広瀬香美インタビュー「皆さん“マスク・オフ”という言葉だけでは片づけられない素晴らしい方ばかりです」『歌姫ファイトクラブ!!』

特集・インタビュー
2023年10月18日

『歌姫ファイトクラブ!!』

9月よりHuluで独占配信中の『歌姫ファイトクラブ!!』が、その斬新な審査方法で話題に。SNSを中心に再ブレイク中の“冬の女王”こと広瀬香美さんが、人気バラエティ番組『¥マネーの虎』の生みの親である栗原甚氏とタッグを組み、「新時代の歌姫」を発掘していくオーディション番組。10月21日(土)には、いよいよその歌姫が決定する最終話が配信スタート。これまで歌姫候補たちを審査してきた広瀬さんに、番組への思いや裏話などを聞きました。

◆初回から話題になっていますが、番組の反響はいかがですか?

ファンの皆さんからよく聞くのは「(1話ずつではなく)もう一挙公開でいいんじゃないですか?」っていうことですね(笑)。大好評いただいているからこその感想だと思うんですけど、毎回ちょっとずつ…というのが気になっちゃうみたいで。あとは私の個人的な話になりますが、この番組をきっかけに、オーディション系のお話を頂く機会が少しずつ増えていたりします。ある媒体のオーディションに審査員として参加してほしいとか、地方のオーディションに審査委員長として来てほしいとか。ありがたいことだと思います。

◆この番組以外でも審査員のお仕事を?

こんなことを言うと怒られちゃいますけど、ジャッジってすごく体力を使うので正直ちょっと休みたい気持ちです(笑)。この番組で選ばせていただいた歌姫さんと今マンツーマンのレッスンを開始しているんですけど。とにかくその歌姫を育てるということに私は責任がありますから、まずはそこに一生懸命集中したいと思っています。

◆数多くオーディション番組がある中で、この番組ならではの特徴は何だと思いますか?

審査をする私自身が歌手であるということだと思います。とにかく初めての経験で、どういう立ち位置になるんだろうとワクワクしながら参加させていただいたんですけど。やっぱり一人一人の歌を聴いていくと、“今こういう気持ちで歌っているんじゃないかな”とか“こう歌ったらいいのに”とか、イチイチ思ってしまうんですよね(笑)。なので、ただ審査するだけではなく、“こうした方がいいよ”という学びのある番組になったらいいなと思います。

『歌姫ファイトクラブ!!』

◆今回選ばれた歌姫には、広瀬さんのプロデュースでのメジャーデビューも約束されています。プロデュース業はこれまでもされてきましたが、今回はどんな思いがありますか?

「音楽をプロデュースしてください」「楽曲提供してください」みたいなお仕事は大好きなので、ずっとやり続けてきました。それは期間が定められていましたし、“点”でのオファーだったと思うんです。でも今回は、自分が選んだ歌姫をどうプロデュースしていくかという“線”でのお仕事になります。期限を決めずにその歌姫と切磋琢磨しながらやっていきたいと思いますし…「もう嫌だ!」と嫌われない限りは(笑)。しかも人生そのものをプロデュースするような形だったりするので、そこは今までとは大きく違うなと感じました。

◆応募総数は1457名で、最初の動画審査から全ての映像に目を通されたということですが、どんなことをポイントに選考していったのでしょう?

「ロマンスの神様」か「DEARagain」を歌ってもらって、それを動画に撮って送ってもらいました。私がまず何を見ていたかというと、私の歌マネをしていないかというところです。私がイメージする歌姫に、マネは必要ないと思ったからなんですけど。この2曲はどちらも私の楽曲でありますから、私を嫌いな人はまず応募しないだろうという前提があって。その上で、これから自立して活躍していくためには、私の楽曲を歌うとしても私の歌マネはしないというところは必ずチェックしようと思いました。いくら歌がうまく聴こえても、そういう方は不合格にさせていただいたというのが事実です。逆に気になる方は、もう2回も3回も見させてもらいました。なので当面の間、この2曲は歌いたくなかったです(笑)。

◆たくさんの動画を通じて、今の若い人たちからどんなことを感じましたか?

私の若いころと一番違うと感じたのは、皆さんカメラに撮り慣れているということですね。さすがSNSの時代で、ファンの皆さんから審査や評価されることに慣れているからだと思うんですけど。発信の仕方や表現の仕方が進化しているなと思いました。私が昔オーディションを受けたときは“そのまま聴いてください”という感じだったのに、今の皆さんは“こういうふうに聴いてください”“こういうふうに審査してください”という審査のポイントまでちゃんと投げかけてくるんですよね。私の曲を歌っているんですけど、何となく「私にはオリジナル曲もありますよ…」みたいな匂わせ方をしてきたりするんですよ(笑)。そのアピール力に一番びっくりしましたし、素晴らしいことだなと思いました。

『歌姫ファイトクラブ!!』
『歌姫ファイトクラブ!!』

◆1stステージからは、参加者全員が広瀬さんの顔を型取った“香美マスク”を被ってさまざまな課題に挑戦してきました。自分と同じ顔と対峙される気分はどうですか?(笑)

そこは、演出・プロデューサーの栗原(甚)さんの仕掛けですよね(笑)。私はとにかく本当に歌声が素晴らしい人を歌姫として選びたかったので、栗原さんにはそこをまずお伝えさせていただいたんですけど。その答えが「じゃあマスクしましょう」ということでした(笑)。

◆不合格になった人はその場でマスクを取るという少し残酷なルールもありますが、“マスク・オフ”を告げるときの心境はいかがですか?

やっぱりつらいです。もちろんテストを受けに来てくださっているわけだから、こちらは合否の判定をしなければいけないんですけど。“あの子、帰り道をどんな気持ちで歩くのかな”とか考えるとね…。でも、“(タイミング的に)今じゃなかった”ということなんです。これからも頑張ってほしい、応援したい気持ちにさせられる方が本当に多いので、“マスク・オフ”という言葉だけではどうしても片付けられなくて。それで私もいろいろと理由をお伝えしたんですけど、皆さんには私の言ったことをバネにして頑張っていただきたいです。

◆不合格になっても皆さんの表情が清々しいのは、広瀬さんの言葉が大きいのかなと。

私としてはやっぱり、歌うことを嫌いになってほしくないんです。むしろこのオーディションをきっかけに、ますます好きになってもらいたいという。その気持ちだけですね。不合格の皆さんには、本当にその一心で言葉を掛けさせていただきました。

『歌姫ファイトクラブ!!』
『歌姫ファイトクラブ!!』

◆そういったやりとりを拝見していて、広瀬さんは人がお好きなんだろうなと感じました。コミュニケーションを取るとき、何か大事にされていることがあったら教えてください。

確かに人は好きですね(笑)。ただ職業柄、私にとっては音楽が一番大事で。人と会うことは大好きなのですが、会ってばかりいると練習ができなくなるんですね。なので特定の曜日や休みの前日など、人と会う日というのを決めて生活していたりします。あと私のコミュニケーションの特徴としては、年齢が上か下か、デビューしているかしていないかというような上下関係をあまり感じさせないところなのかなと。ボイストレーニングの指導をしているときに、生徒たちから「いつもフラットに接してくれますね」と言われて、“あぁ、私ってそうなんだ”って気づいたんですけど。“こうやって人と接した方がいい”みたいなことは、あまり考えていないです。相手に自分のルールを押し付けたりすることもしたくないですし、“自分でできることは自分でやればいいじゃん”って思うので。逆に気になることがあったら、どんな人が相手でも“何それ? 教えて!”って思います。

◆この番組でも、広瀬さんは審査する立場でありつつ、参加者から刺激をもらっているということですよね。

めちゃくちゃ刺激になっています。私がみんなに「教えて!」って聞いたら、何でも教えてくれるじゃないですか(笑)。だから、こちらからどんどん懐に飛び込んでいって「どうやってるの?」とか聞いて。教えてもらうのは得意な方かなと思います(笑)。

『歌姫ファイトクラブ!!』

◆あらためて、広瀬さんがイメージする現代の歌姫の条件を教えてください。

今の時代はずば抜けて声質が良くないと通用しないと私は思うので、歌のうまさはもちろん、特に声質が大事だと思いました。あとは自分の意見というものを発信していかなければ世界には通用しませんので、自分の思考や好き嫌いをはっきりと自分の言葉で考えて発言できる力を持っている人。それが私のイメージする今の時代の歌姫です。テイラー・スウィフトのような、自分らしい楽曲を作って自ら歌い、そしてダメだと思うことはダメだと発信し、嫌いなことは嫌いだと発信する。そういったパーソナリティーすらも愛されて共感されるというか。私はそういう歌姫を作っていきたいと思っています。

◆歌唱力だけではなく発信力が必要ということですね。

若いときって、学校や職場で人気があったり、SNSでフォロワーがついたりすることで、ある程度自信がつくと思うんです。それはそれでとてもいいことなのですが、結局は「あなたにとって歌姫とは何ですか?」というところをずっと問答していかなければいけないので。その問答に打ち勝てる精神力があるかどうかを今見極めているところです。私が選んだ歌姫さんは精神力が強いと思っているのですが、実際はどうなるか分からないです。もしかしたら途中でくじけてしまうかもしれないなと。そこは私自身も今格闘しているところです。

◆Adoさんのように、顔は出さずに歌声だけで勝負できる時代にもなりました。

その分、相当レベルが高くないといけないんだろうなと思います。今の若いアーティストは、自分でMVとか映像を作れちゃったりするんですよね。私たちのころはそんなこと考えられなかったですし、スタッフとみんなで分業していたわけで。30年前は私も「歌いながら作詞作曲して、ピアノも弾けて天才だね」なんて言われていましたけど(笑)、今はそれも当たり前になってきていて。もっと自分のことをトータルプロデュースできないと世の中に受け入れてもらえない時代になったということですよね。なのでうらやましいと思う半面、自分は早めに世に出ておいてよかったなと思います(笑)。

PROFILE

●ひろせ・こうみ…福岡県出身。O型。1992年にシンガーソングライターとしてデビュー後、「ロマンスの神様」「ゲレンデがとけるほど恋したい」「DEARagain」など数多くのヒット曲を生み出す。近年はYouTubeやTikTokなどにも活躍の場を広げ、幅広い年齢層から人気を集めている。「Kohmi EXPO 2023」が10月21日(土)よりHuluにて独占配信。11月11日(土)には、なら100年会館 大ホールで「香美別邸2023 in 奈良」が開催。

番組情報

『歌姫ファイトクラブ!!』
『歌姫ファイトクラブ!!』

『「歌姫ファイトクラブ!!」心技体でSINGして!』
Huluで独占配信中(全10話)

出演:広瀬香美ほか
企画・演出プロデューサー:栗原甚(日本テレビ)
Hulu:高橋浩史、荒井智美
制作協力:太陽カンパニー
製作著作:日本テレビ

©NTV

●text/橋本吾郎