十日草輔によるWeb漫画をアニメ化し、2021年10月~2022年3月にかけて放送された『王様ランキング』。生まれつき耳が聞こえず言葉も話せず、短剣も振れないほど非力な王子ボッジが王様になることを目指し、暗殺集団の生き残りであるカゲと友情を育みながら冒険を繰り広げる物語は大きな話題を呼んだ。そんな『王様ランキング』が、前作では語られることのなかったスペシャルエピソードを描く『王様ランキング 勇気の宝箱』(4月13日スタート フジテレビ系 毎週(木)深0・55ほか)として帰ってくる。放送開始を前に、ボッジ役の日向未南さんに作品への思いを聞きました。
◆前作の反響はかなり大きかったのではないですか?
知り合いの主婦の方が、「5歳の息子と『王様ランキング』を見ている」とおっしゃっていて。私がボッジを演じているとは知らずに。ダークなシーンもあるので、小さなお子さんと楽しんでくださっているというのは驚きでしたけど、すごくうれしかったです。その主婦の方は(王妃の)ヒリングさんに共感していたそうで。「やっぱりそうなんだ」と納得しました(笑)。
◆ボッジを演じているのが目の前の日向さんだと知ったら、さぞびっくりするでしょうね(笑)。
普段の声のトーンだと、私がボッジだと気づく人はまずいないと思います。友達からも「声からボッジの感じがしない」と言われて、「分かる。私もそう思う」って返しました(笑)。
◆最終回含め、ボッジとカゲの友情には本当に胸を打たれました。
あんな出会い、ないですよね。自分の人生でカゲほどの相手に出会えるのかな…。そうそう出会えなくないですか? あれだけ互いに想い合っているのは、本当にすてきですよね。
◆日向さん自身は、前作をどうご覧になっていたんですか?
コロナ禍で分散収録だったので、カゲ役の村瀬(歩)さんとはご一緒することが多かったんですけど、その他の役者さんがどんなお芝居をしていらっしゃるのかはあまり知らなくて。なので、アニメーションの楽しみと皆さんのお芝居の楽しみがあり、見始めるといつもあっという間でした。ただ、自分のお芝居の時はちょっと遠目になって「大丈夫かな、私ちゃんとやれてるかな」と不安になっていましたけど(笑)。
◆日向さんにとっては初主演作でしたよね。しかもボッジは話すことができない難役で、プレッシャーもあったのではないかと。
最初はプレッシャーがすごすぎて、アフレコに行くのが怖かったんです。大御所声優さんたちの中で私一人が新人でまだまだ演技は未熟ですし、一番ご一緒するだろう村瀬さんにご迷惑をかけたくなくて。「頑張らないといけない、でも新人の私にできるの?」という自問自答を繰り返して、アフレコに行く足が重かったです。でも今思えば、自分のことしか考えていなかったんですよね。私のプレッシャーなんて、この作品を作る上で全くいらないわけで。村瀬さんならカゲを演じることに、梶(裕貴)さんなら(第二王子の)ダイダを演じることに全力で情熱を捧げている。みんながみんな、自分の役を演じることに一所懸命だったんです。その中で私だけが「自分にできるの?」という気持ちでいるのは違うんじゃないかと。そう気づいたのが5~7話あたりで、そこから心境が変わっていきました。私も私のボッジをちゃんと作っていこうと。プレッシャーが落ち着いてくると、今度は逆にアフレコに行くのが楽しみになって。「まだかな、まだかな」と、次のアフレコまでが長く感じたくらいです(笑)。
◆キャストの皆さんの情熱は、お芝居からもひしひしと感じました。
もちろんキャストだけでなく、スタッフの皆さんも作品に対してとても愛を持っていて。前作のエピソードで、(国王の)ボッスの中に閉じ込められて「母上! 私はここにいます!」と叫ぶダイダに、ヒリングが「ダイダ、そこにいるのね!」と返すシーンがあったんですけど。あのシーンは、梶さんと(ヒリング役の)佐藤(利奈)さんのお芝居を受けて、スタッフさんがアニメーションをブラッシュアップされたそうなんです。実際に出来上がったシーンを見ても、本当に素晴らしくて。アングルやカメラの動きも、まるで映画みたいだなと感動しました。
◆最終回の放送から約1年。『王様ランキング 勇気の宝箱』がいよいよ始まります。制作が決まったときの気持ちはどんなものでしたか?
そこもやっぱり、スタッフさんの愛を感じました。もう一度アニメに、しかも前作では描かれなかったところを描くなんて、愛がないとできませんよね。
◆久しぶりの村瀬さんとの掛け合いはいかがでしたか?
当たり前ですけど、カゲ役は村瀬さんしかありえないとあらためて思いました。村瀬さんのあのちょっと潰れてしゃがれた声のコメディタッチなお芝居は、カゲにぴったりですよね。家で台本を開いている時も、カゲのせりふは村瀬さんのお芝居を想像しながら読んでいて。だから現場で実際に村瀬さんのお芝居を聞くと、「ああ、これだ!」とうれしくなりました。本当に大好きです。村瀬さんのカゲのお芝居を隣で聞けることに対して、一つ一つのシーンをかみしめながら収録しました。
◆ボッジにとってのカゲのように、日向さんにとっても村瀬さんの存在は大きいんですね。
そうですね。プレッシャーに押しつぶされそうで自分のことしか考えられなかった時、村瀬さんからアドバイスを頂いたんです。自分のせりふは、相手のせりふにつなげるためにあるんだからね、って。そうやって「演技とは何ぞや」というのを教えていただいたことで、私は変わっていけたんです。
◆では最後に、読者へメッセージをお願いします!
前作では、カゲとボッジが(ボッジの師匠の)デスパーさんとわちゃわちゃするシーンがある一方で、(冥府の剣王)オウケンの話はシリアス…みたいな雰囲気がありましたけど。今作でも、さまざまなお話が描かれています。おなじみのキャラクターたちが実際はどんな人で、どんな生活をしているのか。そういうところにもフォーカスが当たっていて、前作では描き切れなかったキャラクター1人ひとりの魅力が詰まっています。あとはやっぱりアニメーションがすごいので、ぜひ注目していただきたいです。
PROFILE
日向未南
●ひなた・みなみ…1月24日生まれ。福島県出身。B型。『王様ランキング』のボッジ役で初主演。最近の声の出演作は『賢者の弟子を名乗る賢者』(ルミナリア役)など。今冬公開の映画「ポールプリンセス!!」(南曜スバル役)などが控えている。
作品情報
『王様ランキング 勇気の宝箱』
フジテレビ系
毎週(木)深0・55~1・25ほか
<STAFF&CAST>
原作:十日草輔『王様ランキング』(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
監督:八田洋介
アニメーション制作:WIT STUDIO
声の出演:日向未南、村瀬歩、梶裕貴、佐藤利奈、江口拓也、上田燿司、安元洋貴、田所陽向、山下大輝、下山吉光、櫻井孝宏、遊佐浩二、坂本真綾 ほか
●text/篠崎美緒 ©十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング 勇気の宝箱」製作委員会