「少年ジャンプ+」で連載中の藤本タツキさんの人気漫画『チェンソーマン』がこの秋テレビアニメ化され、大きな話題を呼んでいる(テレビ東京系 毎週(火)深0・00)。主人公は、親が残した借金を背負い極貧生活を送るデビルハンターの少年・デンジ。裏切りに遭い殺されてしまうが、“チェンソーの悪魔”ポチタと契約して悪魔の心臓を持つ“チェンソーマン”としてよみがえり、壮絶な戦いに身を投じていくダークヒーローアクションだ。注目の第2話の放送(10月18日OA)を前に、主人公のデンジ役に抜擢された戸谷菊之介さん、そしてデンジの上司で内閣官房長官直属のデビルハンター・マキマ役の楠木ともりさんへのインタビューをお届けします!
◆藤本タツキさんの原作漫画を読んだとき、どんな感想を持ちましたか。
戸谷:今回のアニメのオーディションを受ける前から読んでいたんです。異様な空気を放っていて最初は驚きましたけど、読み進めていくうちに絵や構図のカッコよさ、燃える展開に心が奪われていって、大好きになりました。キャラクターがめちゃくちゃなのも魅力的です。デンジもそうですけど、それ以上にとんでもないのがパワーちゃん。
楠木:そうですね(笑)。
戸谷:メインキャラクターなのに、こんなにめちゃくちゃでいいのかと思いながら読んでいました(笑)。
楠木:私は普段、自分が携わる作品以外の漫画はあまり読まないんです。ただ、この作品は友人から強く薦められて。「そんなに言うなら…」と読み始めてみたらすっかりハマって、一気読みしてしまいました(笑)。
戸谷:そうだったんですね!
楠木:この作品って悪魔が出てきたり、悪魔を狩るデビルハンターという職業があったりと非現実的な世界観ではあるんですけど、現実離れしすぎてないようにも感じるんです。もしかしたら私たちと同じ世界の知らないところで、このキャラクターたちはみんな生きているんじゃないかと思える。その非現実と現実のバランスが絶妙で。キャラクターたちの尖った個性も、映画好きのタツキ先生らしいストーリー構成も魅力的です。この作品でしか味わえない独特の空気感に魅了されました。
◆主人公のデンジの印象はいかがですか?
戸谷:第一印象はやっぱり“めちゃくちゃだな”でした。ただ、デンジを演じさせていただくことが決まってあらためて冷静に見ると、実は行動原理がちゃんとあるんです。
楠木:食パンにジャムを塗って食べたいとか、女性にモテたいとかですよね。
戸谷:そうです。極貧生活をしていたデンジにとっては、とてつもなく大きな夢で。そこに向かって真っすぐに突き進んでいるだけなんですよ。
楠木:だからめちゃくちゃでも受け入れられるんですよね。デンジ君は常識が通用しなくて、全然主人公らしくない。でも、常識が通用しないからこそ主人公になれた。そこがデンジ君らしさであり、今までにない主人公像だなと思います。
◆デンジは貧乏な日々を送っていて世間のことをあまり知りませんが、物語が進むにつれて徐々に変化していきます。そういった変化はお芝居でも意識されましたか?
戸谷:デンジは、最初は知らないことが多く、借金だらけで憂鬱に暮らしていました。そこから食べ物や仕事を与えられて、夢に向かって突き進むエネルギーが大きくなっていく。そこは意識的に表現したというよりも、彼の変化に合わせて演じ方も変わっていった気がします。
◆デンジにとって、マキマをはじめ、いろいろなキャラクターと関わることが大きいですよね。
戸谷:そうですね。特に(デビルハンターの先輩に当たる)アキくんと関わってから、デンジは大きく変わっていきます。その二人の関係性にも注目していただきたいです。
◆マキマの印象はいかがですか?
楠木:第一印象は「かわいい」でした。こんなにかわいらしい人が上司なんてうらやましいと思いながら読んでいたら、物語が進むにつれてミステリアスな面が見えてきて。それは、彼女の印象が変わったというよりも、奥行きが出てきたという感じなんです。いろいろな要素が積み重なって、見え方が変わる人物だと思いました。
◆最初から変わっていないけれど、見えていなかった部分があるような人物だと?
楠木:そうだと思います。あとマキマは、仲良く接するけど、手が届きそうなのに絶対に届かない。高嶺の花みたいな人なんですけど、でも欲しいときに欲しい言葉をくれるんです。だから私はマキマが大好きで、とりこになりました。
戸谷:僕もマキマさんは一番好きなキャラクターです。あのお姉さん感に惹かれました。
楠木:常に余裕がありますよね。
戸谷:楠木さんは、そういうマキマさんを声のお芝居でしっかり表現されていて。ミステリアス感もありつつ、手が届きそうで届かない感じが声から伝わってきます。
楠木:ほんとに!? めっちゃうれしいです!
戸谷:欲しい言葉をくれるというのも、まさにそのとおりだと思います。デンジが悩んでいるときにある種の答えをくれたり、目標を与えてくれたり。デンジにとってマキマさんは“うれしいことをしてくれる存在”なんです。
◆ミステリアス故に、マキマを演じるのは難しさもあるのでは?
楠木:最初はマキマのミステリアスさを含ませようとしたんですけど、監督にはそのニュアンスは入れなくて良いとディレクションがありました。これは私の解釈ですけど、特に序盤はデンジ君から見たマキマが多く描かれているので、そうする必要はないのかなと。ですので、基本的にフラットなテンションで、つかみどころがないけど、たまにかわいさがちょっと見えればベストかなと思って演じています。
◆原作の読者もデンジと同じ、もしくは近しい気持ちだったかもしれません。
楠木:ですよね。だから、アニメでも同じようにその体験をしてもらうというのが、原作に対する一番のリスペクトだと思っています。
◆デンジとマキマが一緒のシーンが多いですが、何か相談などはされるんですか?
楠木:特にしませんね。あまりお互いがどう出るのか知らない方がいいと思っていて。それぞれ相手のお芝居で感じたことを受けてデンジとして、マキマとして出た方が監督の求めるリアリティに近い。ですので、特に相談はせずに演じています。
◆お互いのお芝居については、どう感じてらっしゃいますか?
戸谷:楠木さんは、役に入ると雰囲気が一気に変わるんです。普段はこんな感じですけど。
楠木:こんな感じってなに!(笑)
戸谷:いや、こうやって優しくツッコんでくれて、親しみやすいという意味です(笑)。先輩として、アドバイスもくださいますし。
楠木:えー、そんなにしてないですよ?
戸谷:いやいや、いろいろと学ばせていただいています。「尻餅をつく芝居をするときは、背中をたたくと、それに近い息使いになる」とか。あと1話の「抱かせて」と言って後ろに下がるときの息の出し方とかもアドバイスしてもらいました。
楠木:後輩ですし、戸谷君がアニメで主役を演じるのは初めてとあって、余計なお世話だとは分かりつつも、勝手に気にかけてしまっていて。
戸谷:すごく助かっています。
楠木:特にデンジ君は叫ぶシーンが多いので、喉のメンテナンスなども大変だろうなと心配していたんですけど、戸谷君自身はケロッとしていました(笑)。
戸谷:そうですね(笑)。
楠木:思い切り収録を楽しんでいる感じなんです。お芝居にもそれが乗っていて、まさにデンジ君だなと思いました。あと戸谷君がすごいのは、マイク前で動くところ。芝居中に手振りなどをする声優さんは他にもいらっしゃいますけど、それは力を逃がすためにやっている方が多いんです。でも戸谷くんはそうじゃなくて、実際にデンジ君と同じような動きをしていて。おそらく、戸谷君なりにリアリティのある芝居を追求しているんだろうなと。「こういう感情で演じてください」と言われても、人生で経験したことがなければなかなかその感情って引き出せないじゃないですか。だから戸谷君は、デンジ君と同じように動くことで補完しようとしているんだと思います。しかも、その芝居がズレていないんですよね。勘もセンスもいい上に努力家というところが、座長としてカッコいいです。
戸谷:その言葉、うれしすぎます。ありがとうございます!
◆2話の見どころを教えてください。
戸谷:デンジがマキマさんにうどんを「あーん」して食べさせてもらうシーンです。収録もすごく楽しかったので。
楠木:私もそのシーンを言おうと思っていました。マキマのかわいさも出ていますし。
戸谷:原作だとギャグっぽいひとコマなんですけど、アニメでは自然な描き方になっているんです。
楠木:リアルな描き方がされていて、だからこそなおさらギャグっぽく見えるシーンになっています。その温度感を楽しんでいただきたいです。
PROFILE
戸谷菊之介
●とや・きくのすけ…1998年11月30日生まれ。SMA主催声優オーディション「第6回アニストテレス」特別賞。主な出演作は『ウインドボーイズ!』(清嶋桜晴役)、『束縛彼氏』(新藤暁役)、『UniteUp!』(清瀬明良役)など。アニメのメインキャストを務めるのは、本作が初となる。
楠木ともり
●くすのき・ともり…1999年12月22日生まれ。2022年の主な出演作は『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』(ティア・ノート・ヨーコ 役)・『TIGER & BUNNY 2』(ラーラ・チャイコスカヤ 役)など。シンガーソングライターとしても活動しており、12月には初のホールツアーを開催。
作品情報
『チェンソーマン』
テレビ東京系
毎週(火)深0・00~0・30
●深1・00よりPrime Videoにて最速配信
<STAFF&CAST>
原作:藤本タツキ(集英社「少年ジャンプ+」連載)
監督:中山竜
脚本:瀬古浩司
制作:MAPPA
オープニング・テーマ:米津玄師「KICK BACK」
挿入歌:マキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ」
エンディング・テーマ(週替わり):ano、Eve、Aimer、Kanaria、syudou、女王蜂、ずっと真夜中でいいのに。、TK from 凛として時雨、TOOBOE、Vaundy、PEOPLE 1、マキシマム ザ ホルモン(50音順)
声の出演:戸谷菊之介、井澤詩織、楠木ともり、坂田将吾、ファイルーズあいほか
●photo/中村 功 text/M.TOKU hair&make/宮本愛(yosine.)(戸谷)、大久保沙菜(楠木) styling/カワセ136(Yolken)(戸谷)、森俊輔(mohair.inc)(楠木)
©藤本タツキ/集英社・MAPPA