TBSの深夜ドラマ枠「ドラマストリーム」で9月20日から放送開始した『階段下のゴッホ』（TBSほか 毎週火曜 深夜0時58分〜1時28分）。本作は、自分らしく生きるために邁進し、強くたくましく夢にも仕事にも向き合い進んでいく主人公・鏑木都の姿を通して、生きやすいようで生きにくい令和の時代を闊歩する女性たちにエールを送るヒューマンラブストーリーだ。
大手化粧品メーカーに勤める“高収入バリキャリ女子”で、ある絵画に出会ったことで一念発起し、画家になるという夢をかなえるべく東京藝術大学を目指す主人公・鏑木都をSUMIRE、都が美術予備校で出会う6浪中のミステリアスな青年・平真太郎を神尾楓珠が演じる。
そんな本作でプロデュース兼全話の演出を担当する小牧 桜さん（TBSテレビ）による連載が、TV LIFE webでスタート。本作に込めた想いから撮影の裏側まで、演出・プロデューサーという立場ならではの視点でお届けしていきます。
第4回：この人も、あの人も
拝啓、皆様。
第4話は、今までより少し恋愛色が濃い回となっています。
杏花さんに演じて頂いた橘小夜子という、想像だにしなかった“真太郎の元カノ”という存在が現れ、さらに朝井大智さん演じる源洋二がより前のめりにストーリーに絡んでくる。…ものの引っ掻き回され、そしてある種引っ掻き回していく。
いっぽう、都と真太郎の間には、具体的な、もしくは劇的な出来事が起こるというわけではありません。が、都という存在そのものが不思議と真太郎を巻き込み、結果として真太郎の雪解けへと少しずつ繋がっていきます。
お互いに影響しあっていく、と言葉で書くのは簡単ですが、表向きにはそうは見えないのに、確かに心の中の距離は縮んでいく、という表現はとても難しいです。しかしSUMIREさんも神尾さんもその表現に対し、とても丁寧に取り組んでくださいました。
都と真太郎は、目線一つや、取り巻く空気、距離などが、お互いを認めていくのと同時に、確かに柔らかくなっていきます。もちろん境界が曖昧になると、それ故にお互いの短所も見えてくるとは思うのですが。
何故この人のことを好きになったのか。なぜこの人のことを良い人だと思ったのか。そういった問いには無数に答えが存在し、そしてそれは日々同じ時間を共有し積み重ねた先にあるものなのではないか。脚本家・加藤法子さんとの本打ちで出たこの話題が表れているように思います。
4話において、小夜子のせりふに「みんなに合うピースじゃなくて、真太郎に合うピースでいたかったな」というものがあるのですが、これに対する都の在り方についてSUMIREさんと事前に少しお話させていただきました。
第1話で都は元カレの知也に、互いに格差があるのなら同じ目線で生きていくことは難しい、ということを突きつけられ、目線を逸らされます。
自分もまた自分の好きだった相手に合うピースにはなれなかった。けれど、自分が自分であることを捨てることはできない。それが都の選んだ道であり、それが知也との最後の別れとなるわけなのですが、その経験があるからこそ都はこの小夜子の言葉に対し、謙遜も噛み締めもせず、また笑顔になるでもなく、そっと受け止めるに至るのではないかと。
SUMIREさんはとても真摯に、そういった都のバックボーンについて考えてくださり、実際にお芝居の中でとてもすてきな表情を向けてくださいました。撮りながら“都らしい顔だな”と思った覚えがあります。
自分が自分であることを捨てず、“好き”、に生きていく。それは好き勝手に生きていくことではなく、自分の“好き”を信じて自分を信じて生きていくということ。
それぞれの“好き”が、『階段下のゴッホ』においてのラブストーリーだと思っています。
本当に、“普通”という定義はとても難しいです。
PROFILE
小牧 桜
こまき・さくら…1989年4月14日生まれ。東京都出身。
TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部。
『ルーズヴェルト・ゲーム』、『99.9〜刑事専門弁護士〜』、『凪のお暇』などの演出部を経験し、2020年『この恋あたためますか』でGP帯監督デビュー。以降は『リコカツ』、『持続可能な恋ですか？〜父と娘の結婚行進曲〜』などのドラマの演出を担当。
9月20日より毎週火曜深夜0時58分からTBS系にて放送中のドラマストリーム『階段下のゴッホ』（出演：SUMIRE・神尾楓珠ほか）で、初プロデュース兼全話演出を担当。
番組情報
ドラマストリーム『階段下のゴッホ』
TBSほか ※一部地域を除く
2022年9月20日（火）スタート
毎週火曜 深夜0時58分〜1時28分
公式サイト：https://www.tbs.co.jp/kaidanshita_no_gogh_tbs/
公式Twitter：＠drama_streamtbs
公式Instagram：tbs_drama_stream
公式TikTok：＠drama_stream_tbs
この記事の写真
●photo／山元良仁
©「階段下のゴッホ」製作委員会
