『階段下のゴッホ』演出・プロデューサーからの手紙 第7回:青が意味するもの

特集・インタビュー
2022年11月04日
(C)「階段下のゴッホ」製作委員会

TBSの深夜ドラマ枠「ドラマストリーム」で9月20日から放送開始した『階段下のゴッホ』(TBSほか 毎週火曜 深夜0時58分〜1時28分)。本作は、自分らしく生きるために邁進し、強くたくましく夢にも仕事にも向き合い進んでいく主人公・鏑木都の姿を通して、生きやすいようで生きにくい令和の時代を闊歩する女性たちにエールを送るヒューマンラブストーリーだ。
大手化粧品メーカーに勤める“高収入バリキャリ女子”で、ある絵画に出会ったことで一念発起し、画家になるという夢をかなえるべく東京藝術大学を目指す主人公・鏑木都をSUMIRE、都が美術予備校で出会う6浪中のミステリアスな青年・平真太郎を神尾楓珠が演じる。
そんな本作でプロデュース兼全話の演出を担当する小牧 桜さん(TBSテレビ)による連載が、TV LIFE webでスタート。本作に込めた想いから撮影の裏側まで、演出・プロデューサーという立場ならではの視点でお届けしていきます。

第7回:青が意味するもの

拝啓、皆様。

正直、賛否が分かれる回になるだろうなと思っていました。
第7話を編集している時に、編集担当の松尾さんと、“死そのもの”は“心を動かす材料”にしてはならないという話をしました。死は誰でも平等に経験するものだから、喪失を知る人間が観れば、それは心動かされる何かになってしまう。

●photo/山元良仁 (C)「階段下のゴッホ」製作委員会

だから7話で描くべきは、光也、そして死そのものではなく、何より彼と共に生きた真太郎であると。
実際、クランクインの時にはすでに最終話までの脚本は出来上がっていたので、撮影の際にも真太郎を通してずっと光也を探すように、ドラマを制作していました。

スタッフもキャストも真太郎が何故ここにいるのか、なぜ絵を描き続けているのか、藝大に落ち続けているのか、涙するのか…全ての答えがわかっている中での撮影となってはいましたが、とにかくそれをあえてあっけらかんと描き、匂わせないよう進めていきました。キャストはもちろん、チーム全体で、見えない光也の存在を考え、構築していった形です。

●photo/山元良仁 (C)「階段下のゴッホ」製作委員会

足を組む仕草も、コーヒーも、握手も、プラネタリウムも、高架下の星空も、何より青いコートも。7話まで観たときに初めてピースが繋がっていくという、とても挑戦的な作り。脚本家の加藤さん、協力Pの佐井君と、ここだけはとにかく一歩踏み外せば奈落の底だという覚悟で、どこまで見せるか、どこまで描くかを丁寧に話しながら進めていきました。

(C)「階段下のゴッホ」製作委員会

そういった理由もあってか、全体を通して神尾さんと倉さんとは、個別に芝居について話をすることがとても多かったように思います。
2人同時に撮影する時は3人でよく話をし、答えに近いところまで芝居プランを詰めましたが、それぞれ単独での撮影の際はお互いならどうするかを考えながら、引きずられすぎないように撮影に臨んでいただきました。
ヒントはあるけど余白は残して――そんなバランスを取るようにして、撮影を進めていきました。

対する主人公の都は、その2人の対比をフラットな立場として受け取り、仲介する役回り。ですが、赤の他人であったとしても紛れもなく都がいなければ2人の思いの橋渡しはできないのだ、ということをSUMIREさんと話しながら、枝葉を伸ばしていった形です。

(C)「階段下のゴッホ」製作委員会

印象深いのは光也がいなくなってしまった後、1人になってしまった真太郎が河川敷で座り込んでいるシーン。光也演じる倉悠貴さんのその日の撮影の出番は既に終わっていましたが「見守っておこうかな」とじっと、我々と一緒に最後までモニターを見つめていました。
撮り終わると神尾さんと2人で微笑みながら何やら話をされていて。もちろん最初から親交のあるお2人ですが、深夜ドラマにおける短期間の撮影とは思えない信頼関係が見える瞬間でした。

(C)「階段下のゴッホ」製作委員会

光也の中にあったものは決して絶望だけではない。
真太郎は都に出会ったことで、変われたことがちゃんとある。
都は主人公として、伝えること、描き続けることへの答えを見つける。

最終話ではそれぞれの思いと、ちょっとした追伸が描かれるので、楽しみにしていてください。
この連載も次回で最終回となります。ぜひ最終話までご覧いただき、お付き合いいただけますと幸いです。

PROFILE

小牧 桜
こまき・さくら…1989年4月14日生まれ。東京都出身。
TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部。
『ルーズヴェルト・ゲーム』、『99.9〜刑事専門弁護士〜』、『凪のお暇』などの演出部を経験し、2020年『この恋あたためますか』でGP帯監督デビュー。以降は『リコカツ』、『持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜』などのドラマの演出を担当。
9月20日より毎週火曜深夜0時58分からTBS系にて放送中のドラマストリーム『階段下のゴッホ』(出演:SUMIRE・神尾楓珠ほか)で、初プロデュース兼全話演出を担当。

番組情報

ドラマストリーム『階段下のゴッホ』
TBSほか ※一部地域を除く
2022年9月20日(火)スタート
毎週火曜 深夜0時58分〜1時28分

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kaidanshita_no_gogh_tbs/
公式Twitter:@drama_streamtbs
公式Instagram:tbs_drama_stream
公式TikTok:@drama_stream_tbs

この記事の写真

©「階段下のゴッホ」製作委員会

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