現在公開中の「劇場版ラジエーションハウス」に、交通事故に巻き込まれてしまう妊婦・高橋夏希役で出演中の若月さん。“昏睡状態”という限られた芝居の中で物語のキーパーソン的存在を見事に演じた彼女が、撮影中のさまざまなエピソードを教えてくれました。また、キャッチコピーである「別れと旅立ちのとき」にちなんで、3年前にグループを卒業したときの気持ちや、一人で活動することについての思いなどについても聞きました。
◆出演のお話が来たときはどう思いましたか?
たくさんの方に愛されている作品ですが、ドラマの続編だけでなく、映画化もされるということにまず驚きました。そしてそこに私が出演させていただけるということで、とてもうれしかったです。
◆役どころとしては、交通事故に巻き込まれてしまう妊婦・夏希を演じました。
演じるのは苦しかったです。フィクションで、もちろん原作もありますが、何もかもうまくいくような展開には作られていないというか。事故に突然巻き込まれて、一瞬にして幸せが崩れてしまうという…そこはすごくリアルに描かれているなと思いました。
◆いわゆる“昏睡状態”を演じるというのはどうでしたか?
せりふも表情も、また動きもない役なので、やっぱりすごく難しかったです。ただ無でいるというのも、ちょっと違う気がして。旦那さんの圭介(山崎育三郎)に対して夏希はこういう思いを抱いているんじゃないかなとか。せりふはないですけど、頭の中でいろいろ考えさせられることは多かったです。
◆難しかったのは、具体的にはどういった部分ですか?
実際の患者さんは自分の意志で眠っていないというか、眠る状態にさせられているということなんですけど。私は健康体のままお芝居として眠らなければいけないので、そこの違いは大きいなと思いました。動くことはもちろん、咳をすることもできなかったので。カメラが回っているときは、ずっと気を張っていました。
◆MRIなど、いろいろな機械に囲まれる経験もなかなかないですよね?
MRIに入ると、監督の「カット」の声がほとんど聞こえないんです。しかも自力では出られないので、そこはスタッフの方に操作していただくという(笑)。すごく不思議な体験でした。
◆山崎さんとは現場でどんなコミュニケーションを?
事故のシーンがわりと序盤で出てくることもあって、実は山崎さんとせりふを掛け合うことはほとんどないんです。なので夫婦役としてのイメージを膨らませるには、空き時間にお話するしかないなと思ったんですけど。今回は初めましてのキャストの方が多くて山崎さんもその中のお一人だったのですが、なかなか自分から話しかけられなくて。どうしようかと思っていたら山崎さんのほうからたくさん話しかけてくださって、とてもありがたかったです。
◆どんな会話をされたんですか?
お芝居のお話から日常のたわいのないお話まで、いろいろさせていただきました。あと撮影時期が夏だったのですが、アイスを買って来てくださったりもして。そうやってお互いに人としてのコミュニケーションが取れたことが、いろいろなシーンに生きたような気がします。
◆確かに回想シーンでは、圭介と夏希の仲の良さが伝わってきました。
監督からは「とにかく笑顔が印象に残るように演じてほしい」というオーダーを頂いたので。夏希が元気なころのシーンは、明るく笑うのを意識していました。その回想シーンの中でも、恋人になる前から結婚、妊娠まで描かれているので。夏希の視線のベクトルが今どこに向かっているのか、圭介なのかそれともおなかの子供なのか…ということも考えたりしました。
◆物語全体としての印象はどうですか?
現場もそうだったのですが、チームの強さということはすごく感じました。まだ私は完成した作品を見られていないのですが(取材時)、台本を読んでいて特に私はラストシーンがグッと来たので。あれがどう映像化されているのかがすごく気になります。早く映画館に行きたいです(笑)。
◆「ラジエーションハウス」のチームは、現場で見ていてどうでしたか?
仲良し度がすごかったです(笑)。そこにゲストとして飛び込むのは最初は不安でしたが、皆さんがどんどん引き入れてくださって。いろいろなお話ができたのも、すごくうれしかったです。現場に貼り紙があって、それが役者さん同士のメッセージ交換の場だったりするんですよ。パート1、パート2、そして劇場版と、長く一緒にやってこられたからこその結束力だなと思いました。私自身も今後、こういったシリーズ化される作品にたくさん出会っていけたらと思っています。
◆今回の映画には「別れと旅立ちのとき」というキャッチコピーもあります。その部分に関して、今思うことはありますか?
最近は私の周りでも、スタイリストさんやメイクさんなど、新しい挑戦をするスタッフの方が多くて。お話を聞くと、皆さん行動派なんですよね。計画を練って準備をして挑戦するというよりも、挑戦してからいろいろなことを頑張っていこうと考えられていて。私はどうしてもまず頭の中で考えないと行動に移せないので、そういうところは尊敬します。そのときの直感を大事にして動くというのも、今の時代はアリなのかなと思っていて。メディアにしても、動画サービスや映画配信など選択肢や幅がどんどん広がっているので。自分も変化を恐れずに生きていかなきゃとあらためて思い始めています。
◆若月さん自身も、3年前にグループを卒業して一人で活動をするようになりました。新しいことに挑戦するときはどんな気持ちでしたか?
あのタイミングで決断しないと、何も変われないまま甘えて生きてしまう気がしたんです。ただ私は自分をアピールできる武器が少なかったので、そういった部分の不安はありました。卒業した後は悩みが自分一人のものになってしまったというか、自分の中で答えを出さないといけなくなったので。でも少しずつその解決方法も見つけられるようになりましたし、あのとき決断してよかったなと思えるように自分自身変わっていかないといけないなと思っています。
◆その変化に必要なのはどんなことだと思いますか?
どの現場に行っても、私はまだまだ「初めまして」の方々のほうが多くて。「お久しぶりです」の方々を増やせるように頑張らなきゃと思っています。女優一本になってから1、2年目のときは、とにかく初めましてのごあいさつ回りをするのが常だったんですけど。こうして3年たってみると、少しずついろいろな方々に「お久しぶりです」と言っている自分がいて。今回の「劇場版ラジエーションハウス」で言うと、舞台「恋のヴィネチア狂騒曲」でご一緒した浅野和之さんやドラマ『共演NG』でご一緒した山口紗弥加さんとまた現場で再会させていただくことができました。またこの撮影の後に、丸山智己さんと『アンラッキーガール!』の現場で、遠藤憲一さんと『ユーチューバーに娘はやらん!』の現場でお会いすることもできて。一度共演していただいた方とは前の現場の思い出話もできますし、関係性が築けている分、遠慮なくお芝居ができるので。もっともっと「お久しぶりです」の方を増やして、自分自身成長できたらなと思っています。
◆最後に作品にちなんで、若月さん自身の病院にまつわるエピソードを教えてください。
病院にはすごくお世話になっています。私、“自分に分からないことはプロに聞け!”という精神なので。体に変調があったときは自然治癒を待つのではなく、すぐに病院に行って先生に聞くんです。昨年初めてアレルギー検査をしたら、自分が花粉症だということを知りました。そこで自分の体を知ることと病院で薬をもらう大切さをあらためて感じて、この春も病院にお世話になっています(笑)。検査をする前は“自分は花粉症じゃない”ってずっと認めていなかったんですけど(笑)。いざ自分が花粉症だと分かったら、対策が取れるんですよね。本当にありがたいなって感謝しています。この作品に出てくるMRIもそうですけど、自分の体の中を自分で見ることはできないので。病院に行って、医療スタッフの皆さんのお力をお借りして、体の異変を発見するのは大事なことだなと思います。
PROFILE
●わかつき・ゆみ…1994年6月27日生まれ。静岡県出身。O型。最近の出演作にドラマ『ユーチューバーに娘はやらん!』(テレビ東京)、Netflix映画「桜のような僕の恋人」など。現在、『MBSヤングタウン月曜日』(MBSラジオ)にレギュラー出演中。「Oggi」美容専属モデルとしても活躍中。主演舞台「薔薇王の葬列」が6/10(金)より上演予定。
作品情報
映画「劇場版ラジエーションハウス」
全国公開中
<STAFF&CAST>
原作:「ラジエーションハウス」(原作:横幕智裕、漫画:モリタイシ 集英社「グランドジャンプ」連載)
監督:鈴木雅之
脚本:大北はるか
出演:窪田正孝、本田翼、広瀬アリス、浜野謙太、丸山智己、矢野聖人、
鈴木伸之、佐戸井けん太、浅見姫香、山口紗弥加、遠藤憲一、
山崎育三郎、若月佑美、渋谷謙人、原日出子、高橋克実、キムラ緑子、
八嶋智人、髙嶋政宏、浅野和之、和久井映見 ほか
<STORY>
甘春総合病院の放射線技師・五十嵐唯織(窪田)は落ち込んでいた。大好きな甘春杏(本田)が、放射線科医としての腕を磨くため、ワシントン医大へ留学することが決まったからだ。お別れまでのカウントダウンを胸に刻む唯織のことを、ラジエーションハウスのメンバーは元気付けようとするが、唯織への秘めた想いを抱える広瀬裕乃(広瀬)だけは、自らの進むべき道について悩んでいた。そんな中、杏の父親・正一(佐戸井)が危篤との連絡が入る。
公式サイト:https://radiationhouse-movie.jp/
©2022横幕智裕・モリタイシ/集英社・映画「ラジエーションハウス」製作委員会
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2022年5月14日(土)23:59
●photo/中田智章 text/橋本吾郎 hair&make/沼田真実 styling/角田かおる