プロの声優や俳優が朗読した本や多様なポッドキャストが楽しめる音声エンターテインメントサービスのAmazonオーディブル。日本語では初となる村上春樹さんの作品のオーディオブック制作が発表され、プロジェクト第一弾として藤木直人さんの朗読で「ねじまき鳥クロニクル」が配信される。このたび、収録を終えた藤木さんに朗読をしてみての感想や、「ねじまき鳥クロニクル」についての想いを伺いました。
◆まず今回、「ねじまき鳥クロニクル」の朗読をされることについて、率直な感想を教えていただけますか?
びっくりしましたね。これまで特に朗読というものに縁があったわけではないので、想像もしていないオファーでした。朗読劇は一度やったことがありますが、その時は登場人物になって、自分が送ったメールを一人称で読むというもので。今回のように物語を朗読するのは初めての経験だったので、「大変だろうな。難しいだろうな」と感じましたが、以前、蜷川幸雄さん演出の舞台「海辺のカフカ」で村上春樹さんの物語の世界の中に入って、登場人物をやらせていただいたこともあったので、運命かなと感じ、思い切ってやってみようと思いました。
◆最初はオファーを受けるかどうかも迷いがあったんですね。
村上春樹さんの作品はすごく人気があるので、イメージとは異なる表現をしてしまうと、そうじゃないって思う方が大勢いらっしゃるだろうなと思うし、いろいろなことを考えました。それはドラマのオファーでもそうで、もちろんお話をいただくこと自体はうれしいのですが、それを自分にこなせるのかという不安もあって。いろいろと考える中で、そういう選択肢もありました。
◆15日間かけて録音されたそうですが、その中で楽しいと思ったことは?
話自体が面白いので、それを一読者として読んでいくということは楽しかったです。あとは、少しずつですけど着実にゴールに近づいていくので、それは単純にうれしいことでした。
◆その中で、気づいたことはありますか?
いっぱいありました。この物語では長編の中で、主人公が一周して同じところに戻ってくるんですけど、ひとつ階が上になるというか、成長していくという印象があって。それは「海辺のカフカ」でも感じていて、カフカ少年は1階どころじゃなくてだいぶ上に成長していく話ですけど(笑)、そういうふうに自分も成長できたのかなとは思いました。とはいえ、録った音源を聞いてみたら、やっぱり人間って早々には変われないなと感じる部分もあるし…。ただ、朗読の難しさを知れただけでも、貴重な経験でしたね。
◆ちなみに、これまでにも村上春樹さんの作品を読まれていたのでしょうか?
僕が村上春樹さんに触れたのは結構遅くて、「1Q84」が出ると話題になった時に、初めて読んだんです。村上さんの作品の中で今も大好きな作品のひとつですけど、エンターテインメント性が高くて、非常に読みやすい作品だなと思います。