“ミュージカル界のプリンス”としてはもちろん、昨年の大ヒットドラマ『下町ロケット』(TBS系)など連続ドラマでも輝きを放っている山崎育三郎さん。新たな出演作『グッドパートナー 無敵の弁護士』(テレビ朝日系)は、咲坂(竹野内豊)と佳恵(松雪泰子)という元夫婦のライバル弁護士がぶつかり合いながら、企業の理不尽に立ち向かう“法務”&“ホーム”ドラマ。山崎さんは、佳恵をサポートするアソシエイト弁護士・赤星役を演じている。「ミュージカルよりも“ライブ”なのかもしれない」という撮影現場について語ってもらいました。
赤星役は、脚本・福田靖氏の当て書きだった!
――最初に『グッドパートナー 無敵の弁護士』の脚本を読まれたとき、どんなふうに思われましたか?
弁護士モノのドラマは、僕にとって初めての挑戦になります。法廷シーンがあったり、専門用語が出てきたり、そういう難しいものを想像していたのですが、台本を開いてみるとそうではなく、半分はホームコメディのような要素になっていて、弁護士に関して詳しい知識のない僕でも最後まで一気に読み進めることができました。赤星というキャラクターは、1話の台本を読んだ限りではまだ完全につかみきれてはいないのですが、割と自分に近いのかなという印象は受けましたね。
――どういう部分で自分に近いと感じたのでしょう?
赤星は、あまり“わ~!”って感情を露にするタイプではなくて、周りのことを冷静に見ながら、要領よくテキパキ仕事をこなしている。あと、きちっとしていたい人なんじゃないかと思って。格好にもそれが表れているし、演じるときは姿勢にも気をつけています。実はこの赤星役は、脚本の福田靖先生が僕に当て書きしてくださったそうで。
――そうだったんですね!
昨年だったかな。福田先生が僕のミュージカルを見にきてくださって、そのときに当て書きだとお聞きしました。役者に対してとても愛情がある方なんだなと感じましたね。先日もわざわざ撮影現場まで来てくださって、みんなとお話されていました。
――福田先生の作品ならではの魅力は、どんなところにあると思いますか?
1人ひとりがちゃんと活きるように、かつ芯を持った人間として明確に描かれているのが魅力的ですよね。あと、会話のテンポの良さも素晴らしいんですよ。弁護士という職業は難しく取られがちだと思いますが、この作品は年齢関係なく、誰が見ても楽しめる。台本を読みながら、そして実際に演じながら、本当に面白いなと実感しています。福田さんは、大好きな脚本家です。
――主演の竹野内豊さんにはどんな印象を持たれましたか?
竹野内さんは、とにかくカッコいい。男が惚れる男というか。そして、あの低音域の声がイイですよね。ミュージカル俳優ですから、音には敏感なんです。竹野内さんの声はドレミで言うと、多分「ラ」くらいですね(笑)。僕は声が高いんです。ミュージカルでもテノールですから。いつも竹野内さんとおしゃべりした後に1人でこっそり声真似してみるんですけど、全然できない(笑)。竹野内さんの声は今までテレビを通してでしか聞いたことがなかったので、あまりのイイ声にびっくりしました。
――赤星という役から見て、竹野内さん演じる咲坂をどうとらえていますか?
赤星はきっと、咲坂のことを意識していますよね。カッコいいなと思いつつも、負けたくないというか。カッコよさでは咲坂より自分のほうが少し上だと思っているような節がある。だから、演じるときも咲坂のことを意識するようにしています。
連ドラの緊張感はある意味、ミュージカルよりも“ライブ”
――では、松雪さん演じる佳恵に対してはどうでしょう?
赤星は佳恵の強さとか、ちょっと色気があるところとかに惚れてる部分はあると思います。いつも振り回されながらも、彼女についていきたいっていう気持ちがすごく強い。松雪さん自身が既についていきたくなるような女性ですからね。普段の松雪さんはすごく優しい雰囲気で、ソフトに話されるんですよ。でも、佳恵のように芯はとても強い方という印象があります。
――ミュージカルの舞台に立ちつつ、昨年10月クールの『下町ロケット』から連ドラへの出演も続いていますが、ハードではないですか?
大変だなと思う場所が作品によって違うんですよね。連ドラに関しては瞬発力だなっていう感覚があって。顔合わせがあって、現場で1~2回リハーサルやったらもう本番。OKだったら次の週にはテレビで流れていたりする。でも舞台の場合は、連ドラでの1~2回のリハーサルを1か月以上かけて何十回、何百回と稽古して初めてお客さんの前でやるわけです。だから、連ドラでは1~2回のリハーサルでどこまで完成形を作れるかが勝負。その緊張感は僕はある意味、ミュージカルよりも“ライブ”なのかもしれないと思いますね。あと『下町ロケット』のときはどうしても台本がギリギリになってしまい、手元に届いたのが撮影の前日だったり、当日現場に行ったら何ページもセリフが変わってその場で何十行も覚えたり、というようなこともありました。それにどう対応していくかという大変さはありましたね。
――ミュージカルとドラマでは、演じ方も変わってくると思うのですが。
最初はカメラに向かってセリフを言うことだったり、そのときの声のボリュームだったり、いろいろなことに戸惑いましたけど、やりながら自分なりにつかんでいった感じです。ミュージカルは目の前に2000人のお客様がいて、その最後方まで届く歌と芝居を、と言われてきました。だから、動作1つも大きく見せますけど、ドラマではちょっとした目の動きだけでも成立したりしますからね。お芝居の幅が全然違うんです。お客様がいないというのも自分にとっては大きくて、ミュージカルの場合は笑いが起こったり、涙を流されている方がいたり、そういう反応をダイレクトに感じられますけど、ドラマの場合はシーンとしていますからね。大丈夫かなって心配でした(笑)。
――では最後に『無敵の弁護士』というタイトルにちなんで、山崎さんの“無敵”なものを教えていただけますか?
“マイペース”ですかね(笑)。緊張したりとか、プレッシャーを感じたりとか、あんまりしないタイプなんです。あ、でも過去に「モーツァルト!」というミュージカルをやらせていただいたときは、ありましたね。当時23歳で、初めて帝国劇場という夢の舞台に立たせていただいたんです。しかも主演という立場で。バックには大先輩の市村正親さんをはじめ、そうそうたるメンバーがいらっしゃって、その中で主演を務めることがもう怖くて怖くて。眠れなくなるくらい。これはもう本当にできないんじゃないかと思ってたんですけど、ある瞬間に吹っ切れたんです。もしこれでダメならミュージカル俳優以外でも何でもやろうって。自分は自分しかいないんだから、しっかり自分と向き合ってやっていこうと。そう思えたことで変わりましたね。
ドラマ情報
『グッドパートナー 無敵の弁護士』
毎週木曜夜9:00~9:54
テレビ朝日系
◆Story
咲坂(竹野内豊)と佳恵(松雪泰子)は、企業法務を専門とするロー・ファーム「神宮寺法律事務所」のライバル弁護士であり、1年前に離婚した元夫婦。法律論を戦わせたかと思えば、すぐに痴話げんかが始まったりと、ことあるごとに争ってばかり。事務所にはほかに、咲坂や佳恵と同じ弁護士の猫田(杉本哲太)、サポート役の弁護士である熱海(賀来賢人)、赤星(山崎育三郎)、麻里(馬場園梓)、パラリーガルの九十九(大倉孝二)、そしてボスの神宮寺(國村隼)とひと筋縄ではいかないメンバーぞろい。そんな“無敵”の弁護士軍団が、企業の理不尽に立ち向かう。
◆Cast
脚本:福田靖 監督:本橋圭太、田村直己ほか 出演:竹野内豊、松雪泰子、賀来賢人、山崎育三郎、馬場園梓・杉本哲太・大倉孝二、國村隼ほか
●取材、文/甲斐 武