アニメ『葬送のフリーレン』が、9月29日(金)に日本テレビ系『金曜ロードショー』(後9・00)で初回2時間スペシャルでスタートする(以降は10月6日より同局系『FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)』で毎週(金)後11・00から放送)。原作は「週刊少年サンデー」で連載中の同名漫画で、勇者一行によって魔王が倒された“その後”の世界を舞台にした大人気ファンタジーだ。主人公は勇者一行の魔法使いで、1000年以上生きるエルフのフリーレン。彼女が新たに出会う人々の旅路が描かれていく。TVLIFE webでは、キャスト陣に全3回にわたるリレーインタビューを実施。第1回はフリーレン役の種﨑敦美さんに、初回SPの見どころなどを聞きました。
◆原作とはいつごろ出会い、どんなことを感じましたか?
オーディションを受けるにあたって読みました。“冒険の終わりから始まる”という斬新な切り口にがっと心をつかまれて。しかもそういうインパクトが最初だけじゃなく、その後もずっと続いていくんですよね。「この切り口もあるのか、この切り口もあるのか」って。そのすごさもありながら、根底には哀愁とか郷愁みたいなものが流れているように感じて、涙を堪えながらページを捲っていきました。この感覚は何なのだろうと。今までにない感覚でした。
◆斬新である故に、先の展開も全く読めませんよね。
本当に。予想の遥か上というか良い意味で斜め上というか。最初の方は穏やかな空気の中、何かこう、言葉にできない優しさみたいなものが積もっていって。なるほどこうやって物語が進んでいくんだな…と思っていたら、新たな展開が緩急をつけながら次々にやってきて、「こうきたか…面白過ぎる…!」って。そんな旅の中で、フリーレンが人間というものを知っていく。彼女が何を感じ、どう変わっていくのか。その先でどんな結末を迎えるのかも全く予想がつかなくて、楽しみです。
◆フリーレンに対してはどんな印象を持ちましたか?
正直、アフレコをする中で「こうなのかな、ああなのかな」と思うことが増えていったので、最初の印象がもう定かではないんですけど。ただ、すごく真っ白だなとは思いました。何もない真っ白じゃなくて、純粋な真っ白。あと、長生きしているからなのか、もともとなのか、省エネでドライなところもありますよね。体に力が入っていない感じというか。
◆演じる上で意識しているのも、そういう部分ですか?
そうですね。体に力を入れず、自然体ですーっと演じられたらいいなと。あと、「どれだけ年を重ねてもブレない部分」と、「それだけ年を重ねているんだからどんな日があってもいいじゃないという部分」を意識しています。後者はそう思えるようになるまで、かなり悩んだんです。他のどの役柄もそうですけど、フリーレンは特にせりふのニュアンスが少し違うだけでも本来の意味が伝わらなくなってしまいそうで。そうならないように、自分が受け取ったまま伝えるためには、全て緻密に考えて言葉を発した方がいいのではないかとも思ったんです。例えばこのシーンは過去の10年の冒険のきっとこれくらいの時期で、なら仲間とはもう少し打ち解けているのかな…とか、そんなところまで掘り下げて。でも、1000年以上生きる人生がどういうものかなんて私には分かりませんし、途方もなさすぎて想像すら難しくて。想像できるとすれば、長く生きていればきっといろんな日があるのではないかなということくらい。それでいいのかなと思ったら、演じるのがちょっと楽になりました。それに、一番大事なのはフリーレンが人と触れ合って何を感じ、どう変わっていくかなので。あまり最初の段階でフリーレンはこうだと固めすぎる必要もないのではないかと思いました。
◆監督などからディレクションされたことはありますか?
初回のアフレコのとき、原作を読んで感じた印象のままにフリーレンを演じたら「もうちょっと温度が高くていいです」と言われて。結構、ドライに演じていたんです。原作だとわりとそういう表情が多かった気がしたので。でも、アニメではもうちょっと表情が豊かに描かれているんですよね。そう気づいたのは後々、自分で映像を見てからだったんですけど、「確かに、もうちょっと温度が高い方が合うな」と思いました。
◆アフレコの最初のシーンはどこでしたか?
原作と同じく物語の冒頭、魔王を討伐して凱旋するところから始まりました。なので最初は勇者パーティーのキャストの方々と一緒で。皆さんのアプローチを見て「こういう風に演じるんだ。じゃあ、私はどうしようかな?」という感じでした。その場の空気感を大事にしながら、私はこう受け取ったからこう返すっていう。それはこの作品に限らずそうしていきたいなと思っていることなんですけど。
◆完成した映像をご覧になって、いかがでしたか?
もう素晴らしかったです…!「この作品をこういう風にアニメーションにできるの、すごいなぁ!」と。「監督、ありがとうございます。すごすぎます!」と感動しきりでした。原作の空気感や伝わってくるものを忠実に再現しつつ、アニメーションならではの魅力もたくさんあって。例えば漫画だとコマ→コマですけど、アニメーションだとそのコマとコマの間の見たかったところをちゃんと見せてくれるんですよね。しかも、細かい部分まですごく繊細に描かれていて。中でも私は“瞳”が印象的で。この作品って言葉とか行動で明確に表されていないところにもいろんなものが詰まっていると思うんですけど、それが瞳とか口元とか間(ま)とかからしっかり伝わってくるというか。言葉にならない自分の中に降り積もっていくものを、全部アニメーションで表現してくれているように思いました。
◆初回SPでは、フリーレンが年老いた勇者・ヒンメルの死に直面しますよね。彼女にとって大きなターニングポイントとなるシーンです。
そうですね。フリーレンが「人間を知ろう」と思って新たな旅に出るきっかけの出来事なので。私自身も人を亡くして「何であのとき、もっとああしなかったんだろう」と後悔した経験があるんです。人は誰しもいつか死を迎えると分かっていたはずなのに。そんな日が来るなんて信じられないんですよね。だから、あのシーンは自分と重って「分かるなぁ…」と共感しながら演じました。
◆旅に出たフリーレンには、魔法使いのフェルンとの出会いが待ち受けています。彼女はフリーレンの弟子となり、共に旅することになります。
アフレコは先々まで進んでいるのですが、その今の状態で、完成した初回放送分を見た時、まだ小さいフェルンを見た瞬間に私、大号泣してしまったんです。事実だけを並べればまさに弟子となって共に旅する存在であり、私も最初はそういう視点で見ていたんですけど、そのときをきっかけに分からなくなってしまって。この感情は何なんだろうって。フリーレン自身がフェルンに対してどう思っているのかも明確には語られないので、分からないんですよね。今やただの師弟ではない、言葉では言い表せないほどの関係性になっているということなのかもしれません。
◆初回SPで特に注目してほしいシーンは?
初回SPは“旅立ちの章”と銘打たれていて、まさにフリーレンが新たに旅立つ姿が描かれます。それは「人間を知るため」「趣味の魔法収集のため」、さらにそれらとは別にこの初回SPの終盤で“3つ目の旅の目的”を見いだすんです。個人的にそのシーンのアイゼンのセリフ全てがとても印象的で。そして「ああ、旅立ちの章だ」ということを改めて感じられるので、ぜひ注目していただきたいです。
◆いろんなことを考えさせられる作品ですよね。
この作品は本当にすてきなセリフがたくさんあって。それに出会うたびに、私もいろんなことを考えさせられます。特に好きなセリフが2つあるんです。1つはヒンメルの「クソみたいな思い出しかないな」。10年の冒険を振り返って言うそのせりふは、言葉どおりの意味ではなく、「キラキラした大切な思い出ばかりだ」の裏返しなわけで。私も何かの終わりのときにそういうことを笑って言える人生にしたいなって。楽しいか、楽しくないかだったら、楽しい人生の方がいいじゃないですか。もう1つはアイゼンの「どんな魔法も初めはおとぎ話だった」。自分の目の前にどんな無理難題があっても、想像するところから始めたらもしかしたらいつか…って、そう思えるんですよね。
PROFILE
種﨑敦美
●たねざき・あつみ…9月27日生まれ。大分県出身。A型。近作は『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(ダイ役)、『SPY×FAMILY』(アーニャ・フォージャー役)、『魔法使いの嫁』(羽鳥チセ役)など。
作品情報
『葬送のフリーレン』
日本テレビ系
2023年9月29日(金)後9・00~10・54
『金曜ロードショー』で「初回2時間スぺシャル ~旅立ちの章~」放送
以降10月6日より毎週(金)後11・00~11・30
『FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)』で放送
<STAFF&CAST>
原作:山田鐘人、アベツカサ(小学館「週刊少年サンデー」連載中)
監督:斎藤圭一郎
音楽:Evan Call
アニメーション制作:マッドハウス
オープニングテーマ:YOASOBI「勇者」
エンディングテーマ:milet「Anytime Anywhere」
声の出演:種﨑敦美、市ノ瀬加那、小林千晃、岡本信彦、 東地宏樹、上田燿司 ほか
●text/図司 楓 ©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会