北村有起哉さんが連続ドラマ初主演を務める任侠コメディ『ムショぼけ』(ABCテレビほか 毎週(日)後11・55~深0・25ほか)が、10月3日にスタート。本作で、互いに「出ずっぱり」だったという北村さんと、共演の板尾創路さんにインタビュー。2人だからこそ通じ合った、撮影裏話をたっぷり伺いました。
◆北村さんが出演されていた映画「ヤクザと家族 The Family」チームが手掛ける本作。それぞれオファーを受けた時のお気持ちを教えてください。
北村:「主演」ということで驚きはありましたけど、なじみがある方々からのお誘いだったので、これならいけるぞって正直ホッとしました(笑)。そういう意味では、見たことない景色が見れるかなとも思っていて。ただ現場に入ってからは主役というものが本当に大変だということも分かりましたし、僕にとってはかなりの修羅場だったキャリアの1つになるんじゃないかなと感じました。
板尾:まず北村有起哉さんの連続ドラマ初主演作というのに興味がありましたし、そこに参加できることはとても楽しみでした。僕の役柄は、主人公・陣内(北村)の妄想の中に出てくるキャラクター。そういう役どころを演じたこともなかったので、未知数なところもありましたが、視聴者としてもすごく楽しみなドラマだなと思っています。
◆本作では、北村さんが長年の刑務所暮らしによって、出所後、世の中の環境の変化やスピードの速さについていけない“ムショぼけ”状態にある元ヤクザ・陣内を、板尾さんがそんな陣内にシャバの厳しさを突きつける刑務官・夜勤部長を演じていますが、お2人の役柄、そしてお互いの印象はいかがでしたか?
北村:板尾さん、ずっと出ずっぱりでしたね。文字数で言ったら僕よりもセリフがあったんじゃないですか?(笑)
板尾:ちょっとすごいなって思いました(笑)。でもありそうでなかったドラマなので、新鮮に見てもらえるんじゃないかな。キャストの皆さんも、役にはまっていましたね。特に木下ほうか! おっさん、これぴったりやなって(笑)。出てくるキャラクターに、悪い人がいないです。
北村:とにかく板尾さんはスポンジのような存在なので、絶対に不協和音にならない方。まさに役柄、夜勤部長そのままでした。
板尾:もちろんクスっとしてもらえる部分もありますが、油断させといてグッとくるシーンもありますからね。“感動させよう、泣かそう”とすると、人って拒絶しますけど、油断させといてハッと落とすみたいな。僕ら2人、そして全体を見てくださっている監督、演出陣が、その都度客観的に方向性を決めてくださったので、僕は信頼して思いっきりやらせてもらいました。
北村:夜勤部長は大体のシーンでちょっと首出してくるので…。板尾さんは、その“ちょっと”のためにずっと出番を待ってらっしゃいました(笑)。
板尾:確かに待ち時間は多かったね(笑)。だからテストや自分が出てない時もずっと現場の様子を見てた記憶があるけど、北村さんは出てないシーンがほぼない上に、方言の指導もあって。気の休まる場所がなくて、大変だったと思います。でもそうやっていいものを作るために集中力を途切れさせられない日々を過ごしていた北村さんが、何とかして時代の変化についていこうとする主人公を演じるっていうのが、いい感じに重なってたんかなって気がしました。
北村:陣内の立場で考えてみると、彼が刑務所にいた14年の間には電子レンジの性能が上がったとかテクノロジーの進化だけでなく、目に見えないところの変化もすごくあると思うんです。劇中でも描かれていますが、特にネットの普及には相当面食らっちゃうんじゃないかなと。繁華街でけんかをしてるのに誰も止めないで動画に撮って配信するような“傍観者”が増えている一方で、個人としてはネットに人とのつながりを求めている。言い過ぎかもしれませんが、そんな現代社会が僕には“いびつ”に思えて。この作品には、現代特有のいびつさにも主人公が「何だこれ? 」と素直に、そして敏感に感じている様子も描かれているので、そういう部分は攻めてるなと思います。
◆板尾さんからもお話が出ましたが、本編は兵庫県尼崎市を中心としたオール関西ロケで、北村さんは全編関西弁に挑戦しているんですよね。
北村:そうなんです。ただ僕の理想では撮影前に全部セリフが入っていて、現場ではカメラ、照明スタンバイの時は雰囲気を和やかにして、雑談しながらもっと親睦を深めるイメージだったんですが…、全く余裕がなかったです(笑)。
板尾:ずっと方言指導の先生と打ち合わせしてたもんね。
北村:それだけは本当に申し訳なかったです。やっぱり好きな共演者の方とは、いろんな話がしたいですからね。関西弁に関しては、性格上、ある程度までは固めなきゃいけないっていう思いがあって。1つの通過点としてやれるだけのことはやりましたが、あらためて客観的に見て吉と出るか凶と出るかを自分の中で見定めたいと思います。
板尾:僕も方言指導の経験がありますが、アドリブがなかなか言えなくて大変でした。お芝居は生身の人間がすることだから、芝居を受ける時にそれに合わせてとっさにセリフで返したい時もあるけど、方言だとちょっと躊躇しちゃうんですよ。そこにもどかしさがありましたね。
北村:鎖につながれたみたいな感じでした。
板尾:そうそう。それに『ムショぼけ』はスタッフも関西人で、しかも関西で撮影して、放送も関西中心。思いっきり地元の方々に見られるわけでしょ(笑)。
北村:よほど自信があるやつだと思われちゃいますね(笑)。