「ミッドナイトスワン」「全裸監督」の内田英治監督が、80年代の映画製作現場の裏側を描いた「雨に叫べば」がAmazonプライムビデオにて独占配信中。男尊女卑とパワハラの匂いが残る時代、映画現場で働く監督と撮影助手を演じた松本まりかさんとモトーラ世理奈さん。2人のトークは撮影中のエピソードから、次第に相思相愛話に発展して…。
◆80年代の映画撮影現場で働く女性の役ですが、現場スタッフの皆さんから参考になることはありましたか?
松本:内田英治監督が脚本を書いているので、私が演じた林花子という監督は、内田さんの実体験が多く反映されているんだろうなと思いました。内田さんはあまり気持ちを顔に出さない方なので、“撮影中、こんなことを思っていたんだ”とか。あと、監督が「カット!」って言うと、現場にいる人はみんな監督のほうを向くんですね。
モトーラ:みんなの目線が監督に集まりますよね。
松本:「どうなの? どっちなの?」ってみんなが思う中、「OK」か「もう1回お願いします」と言うんだけど、花子を演じてみて「もう1回お願いします」って言うのは、こんなに胃がキリキリするんだなと(笑)。
モトーラ:自分の作品を作っているけど、みんなの気持ちも背負っていますからね。でもだからこそ、気持ちを強く持っていないといけない。監督はそういう部分でも戦っているんだなって感じました。
◆モトーラさんは撮影助手役でしたが、どんな役作りをされましたか?
モトーラ:フィルムで映画を撮っているという設定だったので、撮影前に東映の撮影所でカメラマンの方からフィルムカメラの使い方などを教えていただきました。私自身はフィルムカメラにロマンを感じるけど、フィルム1ロールで10数分しか撮れないって聞いて、当時の撮影は大変だったんだろうなと思いましたね。
松本:それ以上は撮れないの?
モトーラ:撮れないらしいです。だからカメラを回している間のテープの重みを感じてました。
◆お2人は普段、撮影現場には出演者として参加しているわけですが、製作側を演じるのはどんな感覚でしたか?
松本:スタッフさんや俳優さんたちを客観的に見るのがすごく面白かったです。個性的な俳優ばかりで、マネージャーとのやり取りなんかも、だいぶデフォルメして描かれていて。普段自分たちのやっていることが、とてもユーモラスに見えました。怒号が飛ぶし、パワハラもあるしと、ひどいことがたくさん描かれていて。コンプライアンスギリギリの現場(笑)。
◆ホント、すごい現場でしたよね。
松本:でもなんか愛おしいんですよね。映画という虚構の世界で、私が演じる花子は意味不明なテイクを何回も重ねるし(笑)。「湯気が見えないから」っていう、他人には分からない謎のこだわりで全員を動かす。でも私たちって、そういうものを作ってるんだなと思うと、何だか楽しくて。美術さん、照明さん、音声さんのやっていることを全て目の前に出されて、スタッフさんに対して、そして自分が普段やっている仕事に対しても、もっと愛情を持てるようになった気がします。