舞台「室温~夜の音楽~」で3年ぶりに主演を務める古川雄輝の取材会が行われ、舞台にかける思いなどを語った。
本作は、演劇界の第一線を走り続けるケラリーノ・サンドロヴィッチが2001年に作・演出を手がけた舞台。人間が潜在的に秘めたる善と悪、正気と狂気の相反する感情を、恐怖と笑いに織り込んだこの作品はホラー・コメディとして絶賛され、第五回鶴屋南北戯曲賞を受賞している。
記録にも記憶にも残る傑作戯曲の誕生から21年、数々の話題作を世に送り出した、奇才・河原雅彦の手により新演出版として上演。音楽は新しい時代のディープファンクバンドである在日ファンクを河原がたっての希望で指名。全編Funky Deepな生演奏にてお届けする。
◆3年ぶりの主演作ですが、舞台「室温~夜の音楽~」への意気込みを教えてください。
3年ぶりなので非常に緊張しています。舞台の現場に入るのが久しぶりになりますので、ちゃんと自分にこの役ができるかなという緊張感と、すてきな舞台にしたいなというワクワク感と、両方の感情がある状態です。3年前も主演で舞台をやらせていただいたんですが、今回も主演という形でオファーをいただけてうれしいです。
◆21年前の台本を読まれたとのことですが、どんな印象を持たれましたか?
今回、ホラー・コメディっていうジャンルなんですが、シリアスなシーンや「これ、笑っていいのかな?」みたいなシーンがあるんです。役者さんの掛け合いで思わずクスっと笑ってしまうような構成になっていました。それは舞台ならではだなと。クスっという笑い声も含めて舞台が完成するような、そんな台本になっているのかなという印象がありました。そして、演じる人によって笑うポイントがいろいろ変わってくるような作品だとも感じたので、これから稽古でどうなるか非常に楽しみしています。
◆犯罪者の役を演じられますが、率直な感想を教えてください。
ある罪を犯した青年なんですけど、現段階では演出家の河原さんから言わないでほしいと言われていて…。まだ僕もしっかりと河原さんとお話ができていないので、犯罪者という役をどうやって演じていくか、これから監督と相談していきたいなと思っています。
◆普段どんなふうに役作りをされていますか?
気になるせりふがあったら、それを言えるように、もし台本が全部準備されているのであれば、逆算して作ることが多いかもしれないです。気になっているせりふがあるということは、そのキャラクターとしてそれを言えない可能性があるので、それを言う人物はどうなんだろうと前に戻って考えますね。基本的には覚えながら進めていて、衣装合わせをする段階では、全て頭に入っています。その上で、正解を出せるのは監督だけなので、衣装合わせの時に質問をしますね。
◆どんなところに注目して見てもらいたいでしょうか?
ドラマの撮影とは違って、舞台は稽古が1か月ぐらいあって、その間に僕は必ず壁にぶち当たるんです。映像の現場ではできていたことが、舞台では難しくてできなかったり、気づかなかった部分を気づいたり。今回は(稽古前なので)それがどうなるか分からないですけど、その壁を何とか乗り越えてから皆さまの前に立っているので、現段階ではどういう新しさを見せられるのか分かりませんが、少しでも成長した姿がお見せできるのかなと。そして舞台は、初日と千穐楽はもちろん、やっていく中で変わっていったりもするので、その中でも変化した僕だけじゃなく、キャストの皆さまを見ていただけたらなと思います。
◆2022年に入ってから4本のドラマに出演されています。ドラマと舞台の違いを教えてください。
舞台は稽古があるので、そこがまずドラマとは違いますね。舞台はより一層よいものにしようと稽古という作業をしますが、ドラマの場合はそれを数分の間にやらなくてはいけないので。提示して、練習なくすぐにテストから本番なので、即興の力を求められます。そして、目線や細かい動きでの表現がドラマでは生かされますが、舞台の場合はそれが遠くに座っているお客さままで届かないので、細かい動作じゃない表現をしています。声の出し方も違う出し方をしないといけないですし、足先まで見られているので、ちょっとした緊張感もお客さまに見えてしまうと思うので、根本的に同じお芝居でも違うものなのかなと。良い点としては、お客さまが来てくださって、その前でお芝居ができること。この舞台もお客さんのクスっという笑い声が入ってこそ成立するので、こういうご時世ですけど、人前でしっかりとお芝居ができるのはありがたいことだなと思っています。
◆その中で、切り替えはどのようにされていますか?
ドラマも撮影中なので、その役柄をやりながら舞台の稽古が入ると、役柄が重なるので、切り替えは非常に大変です。
◆体力やせりふを覚えも大変そうです。
やるしかないです。昨日も夜12時まで刑事をやって、朝4時に起きて、気づいたら別の犯罪者の説明をしています(苦笑)。
◆共演者の印象を教えてください。
実は、皆さんとはごあいさつを交わした程度で…。唯一、長井(短)さんだけは『ねこ物件』でガッツリとお芝居をしていて。実はその現場中に、この舞台のお話がきたんです。僕、長井さんのお芝居が好きで。アドリブ女王なんですよ。変化球を投げるのがとても上手で、役者間でもこの人は上手いなって言うのが分かる非常に魅力的な女優さんで。その方とお芝居ができてすばらしいなと思っている中でのこのお話だったので、僕の中では長井さんが出るという時点で、出たいという気持ちは非常に強かったですね。
◆今回、一番楽しみにしていることは何でしょうか?
3年ぶりなので、その間映像の作品をたくさんやって、少しでも成長はしているはずだと思うんですよ。そこで培ったものが舞台に入った時に通用するのかということ。もう1つは、役者さんがどう演じるか、どうせりふをとらえて返すかで、かなりコミカル具合が変わってくる構成になっていて、はい、いいえなど短いせりふが続いた時に、そのワードをどう選択して言うかで、ただの流れているせりふのようで、すごく面白くなっていくと思うんですね。それをみんながどうするのかを学べるので、それが楽しみと同時に、僕も提示できるか不安です(苦笑)。
◆本作がホラー・コメディということで、最近あったホラーな体験はありますか?
最近、忙しくなってくると物がなくなることに気づいて。せりふで頭がパンクをすると、物を捨ててしまうみたいなんです。普段、自分で朝ごはんを作って、コーヒーを淹れて、それを持って現場へ行くんですけど、以前、その朝ごはんとコーヒーとゴミ袋を持って家を出て、それを全部ゴミに捨てて、現場へ行ったことがあって。でも、現場に到着するまでどこにあるのか全く分からないということがありました。今やっている『嫌われ監査官 音無一六』でも、ギフトカードを頂いたんですけど、家に帰って玄関を開けたらもうなくて、失くしてしまったみたいです(苦笑)。
◆最後に、舞台を楽しみにしている方たちにメッセージをお願いします。
稽古はこれからなので、どういう仕上がりになるかまだ分からないですが、3年ぶりの主演舞台ということで、このキャストの皆さまとよりよい作品を作れるようにこれから頑張りますので、たくさんの方に来ていただきたいです。お客さまが入ってこそ成立する作品なので。これ笑っていいのかなって思うような描かれ方をしていて、1人が笑ったらそれにつられていく印象があるので、皆さまと一緒に楽しい体験ができればなと思っています。そういう作品にできるよう、これから頑張りますし、トークショーなどもあるので、ぜひ遊びに来てください。
作品情報
舞台「室温~夜の音楽~」
■東京公演
2022年6月25日(土)~7月10日(日)全19公演
会場:世田谷パブリックシアター
■兵庫公演
2022年7月22日(金)~7月24日(日)全4公演
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出:河原雅彦
音楽・演奏:在日ファンク
出演:古川雄輝、平野綾、坪倉由幸(我が家)、浜野謙太、長井短、堀部圭亮/伊藤ヨタロウ、ジェントル久保田
制作協力:プラグマックス&エンタテインメント
企画:水川薫
プロデューサー:矢野浩之
企画・製作:8 カンテレ
公式HP:https://www.ktv.jp/shitsuon/