飯豊まりえが主演を務めるドラマ『何曜日に生まれたの』(ABCテレビ・テレビ朝日系全国ネット 毎週日曜 午後10時~)の第5話が、9月10日に放送された。
本作は『101回目のプロポーズ』『高校教師』『未成年』など、センセーショナルな作品を世に送り出してきた野島伸司が脚本を務めるオリジナルドラマ。高校時代の“ある出来事”をきっかけに、10年間ほぼ引きこもり生活を送っていた27歳の黒目すい(飯豊まりえ)が主人公の物語だ。
9月10日に放送された第5話では、謎が多かったすいと純平(YU)の事故に関する衝撃の事実が、リリ子(片山友希)によって明かされる展開を迎えた。さらには、公文(溝端淳平)がすいを“好き避け”しているのではという可能性、すいと悠馬(井上祐貴)の切ないやり取りなどもぼっ発。見どころ満載の回となった。
注目すべきは、やはり第1話から長らく今まで引っ張ってきた事故の真相、その衝撃の内容だろう。公文の自宅で、いつものメンバーで企画会議を始めるところにリリ子が登場する。公文は、すいの彼氏だと偽っていたことを唯一見抜いたリリ子について、「頭も勘もいい。別の視点を物語に加えるため招待しました。すいと雨宮君の事故にまつわる話をお願いします」とリリ子に振る。すると、リリ子は自分が事故の原因だという告白を淡々と始めたのだ。
当時、大会前の大事な時期に純平がすいをバイクに乗せ、サッカー部のサンクチュアリ的な場所の海に連れて行くと知ったリリ子は、ある人物にバイクに細工をするようにそそのかしたという。その人物とは、第4話から登場した、補欠ながらサッカー部のキャプテンを務めていた健人(濱正悟)だった。高校時代、健人はマネージャーの着替えを盗撮しており、それをネタに純平に激烈に片思いしていたリリ子がゆすったというわけだ。
一連の話を打ち明けられたすいは、「仮にそんなことがあってもまさか…冗談だよね? 公文さんに頼まれた創作だよね?」と青白い表情でリリ子に迫るが、リリ子は謝るばかり。たまらずその場を飛び出すすい、号泣するリリ子と取り残される外野。この話が“創作”でないなら、予想以上に最悪な展開を迎えてしまったのだ。
健人といえば、どこからどう見ても“ザ・いい人”。10年ぶりに再会したすいにも、当時の事故の顚末について寄り添った発言をしていた。そこからの裏切り、健人が実行犯だったというダークサイドな一面は、すいばかりか多くの視聴者にも衝撃が走ったことだろう。
健人は純平と悠馬だけがフィーチャーされ、自分がずっと脇役だったことに不満を抱えていたと感じ、一度でいいから注目されたい=純平が事故に遭えば、代わりに補欠の自分が試合に出られるのでは、という短絡的思考からバイクに細工をしたようだった。
人に言えない、さらけ出せない暗い一面は誰しも心に宿しているものだろうが、上手に飼いならすのが人として生きる道のはず。決して正当化できない健人やリリ子の行動だが、それでも彼らを単なる“悪者”として扱うのではなく、やるせない思いをにじませ、人間の弱さをあらためて伝える野島脚本、体現する飯豊や溝端、当事者たちの演技にひき込まれた。
エンディングでは、さまざまな事件がぼっ発し傷ついたすいが公文の肩に力なくもたれるシーンも。しかし、「公文先生には大切な人がいるの。その人のために1000回身代わりにでもなれるような…」という来栖(シシド・カフカ)の言葉が脳裏をよぎる。“好き避け”はあくまで創作の一環だったということなのだろうか…。折り返し地点を過ぎても、このドラマはひと筋縄でいかなさそうだ。
番組情報
『何曜日に生まれたの』
ABCテレビ・テレビ朝日系全国ネット
毎週日曜 午後10時~
番組公式HP:https://www.asahi.co.jp/nanuma/
●text/赤山恭子