『VIVANT』飯田和孝Pが各話の注目ポイントをおさらい 最終回の見どころは「家のテレビが壊れてしまうんじゃないかという豪華なシーン」

ドラマ
2023年09月16日
『VIVANT』©TBS

日曜劇場『VIVANT』(TBS系)の最終回(9月17日(日)午後9時~10時19分放送)を前に、飯田和孝プロデューサーがこれまで放送された第1~9話の注目ポイントと、最終回の見どころを語った。

本作は、『半沢直樹』をはじめ数々の大ヒットドラマを世に送り出してきた福澤克雄が原作・演出を手掛ける最新作。主演の堺のほか、阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、役所広司という全員主役級、日曜劇場史上最も豪華な主要キャスト陣をはじめ、総勢42人の豪華俳優陣が出演する。

9月10日放送の第9話で、乃木(堺雅人)が「私は、別班の任務としてここに来ました」と明かし、別班を裏切っていなかったことが判明。そして、撃たれた別班員たちは急所を外されていて、日本で生きていた。

9月17日放送の最終回では、この事実を知ってノコル(二宮和也)が激高し、ベキ(役所広司)は刀を抜く。過酷な運命を乗り越えた親子。40年の時を超えた宿命の物語はどんな結末を迎えるのか。

これまでの各話の注目ポイント

第1話

『VIVANT』©TBS
ドラム(富栄ドラム)の付けた発信機に気づく乃木

クランクインする前には、10話までの台本はほぼできていたので、1話で乃木がドラムに盗聴器を仕掛けられたところは、すれ違うシーンを撮影する際に、別班乃木がそれに気づく5話のシーンも併せて撮影しています。
その後、乃木はCIAのサム(Martin Starr)と話すわけですが、ドラムの盗聴器がある状況なので、聞かれてはいけない話は、盗聴器から離れた広場へ出て話しているという演出になっています。衛星から乃木の顔を見るために作られたシーンと思われるかもしれませんが、実はそういう意味もあったんです。これを踏まえてもう一度あのシーンを見ていただくと、面白いかもしれません。

乃木vsザイール(Ganbold Erkhembayar)

ザイールを銃で撃つシーンは、実は乃木が撃っていたという部分も同時に、撮影しています。カメラのアングルを変えることで、1話では見えないようなアングルのカメラを採用し、別の野崎(阿部寛)の視点(野崎の小型カメラ)からのアングルは5話で採用しているんです。乃木さんの動きや体の向きも非常に繊細な演出になるので、態勢や、銃の出し方、それでいて、あれだけ正確にザイールの腕を撃ち抜くためにプロが見ても違和感のない撃ち方を、監督、堺さん、ガンアクション指導、アクション指導を交えて綿密に打ち合わせをして、工夫しながら撮影をしました。ザイールを撃った後、野崎が突入してくるので、銃を持ったままにはできない、じゃあどう処理するかまで綿密なシミュレーションがなされていました。
考察でも気づいていただいてますが、ザイールのところへ向かう途中、乃木が警察車両の中で、少しかがむしぐさは、あの時乃木さんは、銃を仕込んでいるんです。もう一度見てもらうと、警察官が、「例のものは3万だ」というようなことを言っているんですけど、「例のもの」とは、その銃のことなんです。

アリ(山中崇)のスマホをすり替え

堺さんとマジック指導の方と、スーツを着ている状況で、どういうふうに隠して、どうすり替えるかという打ち合わせを何度も重ねました。またアリの部屋でデータを盗むところも、サイバー監修の助言を元に、福澤(克雄)監督と助監督が何度もシミュレーションし、現場で堺さんとも何度も話し合って、別班ではない乃木のキャラを保ちながら、どのように実行するのが良いかを検証していました。アリに気づかれないように動かなくてはならないし、でもアリはまだ乃木をただの商社マンとしか思っていないわけで、乃木の動きが鋭くても不自然ですし。かといって、アリはテロ組織の幹部クラスだということも乃木は分かっているので、バレてはいけないし、その辺の絶妙なあんばいは、堺さんと山中さんだから、可能だったのではと思っています。

数多く登場したモンゴルの動物たち

何頭ものヤギが一斉に移動する中を、乃木たちが逃げるというシーンがありました。昨年夏に、初めてロケハンに行ったのですが、それこそそこらじゅうに動物がいて、人間と共生していることを実感しました。そんな動物との距離感に触れたことで、監督もあのストーリーを思いついたのではないかと思います。実際の撮影では、3000頭のヤギたちをどうやって同じ方向に動かして、その中で馬を走らせるか、とても苦労していました。いざ、移動が成功するも、今度は砂ぼこりが立ち過ぎてしまい乃木たちがまったく見えなくなるという(笑)。それから散水車を呼んで水をまいて、地面を濡らして、など試行錯誤の末に、あのシーンが誕生したのです。他にも、『VIVANT』には、ラクダに命を救われるシーンもあり、動物がこのドラマのカギを握っているんです。 “動物の社会の中に人間がいるような感じ”と堺さんがモンゴルを表していらっしゃいましたが、モンゴルは人間と動物との距離感が日本とまったく違います。人が動物を“飼っている”という感覚ではないんです。ですがそれは、日本がまだ遅れているだけあって、世界では当たり前のことだと痛感しました。長旅を助けてくれたラクダを乃木と薫(二階堂ふみ)が心配して、時間をかけてウランバートルまでドラムが戻すという描写はそんな世界基準の考え方を取り入れたいという監督のこだわりでもありました。乃木がラクダにモンゴル語で話しかけるのは、モンゴルの動物だからモンゴル語で、という堺さんのこだわりでもあります。

“F”のキャラクター

乃木は普段、情けない男を演じているわけではありません。別班の乃木は“F”が担っているので、普段の乃木は温厚な性格です。1話でチンギスから逃げている道中も、乃木はいつでも逃げられる状態です。でも、野崎(阿部寛)に素性がバレてしまう恐れがあるのであえて逃げません。また、野崎と行動を共にし、公安は“テント”に関してどこまで情報を得ているのか探る意図もあります。乃木と野崎のシーンを1話から見返してみると、そういった部分がより分かると思います。

第2話

『VIVANT』©TBS
随所にちりばめられた日本文化

野崎が乃木や薫に赤飯を振る舞うシーンがありますが、ドラムが食べるところてんやお餅(5話)、日本大使館で出される料理など、全体的に日本特有のものを数多く使用しています。食べ物に限らず、乃木が住む日本家屋も、ベキ(役所広司)の刀もそうです。福澤監督には、日本の人々はもちろん、やがては世界中の人に『VIVANT』を楽しんでほしいという思いがあり、日本の文化や風情をドラマ内にたくさんちりばめました。乃木と薫が抱き合うシーンの背景を桜にしたり、ベキの故郷が奥出雲で、古くからたたら製鉄や稲作が栄えた地域だったり。世界に発信しているものが、日本の人もあらためて日本の良さに気づかされるきっかけになるのではないかと思っています。

伏線が回収されていないシーン

2話は最終回につながる部分があります。1話で壮絶な戦いを繰り広げたチンギスは、それがあったからこそお互いを認め、5話で野崎はチンギスと手を組みます。また、2話で野崎が「ちょっと用事ができた」とナジュム(Bruce Taylor)を連れて行ったシーンの真意もまだ回収されていません。そして、英子(檀れい)とワニズ(河内大和)の会話も、あらためて見返すと、最終回を見るときにさらにドキドキできると思います。

第3話

『VIVANT』©TBS
数多くのセットに隠された工夫

データセンターに忍び込む撮影は本当に大変でした。実は、コンピュータがいくつも設置された部屋はセットで、警備室前はロケで撮影しています。野崎や東条(濱田岳)がいる車もセットです。
今回はセットを50以上も制作していますが、実はいろいろと使い回しをしています。例えば、データセンターの壁を公安の会議室の壁に使ったり、病院の壁を部屋に使ったり、台本がそろっている状態で撮影をスタートさせたことで、「このセットは次ここに活用しましょう」というプランを美術さんが立て、それに則った撮影スケジュールを組むことができました。ただ、使い回していることが分からないように、1話で使用したものをラストに回すなど、工夫を凝らしています。

第4話

『VIVANT』©TBS
新庄(竜星涼)を責めないで!

新庄が山本(迫田孝也)を見失うシーンも、いろいろと考察がなされていましたが、一応追われている側も相当に訓練された人物ですからね。山本も別班の黒須(松坂桃李)が助けていますし、たぬきの置物を見ている隙に乃木を見失ったのも、そもそも乃木は別班ですから。なので皆さん、新庄ばかり責めないであげてください(笑)。

第5話

『VIVANT』©TBS
別班特有の連絡手段と、謎の登場人物

乃木が神田明神で祠をチラっと見るシーンは、後で別班の連絡方法に関係していることが分かります。饅頭が供えてあり、それを確認してお茶屋に行くという流れもスパイ映画のようなシーンですよね。あまり触れられていませんが、あのお茶屋の店主(小林勝也)はもしかしたら、2人が別班だと分かっているのではないでしょうか…。

マスコットキャラクターのヴィヴァンちゃんが本編に登場

もともと、日曜劇場には重厚なイメージがあるのと、今回は放送前に作品に関する情報をほぼ出さなかったこともありあえてイメージとは真逆のかわいらしいキャラクターを立ててPRをしようと考えました。実はこのヴィヴァンちゃん、5話に出演しているんです。どこかに登場しているので、ぜひチェックしてみてください。わりと画面のど真ん中に、こっちを向いてほほ笑んでいます(笑)。

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