役が暮らすとある王国を舞台に、よく知られた物語のその後を、キャッチーな楽曲やダンスシーンを織り交ぜながら描く。

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