2019年2月に上演した舞台 『機動戦士ガンダム00-破壊による再生-Re:Build』の続編となる、舞台『機動戦士ガンダム00-破壊による覚醒 Re:(in)novation-』が約3年越しの熱い想いとともに満を持して2022年2月7日に開幕した。本作は新型コロナウイルス流行のあおりを受けて、2月5日、6日の公演は中止に。場内の感染対策を徹底し、14日(月)の大千穐楽までの10公演を予定している。
物語の本筋は原作アニメの2nd シーズンを基盤に、前作で描かれていた「ソレスタルビーイング」と「国連軍」の最終決戦から4年が過ぎた世界の中で展開していく。
決戦後、離反していた刹那・F・セイエイ(橋本祥平)は、隣人であった沙慈・クロスロード(前川優希)と再会を果たす。ソレスタルビーイングに残っていたアレルヤ・ハプティズム(小坂涼太郎)や、ティエリア・アーデ(永田聖一朗)といったクルーとも合流し、交戦に備えてガンダムのパイロットである「マイスター」の増員を図る。刹那が目をつけていたのは亡き戦友の双子の弟ライル・ディランディ(伊万里有)。説得の末に兄のコードネーム「ロックオン・ストラトス」を継承することで4人のマイスターが会し、再び戦場へと繰り出す準備が整った。
刹那は本作で大きな変貌を遂げていた。戦いへの揺るぎない意志は言動に表れ、硬質な中に安心して背をあずけることのできる強さがあった。
主演を務める橋本の圧倒的な身体能力と眼光の鋭さは、節々の重要なシーンで見事に発揮され、カチリとその場を引き締める。以前までは自身の二面性で苦しんでいたアレルヤもソーマ・ピーリス(希代彩)との距離が近づく中でゆらぎが消え、うまく折り合いを付けていた。彼本来の優しさと未熟さと、戦闘時の熱さ、この3つのバランス調整を小坂は自在に操る。
「似ていても別の人間」である、そんなロックオン。兄貴肌で本作中一番器用だが一番不器用な彼に、伊万里は包容力を添えることでファンの心を狙い撃つ。
精巧な人形のようなティエリアは、4年という歳月でもそのクールさはそのまま…と思いきや刹那と同じく、“仲間”という存在によって変化が生まれていた。永田は決戦から今日までのティエリアの微細な心情を映し出しながら、細かな動きと表情で性別を超越した淡麗さで魅せる。
前作では刹那、アレルヤ、ロックオン、ティエリアの4人に焦点が当てられていたが、本作では沙慈や恋人のルイス・ハレヴィ(本西彩希帆)はもちろんのこと、登場する人物たちすべての背景や織りなす人間ドラマに触れられており、原作アニメのいいとこ取りといったところ。同時にオリジナリティにも溢れており、4年の間に彼らの心身がどのようにして成長してきたのかをそれぞれの描写から感じ取ることができ、より各人のキャラクター性や魅力を際立たせている。
前公演の初日、「新たな演劇表現への挑戦だ」と大きな話題を呼んだモビルスーツでの戦闘シーンは、本作でついに大成したといっても過言ではない。マイスターとモビルスーツライザーの身体と魂が一つとなり、可動式コクピットで戦地を駆け抜ける様子は臨場感があり、息を呑むほど苛烈で勇ましい。またコクピット上での殺陣シーンも大幅に増え、ビーム・サーベルの太刀筋やガンシューティングなど、マイスターとパイロットの特性や機体性能までを細かに体現した戦闘スタイルはまさに唯一無二。
アンサンブルによる素早く正確な動きはマスゲームにも似た形式美を彷彿とさせ、より進化したアクションエンターテインメントを提示したといえる。他では決して見ることのできない機体同士の激突シーンは、その余波が客席まで届いてきそうなほどだった。
そこへ加わる映像技術、攻撃音、LEDレーザー、照明効果、小道具たちが、人知を超えたスピード感を表現。とくに能力開放状態=“トランザム”の際はGN粒子の煌めきが没入感をさらに後押しする。
脚本・演出の松崎史也とアクション振付の船木政秀は、初日開幕のギリギリまでアクションこだわり抜いてさらなる演劇の可能性を追い求めていた。もちろんキャストたちも想いは同じ。一歩一歩着実に前へ歩んでここまで来たのだということが伝わってくる、輝かしいカンパニーだ。
登場人物から飛び出す名言の数々も前作同様に満載で、紡がれていくこの言葉たちは気持ちがいいほど本作の終着点に周到されていく。白熱する総力戦や、刹那VSミスター・ブシドー(佐々木喜英)のシーンなど、目はもちろんだが耳にも集中しつつ、点と点がつながる瞬間を肌で感じてみてほしい。
中盤、理不尽な事態の併発によってソレスタルビーイングと地球連邦・独立治安維持軍「アロウズ」、そしてリボンズ・アルマーク(赤澤燈)率いるイノベイターとの鼎立へと発展し、物語はさらなる激動の渦の中へ―。
『ガンダム』は人類にとって何をもたらす存在なのか、憎しみを昇華し変革と平和へと到達することができるのか。そして刹那が進む先と、生命の美しさをこの目に焼き付けたい。
たった一回の公演を実現するのでさえ容易ではない時代。しかし、これにより一層増したカンパニーの熱量とチームワーク、演劇が秘める力、すべてを注ぎ込みながら開幕した舞台『機動戦士ガンダム00 –破壊による覚醒-Re(in)novation』。舞台オリジナルキャラクターのイース・イースター(深澤大河)を迎え、2022年2月14日(月)まで上演予定だ。
【コメント】
●橋本祥平(刹那・F・セイエイ役)
今日という日を心から待っていました。本来なら2020年の7月に公演する予定だった作品です。中止になってから今日まで全員がいろんな現場で経験を積み、蓄え、戻って来ることができました。決して無駄じゃなかったこの期間。あの頃に果たせなかった想いを、愛を、今全力でぶつけさせていただきます。今誰かとしゃべるのも気を遣わなければならないご時世。だからこそ、演劇というフィルターを通して舞台上から皆様と対話できるのを楽しみにしております。
舞台『機動戦士ガンダム00 –破壊による覚醒-Re:(in)novation』
出撃する。
●伊万里 有(ロックオン・ストラトス役)
去年新型コロナウイルスの影響で延期になり、今回やっと皆様にご観劇、そしてご視聴いただける機会がきて、とてもうれしく思うと同時に身が引き締まる思いです。演出の松崎さんを含めキャスト、スタッフ一同気合が入っています。今回の作品の魅力は00ファンの皆様が違う視点で作品を観劇できることだと思います。舞台『機動戦士ガンダム00』独自のストーリー性があり、アニメとはまた別次元で楽しめる作品になっています! それぞれのキャラクターの想いや、人間とは何か。また一から考えさせられましたし、人間っていいなって再確認できました。ぜひ楽しみにしていてください。
(個人的な今回の推しはミスター・ブシドーです。)
●小坂涼太郎(アレルヤ・ハプティズム役)
当たり前が当たり前じゃなくなっている世の中で、ここまで前に進めたこと、とてもうれしく思います。今まで体験したことのない新しい演劇でとても楽しいです。公演中も油断せず、みんなで踏ん張ります。最後まで公演をできることを願って、ガンダムの世界を皆さんに楽しんでもらえるよう、自分自身も楽しみます!!
●永田聖一朗(ティエリア・アーデ役)
舞台『機動戦士ガンダム00』いよいよ開幕します。ようやくです。前作から3年経ち、昨年に一度延期になってしまいましたが、こうやってこの日を迎えられたことが心からうれしいです。ティエリアとしても再び戻って来ることができて幸せですし、全員が一つの目標、同じ方向を向いている強いカンパニーだと思っています。新キャストの皆さんを迎え、前作よりもさらにパワーアップした公演をお届けできると思いますのでぜひ、楽しみにしていてください。こういった情勢の中でも演劇ができて、お届けできる幸せを噛み締めつつ千穐楽まで丁寧に紡いでいきます。応援のほどよろしくお願い致します。
●前川優希(沙慈・クロスロード役)
2021年の延期から1年の時を経て、ついに幕が開くこと、本当にうれしく思います。作品を創っていく段階から、自分の中で変わったものがたくさんありました。一公演でも多く、一人でも多くの方に、この物語を届けられるように、一丸となって精いっぱい走り抜けます。
●本西彩希帆(ルイス・ハレヴィ役)
一度延期になったこの作品を皆さんにお届けできる機会をいただいただけたこと、感謝してもしきれません。また、前作で皆さんが創り上げたガンダムの世界でルイスとして舞台に立てることが、とても幸せです。沙慈との物語やガンダムへの想い、葛藤をルイスとして表現できるように、稽古から考えて悩んで落ち込んで今日まできました。私自身この期間で、稽古ができること、舞台に立てること、いろいろなことが当たり前ではないと改めて強く感じました。今この時代にダブステを上演する意味をしっかりと考えて、カンパニー一同、前を向いて、お客様にお届けできるのを心待ちしています。楽しみに待っていてくださったらうれしいです。
●佐々木喜英(ミスター・ブシドー役)
舞台『機動戦士ガンダム00』シリーズに参加させていただくのは今回が初めてになります。本作のお話をいただいた時、ガンダムを舞台化するのは物理的に不可能では? と思ったのが正直な感想です。ですがそれと同時に、不可能を可能にしてみたいという思いが強く芽生えました。今まで経験してきたアクションが全く通用しないフィールドで、どこまで2次元のガンダムの世界に近付けるかを、座組み一同、力を合わせ挑戦していきたいと思います。また、昨今の状況の中で舞台に立てる場をいただけることに心から感謝し、無事に千穐楽の幕が下りるまで安全に公演が行えるよう、いつも以上に気を引き締めて参りたいと思います。ぜひ、ご期待ください。
●赤澤燈(リボンズ・アルマーク役)
いよいよ! 本当にいよいよ! 舞台『機動戦士ガンダム00-破壊による覚醒– Re:(in)novation』の幕が開きます。前回の公演中止に続き、今回も初日公演が延期になり、本来観ていただける予定だった方々に観てもらえなくなってしまい、僕らも悔しい気持ちでいましたが、その破壊によって、その破壊のたびに、ダブステは覚醒を繰り返し、より強くなって、今日の日を迎えることができました。何度壊されても、壊しても、一丸となって闘える強い作品になりました。座長、橋本祥平の言葉を借りるなら「演劇という名の武力介入を開始する」。皆想いは一緒です。ダブステに関わる皆様の健康も祈りつつ、最後まで闘っていきたいと思います。
●松崎史也(脚本・演出)
「機動戦士ガンダム00」の舞台化。満身創痍、命からがら戦い抜いた前作から時が経ち物語を帰結まで描こうと再始動。ところが、コロナ禍による延期。さらに時を重ね、ようやくようやくこの日を迎えた。コロナに立ち向かうような気分がテーマとリンクする瞬間は確かにある。けれど、この作品で描きたいことはやはりそこじゃない。如何にして人類は平和を模索するか。そうなり得るか。そのテーマに踏み込むことは、以前にも作品に触れて書いたが物語の、フィクションの存在意義だと思っている。虚構と狂気を孕みながら全ての理不尽に対して真っ向勝負で誠実に挑み続ける。役者もスタッフも、そうこの作品に臨めたのは恐らく原作の持つ力と、演劇を信じる力。ガンダムを介することでしかできない表現で演劇としても物語としても叫び続けたいと思っています。このカンパニー全員を誇りに思います。俺たちはガンダムで、演劇だ。
この記事の写真
<公演情報>
舞台『機動戦士ガンダム00 –破壊による覚醒– Re:(in)novation』
(STORY)
西暦2307年。人類は宇宙空間での太陽光発電を実用化し、軌道エレベーターを使って地上に供給するシステムを稼働させていた。しかし、このシステムの恩恵を受けていたのは、超大国の「ユニオン」「AEUAEU」「人類革新連盟」の三大国家群だけであった。彼らは直接的な衝突こそ起こさないものの軍事開発競争による冷戦状態を継続。一方、そこに属さない小国は貧困によって苦しめられ、紛争や内戦を繰り返していた。そんな終わりのない戦いが続く世界に、“武力による戦争根絶”を掲げる私設武装組織「ソレスタルビーイング」が現れる。
彼らはモビルスーツ「ガンダム」を用い、全ての戦争行為に対して武力介入を開始した。介入が奏功していたかのように見えた中、チームトリニティの新たなガンダムが現れ、状況はさらに混乱する。一方、その頃、刹那の隣人であった沙慈とその友人ルイスは…。
(STAFF&CAST)
原作:『機動戦士ガンダム00』(『機動戦士ガンダム』シリーズより)』
脚本・演出:松崎史也
監修:水島精二
企画:サンライズ
主催:ガンダムライブエンタテインメント実行委員会
制作:Office ENDLESS/バンダイナムコライブクリエイティブ
出演:橋本祥平、伊万里有、小坂涼太郎、永田聖一朗、前川優希、本西彩希帆、佐々木喜英、立道梨緒奈、松村芽久未、澤田拓郎、加藤靖久、希代彩、石井由多加、一内侑、平湯樹里、瀬戸祐介、伊藤優衣、田口涼、北村健人、花奈澪、深澤大河、赤澤燈
アンサンブル:小林賢祐、高久健太、酒井昂迪、田邊謙、瑞野史人、浅倉祐太、伊藤智則、遠藤拓海、岡直樹、乙木勇人、柿原康希、末廣拓也、毛利光汰、山越大輔
(公演日程)
2022年2月7日〜14日(月)
東京・新国立劇場 中劇場
(ライブ配信概要)
「DMM.com」で独占ライブ配信!
【対象公演】
①2022年2月13日(日)13:00公演
②2022年2月13日(日)17:30公演
(公式サイト)
http://www.gundam00.net/
©創通・サンライズ
撮影:HARLYHARLY、ナスエリカ/編集・文:ナスエリカ