「ロマンシング サガ オーケストラ祭 2022」東京公演が大盛況で終演!山崎まさよしもゲスト出演【ライブレポート】

音楽
2022年08月28日

人気RPG「ロマンシング サガ」シリーズの楽曲を演奏するオーケストラコンサート「ロマンシング サガ オーケストラ祭 2022」東京公演が、2022年8月21日に東京芸術劇場 コンサートホールにて開催された。

昨年実施された「サガ」シリーズのオーケストラコンサートは、新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて、有観客ライブから無観客配信ライブへと変更。2年ぶりに有観客での開催となった今回のコンサートは、演奏してほしい曲をSNSで募る企画を実施するといった取り組みが行われた。

加えて、山崎まさよし、岸川恭子、KOCHOらゲストアーティストが出演することも相まって、当日は昼夜公演ともにチケットはSOLD OUT。その注目度の高さがうかがえた。本稿では、昼公演の模様をレポートする。

今回のコンサートで開演前の影アナウンスを務めたのは、「サガ公式チャンネル」でさまざまな企画を行っているペンギンズ・ノブオ。「サガ」シリーズのファンとして定評のある彼による案内は、ふだんオーケストラコンサートに足を運ばない方々へ安心感を与えるものとなったことだろう。

そんな適度に温まったステージに、パシフィック フィルハーモニア東京の奏者たちが登壇。続けてコンダクターの松沼俊彦が舞台袖から姿を現すと、この日を待ちに待った観客から、万感の思いが込められた拍手が送られた。

チューニングを終えた奏者たちがじっとコンダクターを見つめ、会場にも独特の緊張感が漂う。その緊張を切り裂くが如く、コンダクターが指揮棒を振り下ろす。1曲目に演奏されたのは、「ロマンシング サ・ガ」のオープニングタイトルで流れる「オーバーチュア」だ。

弦楽器の洗練された柔らかい音色、そこから一気に盛り上がるブラスサウンドとパーカッションの迫力は圧巻のひとこと。「これから物語がはじまる」という高揚感と共に、プレイしていた当時の記憶が一気によみがえってきた人も少なくなかっただろう。プレイヤーの記憶に深く刻まれ、思い出として残り続けるのがゲーム音楽の魅力であることを、1曲目から再認識することができた。

立て続けに披露されたのは、「ロマンシング サ・ガ」のフィールドBGM「迷いの森」と「下水道」のメドレー。「迷いの森」では、ハープとフルートの音色が幻想的な空間を生み出す。一方の「下水道」では、トランペットやホルンなどブラスサウンドのメロディが不穏な空気を作り出すなど、奏でられる音楽に合わせて会場の雰囲気も変化していた。

左から)伊藤賢治、結

女優・タレントの結、作曲家・伊藤賢治によるMCを挟んだ後に演奏されたのは、「ロマンシング サ・ガ2」より「帝都アバロン」と「皇帝出陣」のメドレー。スネアドラムによって刻まれる力強い一定のリズムの行軍感、そこにブラスとストリングスのサウンドが加わることで、誇らしさにも拍車がかかっていた。

続いては、「ロマンシング サ・ガ3」より「氷湖」と「オーロラ」のメドレー。ピアノの深い広がりのある音が、先ほどの「迷いの森」とは異なる幻想的な雰囲気を作り出す。楽器の特性も相まって、楽曲にふさわしい「氷」や「冷たさ」が表現されているようにも感じた。

そんな落ち着いた空気を一変させたのが、「アビスゲート」と「四魔貴族バトル」のメドレー。「アビスゲート」ではティンパニやドラが恐怖を煽り、「四魔貴族バトル」では鬼気迫るメロディが、強敵との戦いの激しさを音楽で物語る。圧巻のサウンドを聞いているだけで、汗と涙が流れてきた。

KOCHO

ゲストアーティストのひとりKOCHOの歌唱と共に披露されたのは、「ロマンシング サ・ガ3」に登場する町「ポドールイ」の曲。本曲は、配信中のアプリ「ロマンシング サガ リ・ユニバース」にてクリスマスver.してアレンジされた際、ユーザーから注目を集めた1曲。オーケストラのサウンドと調和するKOCHOの歌声は心地よく、心が浄化されていくようだ。

第一部を締めくくったのは、「ロマンシング サ・ガ1〜3」の「ラストバトル」メドレー。パーカッションが盛り上げたあとに、ストリングスが美しくも落ち着いたメロディを奏でるなど、目まぐるしく動く楽曲には、ラストバトルまでの物語すべてが詰まっているようにも感じられる。勇猛で、荘厳で、美しくも儚い楽曲を聞いていると、当時の記憶が蘇ってきて、私の頭のなかではハリードが走っていた。

約20分の休憩を挟んだあとに始まった第2部は、今冬にリマスター版の発売が発表されている「ロマンシング サガ – ミンストレルソング -」の楽曲を中心に構成。「巨人の里〜邪聖の旋律」のメドレーでは、ホールを包み込むオーボエなど木管楽器のメロディや、パイプオルガンの厳かな音が、観客の心をつかむ。

また、「最終試練〜死への招待状」メドレーと、オーケストラサウンドアレンジでの披露が初となる「熱情の律動」では、ゲストアーティストの岸川恭子が歌唱。情熱的な歌声と、緊張していると言いながらもステージを右往左往しながら客席へ手拍子を促す彼女の姿が印象的で、聞いている側も自然と楽しく、心が熱くなれた。

左から)市川雅統、河津秋敏、伊藤賢治、結

熱を帯びたままのステージに登壇したのは、結・伊藤、そして「サガ」シリーズ プロデューサーの市川雅統、「サガ」シリーズ総合ディレクターの河津秋敏。それぞれが本コンサートの開催に至るまでの思いを言葉にしたほか、佐賀県とのコラボレーションなど、今後の「サガ」シリーズの展開について触れた。

続けて、MCの呼び込みで「ロマンシング サガ – ミンストレルソング -」のテーマソング「メヌエット」を歌唱する山崎まさよしが舞台へ姿を現す。山崎にオファーした経緯について、河津は自分が熱望していたと回顧。

一方の山崎は、テーマソングを作る際にもらった資料のシナリオが分厚すぎて驚いたこと、世界観をスタッフに聞きながら作詞をしたことなど、制作過程について振り返った。その後、山崎がギターを弾きながら「メヌエット」を歌唱。ステージに立っているその姿は「ロマンシング サガ – ミンストレルソング -」のOPに登場する詩人そのもの。優しくも力強い音が会場中を虜にした。

山崎まさよし

本編も残すところあと2曲。まずは「ロマンシング サ・ガ3」より静寂で神秘的な楽曲「聖王廟」と、重低音が骨身に染みる「魔王殿」のメドレーを披露。そして、ユーザーから「やってほしい」というリクエストが多かったという「女道化師イゴマール」と「オリアクス-世界を穿ち、時を射る者-」メドレーを演奏する。

不思議な力を持つ謎の道化師の奇妙さと妖しい魅力、絶望するほどの強大な力、そして激しい闘いの軌跡が、KOCHOの歌と演奏に乗って伝わってくる。さまざまな感情と記憶が観客それぞれのなかで巡るなか、本編の幕は閉じた。

アンコールに応えた奏者一同が奏でたのは、「ロマンシング サ・ガ3」より「エンドタイトル」。壮大でダイナミックな演奏からは、冒険が終わった安堵と少しの寂しさ、そして誇らしさなどを感じ、まさにゲームでエンディングを迎えたその時と同じ気持ちを味わうことができた。

本コンサートの締めくくりは「ロマンシング サ・ガ2」の「エピローグ」。伊藤自らがピアノ演奏するというぜいたくな演出に、客席は拍手喝采。鳴り止まない拍手からは、本コンサート、そして「ロマンシング サ・ガ」への感謝と期待が込められているようにも感じた。

なお、出演者から公演後に寄せられたコメントは次ページに掲載。

●photo/MASANORI FUJIKAWA text/M.TOKU

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