『ロマンシング サガ オーケストラ祭 2023』東京公演レポート!新作『サガ エメラルド ビヨンド』の序曲も披露

音楽
2023年10月20日
『ロマンシング サガ オーケストラ祭 2023』東京公演 © SQUARE ENIX

人気RPG『ロマンシング サガ』シリーズの楽曲を演奏するオーケストラコンサート『ロマンシング サガ オーケストラ祭 2023』東京公演が、2023年10月15日に東京芸術劇場 コンサートホールにて開催された。本稿では昼公演の模様をレポートする。

「まもなく開始」という会場アナウンスが流れると、少しざわざわしていたホールが一気に静寂に包まれる。ステージの照明が明るくなり、パシフィック フィルハーモニア東京の奏者たちとコンダクター・和田一樹が袖から姿を現すと、一斉に拍手が巻き起こった。

1曲目に演奏されたのは、『ロマンシング サ・ガ』のオープニングタイトルで流れる「オーバーチュア」。行軍するようなスネアドラムとバスドラムのリズム。高らかに鳴り響くトランペットの音。美しいストリングスの旋律。会場に駆け付けた方々のなかには、『ロマンシング サ・ガ』を何度もプレイして、本曲を何度も聞いたという方も少なくなかっただろう。筆者もその1人だ。しかし、何度聞いても、この曲は鳥肌が立つ。旅立ちにふさわしい1曲で、コンサートはスタートした。

『ロマンシング サ・ガ』のフィールドBGM「迷いの森」と「下水道」のメドレーを披露したあとは、タレントの結、作曲家・伊藤賢治が登場。伊藤は、昨年はまだ声出しできない状況下だったことに触れ、「声を出してもいいということで、発声して盛り上がっていただければ」と言葉にした。

左から)結、伊藤賢治

その後に演奏されたのは、本コンサートでは初となる「人魚の伝説」「ダンストラック#3」メドレー。本曲は『ロマンシング サ・ガ2』の楽曲で、「人魚の伝説」では、まさにプレイ当時聞いていたフルート・ハープの音色が奏でられ、作中に登場する「マーメイド」の町の風景と人魚との恋物語が、一気に蘇る。また、「ダンストラック#3」では3拍子のステップを踏める一定の「ボン、ボン」という低音のリズムが心地よく、自然と体が動いてしまった。なお、「ダンストラック#3」については、伊藤曰く「テネシーワルツ」を参考に曲を作ったとのこと。

儚さや優雅さを感じる楽曲を切り裂くように演奏されたのは、『ロマンシング サ・ガ2』の「バトル1」「七英雄バトル」メドレー。金管楽器の音色は勇ましく、皇帝たちの勇敢な姿を想起させた。「七英雄バトル」はその音楽を聞くだけで「強敵感」と「英雄感」がひしひしと伝わってくる。主旋律の楽器がどんどんと変わっていくのも、一筋縄ではいかぬ戦いを表現しているようだった。

『ロマンシング サガ オーケストラ祭 2023』東京公演 © SQUARE ENIX

続いては、『ロマンシング サ・ガ3』より「怪傑ロビンのテーマ~この世に悪はさかえない!」。指揮棒が振り下ろされた瞬間の迫力あるサウンド、そこから繋がっていく美しいメロディ。誰もが「ヒーローがやってきた!」と思えるほどの楽曲に胸が躍る。トロンボーンが主旋律になったところは「偽ロビンを表しているのかな?」と想像しながら聞くのも楽しい。奏者の方々の動きも激しく、生で見ている魅力を存分に体感できた。

第一部を締めくくったのは、『ロマンシング サ・ガ3』より「アビスゲート」と「四魔貴族バトル1・2」のメドレー。「アビスゲート」では、ティンパニやドラの重厚な音、ブラス・ストリングスの低音が聞いている方々に「怖さ」を伝える。「四魔貴族バトル1」では、鬼気迫るメロディやさまざまな楽器が次々と音を鳴り響かせ、強敵との戦いの激しさを演奏で表現。「バトル2」ではスネアドラムの裏打ち、そのリズムに合わせて奏でられる力強さと繊細さを兼ねたメロディが印象的で、聞いているだけで手に汗握るような演奏だった。

『ロマンシング サガ オーケストラ祭 2023』東京公演 © SQUARE ENIX

第二部は、『ロマンシング サガ – ミンストレルソング –』の「最終試練」「死への招待状」メドレーと「熱情の律動」からスタート。この2曲では、岸川恭子がゲストソリストとして参加した。昨年も本コンサートを多いに盛り上げた彼女はMCで「緊張している」と言葉にしていたが、音が鳴り始めた瞬間、まるで別人かのように表情が変わる。後ろまで響く岸川の歌声が、演奏を昇華しているようだった。特に「熱情の律動」での情熱的な歌声は、圧巻の一言。休憩明けの会場の空気を一気にあたためた。

ここで、「サガ」シリーズプロデューサーの市川雅統、「サガ」シリーズ総合ディレクターの河津秋敏が登場。MCで『サガ エメラルド ビヨンド』について触れた。市川は、「みなさんが応援してくださったからこそ、いいものができたと思っています」と感謝を伝える。河津は「前作からお待たせしましたが、もうすぐ完成と言えるかなという状況に」と現状について触れつつ、「スタッフ一同、いいものにしようと頑張っているので、期待して待っていただければ」と力強く宣言した。

左から)河津秋敏、市川雅統 © SQUARE ENIX

また、ゲームのタイトル画面で流れる楽曲「エメラルド ビヨンド序曲」について語る一幕も。本曲の制作について、河津は伊藤から方向性などいろいろと聞かれたが、「『ロマサガ』の序曲を超えるようなものを黙って作ればいいんだよ(笑)」とリクエストしたそう。一方で「雑な発注をしているけれど、実際のシーンにはめてみると、もっとこうしてもらおうかなという気持ちが生まれる」「いつも助かっている」と続け、伊藤の音楽へ敬意を表した。

最後に『サガ エメラルド ビヨンド』について、河津は「『サガ』らしい主人公が複数いるほか、ビックリする人も登場すると思うので期待して」、市川は「発表されていることはほんの一部。追加情報をお楽しみに」という言葉を残し、ステージを後にした。

その後、実際に「エメラルド ビヨンド序曲」をオーケストラで演奏。疾走感がある、まさに序曲と呼ぶにふさわしい1曲を聞いて、新作への期待値がさらに増した人も少なくなかっただろう。

『ロマンシング サガ オーケストラ祭 2023』東京公演 © SQUARE ENIX

続いて、ゲストソリスト・KOCHOが登場し、『ロマンシング サ・ガ3』に登場する町「ポドールイ」で流れる楽曲と、「女道化師イゴマール」「オリアクス-世界を穿ち、時を射る者-」のメドレーを披露。「女道化師イゴマール」では、幼さも混じったKOCHOの歌声とかわいらしいメロディが重なっているにもかからず、演奏全体は不気味な雰囲気。それが、不思議な力を持つ謎の道化師の妖しい魅力をまさに表現しているようだった。

一方の「オリアクス-世界を穿ち、時を射る者-」は、ユニゾンで奏でられる一発の「バンッ」という演奏をはじめ苛烈で、KOCHOの歌声からは幼さを感じない。こういった対比ができるのは、メドレーならではの魅力だと言えるだろう。

伊藤賢治 © SQUARE ENIX

本編のラストナンバーは、『ロマンシング サガ リ・ユニバース』より「再生の絆~Re;univerSe」。本曲では、『サガ』ファンへの感謝を込めて、伊藤がピアノ担当としてオーケストラに参加する。ピアノを含めた美しいサウンド、グロッケンなどの音が心地よく、自然と気持ちが安らいでいく。ティンパニや低音による大団円感も含めて、まさに本編の締めくくりにふさわしい演奏だった。

鳴りやまない拍手のアンコールに応えて一同が奏でたのは、『ロマンシング サ・ガ1~3』の「ラストバトル」メドレー。ブラスサウンドの激しさ、ストリングスの美しくも落ち着いたメロディ、目まぐるしく動くパーカッションなど、そのすべてが「ラストバトル」を表しているようだった。本コンサートの締めくくりは、『ロマンシング サ・ガ3』の「エンドタイトル」。明るくもダイナミックな演奏が、音楽で巡ってきた『ロマンシング サガ』の世界の終演と、新たな始まりを物語っているようだった。

本コンサートは2023年10月22日(日)に福岡市民会館 大ホール、2023年11月19日(日)に大阪のザ・シンフォニーホールでも開催。チケットなどの情報は公式サイトをチェック。

『ロマンシング サガ オーケストラ祭 2023』東京公演 © SQUARE ENIX

WEB

『ロマンシング サガ オーケストラ祭 2023』公式サイト:https://www.jp.square-enix.com/music/sem/page/saga/concert/romancingsaga_fes2023/

●photo/白石達也 text/M.TOKU

© SQUARE ENIX

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