公開中の映画「恋する寄生虫」の公開記念舞台あいさつが行われ、林遣都、小松菜奈、井浦新、石橋凌、柿本ケンサク監督が登壇した。
本作は、新鋭作家・三秋縋の「恋する寄生虫」を原案に、孤独な2人が「虫」によって「恋」の病に落ちていく、臆病者たちの切なくも美しい“恋×虫”ラブストーリー。心の痛みを抱える主人公2人を演じるのは、本作が初共演でW主演を務める林と小松。また、2人の運命の出会いに深く関係する重要な役に井浦と石橋。監督は、CMやミュージックビデオなど多岐にわたり活躍し、現在放送中の大河ドラマ『青天を衝け』のタイトルバック映像も制作する柿本が務める。
まずは柿本監督が「この映画はほぼこの4人で進むんですが、物語の中に“頭で理解して進む時間軸”と“心で進んでいく時間軸”があって、物理的な芝居、心が動いていくお芝居という難しい芝居が求められたと思います。(この4人は)『心をどうやって扱っていくか?』というところに長けているし、そこは助けていただいたと思います」と繊細な心情を見事に表現したキャスト陣に賛辞を贈る。
そのキャスト陣には、現場で接して気付いた「異色・意外な一面」について質問。井浦は、林との共演は10年ほど前にあるものの、「目を見てお芝居するのは初めてで、ちゃんと向き合ってぶつかっていきたいと思って臨んだ」と明かす。
2人での撮影は3日間ほどだけで、車の中で2人きりのシーンがあったが「意外というより、ファンの方にとっては『うん、うん』ということかもしれませんが…。僕は遣都くんの素の笑顔が見たいと思ってたんですが、車に乗り込んで走り出しても、お芝居での会話以外、全くなかったですね…」と苦笑まじりで述懐。井浦のほうからコミュニケーションを図ろうとしてみたものの「『はい、そうですね』『はい』と返ってくるだけで、全く崩せませんでした…。自分としては負けというか、遣都くんの撮影期間の分厚い壁は何だったんだろう…?」と首を傾げ、会場は笑いに包まれた。
そんな林だが「新さんは、僕が仕事を始めた頃から見ていた役者さん。“ヤバい役作りをする役者さん”というイメージもあって。(井浦の趣味の)登山とかにも興味があるので、いろいろ教えてください!」とお願い。井浦も「ぜひぜひ」と笑顔で応じていた。
石橋は、過去に林と親子役を演じたこともあり「その時から壁は厚かったです(笑)」と証言。今回、コロナ禍とは関係なく、役柄上、林さんが演じた役は、潔癖症でマスクに手袋、防護服などフル装備とあって「なおさら壁は厚いなと思いました」と笑う。
さらに石橋は、祖父と孫娘の関係を演じた小松について「家を出ていこうとする孫娘を止めるおじいさんという役で、映画はリアルな部分が重要なので、(もみあいのシーンでも)あまり手を抜かず、ある程度、力を入れるんですが、菜奈さんに『どう?』と聞いたら『大丈夫です!』と言ってくれて、本番も思い切り力を込めました。なので、小松菜奈の意外な一面は、『屈強』で『頑丈』だということです」と語る。これに小松は「頑丈です!」と笑顔でうなずいた。
小松は、撮影だけでなくプロモーションでも林と長い時間を過ごしてきたが「すごく本を読んでいる方なんだろうと思ってて、私は読まないので『好きな一冊』とかを聞かれても絞り出すほうなんですけど、遣都さんもそういうタイプで安心しました。そこで挙げたお気に入りの一冊が、メチャクチャ分厚いんですけど『途中で眠くなる』っておっしゃってて(笑)」と暴露。林は「本棚は大きいのがあるんですけど、手をつけてない本がほとんどなんです。いつか読むだろうと…(苦笑)」と明かした。
一方、林は小松について「今日もそうですが存在感が異色と言える女優さんなんですけど、お話してみると、いい意味でとても普通の感覚を持った接しやすい方で、壁は厚くなかったです」と語る。「異色という意味では、いつも驚かされるんですが、今日も『スター・ウォーズ』に出てくるどこかの星の王女様みたいな格好で…(笑)。この作品の宣伝で朝、現場に入ると僕はスタイリストさんと『まずは今日の菜奈ちゃんの衣装を確認しましょう』と。そこに負けない、並んでも霞まない林で行こうという話し合いをいつも行なっています」と意外な衣装を巡る戦い(?)を明かした。
また、映画にちなんで自身にとっての「運命の出会いは?」という質問に対し、林はフジコ・ヘミングさんのピアノとの出会いを挙げる。今回の現場では、難しい役に悩み、メイク室でも台本を手に考え込んでいたそうで、そんな時、旧知のメイクスタッフがさりげなくかけてくれたのが、フジコ・ヘミングさんのピアノの曲だったそうで、「すごく集中できて、ゾーンに入っていろんなひらめきがありました。その出来事以来、集中したい時や行き詰った時は、スイッチを入れるために聞いています」と話した。
小松は「個人的なことなんですが…」と前置きした上で、自身の周りに「ゆうすけ」と「まい」という名の人々が多いことを明かし「ゆうすけ」と「まい」という名の夫婦2組と知り合いであると語り、「この会場にもきっと、ゆうすけさん、まいさんがいるんじゃないかと…」と言うと、客席から実際に手が上がり、小松は「運命です!」と笑顔を見せた。
舞台あいさつの最後に小松は本作の中に昨年、閉園した「としまえん」や、12月に閉館することが決まっているヴィーナスフォートが登場することに触れ「最後に(映画の中にその姿を)残すことが出来てよかったなと思います」と思いをはせる。
そして「私、25歳なんですけど、制服姿は正直キツイです(苦笑)。さすがに25で、映画を通してずっと現役の高校生ってキツイなと思ったけど、それはお仕事なので…(笑)。でも、今回でそれも見納めというか、最後になるんじゃないかと私は思っています。いろんな意味で“最後”のものをこの映画でお楽しみください!」と語った。
林は「まだまだ、息苦しく感じることが少なくない日々が続くけど、大切な思いに目を向けて、温もりを感じたり、身近なささやかな幸せをかみしめて、一緒に頑張って生きていきましょう」と呼びかけ、温かい拍手の中で、舞台あいさつは幕を閉じた。
作品情報
「恋する寄生虫」
公開中
公式HP:https://koi-kiseichu.jp
©2021「恋する寄生虫」製作委員会