シド 結成20周年イヤーも終盤戦へ…豪華声優陣によるアニメトリビュート盤は「僕らにとっても宝物のようなアルバム」【インタビュー】

特集・インタビュー
2023年12月08日
シド
シド

2023年、結成20周年イヤーを走り続けてきたロックバンド・シド。12月27日(水)には、いよいよ20周年イヤーの集大成となるライブ「SID 20th Anniversary GRAND FINAL 「いちばん好きな場所」が日本武道館で開催される。

それに先駆け、12月6日(水)に自身初となるトリビュートアルバム『SID Tribute Album -Anime Songs-』と、デジタルシングル『微風(そよかぜ)』をリリース。トリビュートは、これまでシドが担当したアニメタイアップ楽曲を作品に出演した声優陣がカバーするという、新たな形のアルバムだ。一方で、約1年9か月ぶりとなる新曲「微風」は、明希(Ba.)が作曲、マオ(Vo.)が作詞を担当したミディアムナンバー。今までの自分たちと共に歩んできたファンとの軌跡を振り返り、未来に向けて歩き出すことを歌っている。

まもなく20周年イヤーの締めくくりを迎える彼らが、今回のトリビュートアルバムをリリースしようと思った理由やシングルに込めた思いとは―。また、メンバーとの絆やこれまでの活動を振り返って感じること、今後への展望も語ってもらいました。


◆トリビュートアルバムは情報解禁時からアニメファンも巻き込み、大きな話題を呼びました。まず、このアルバムのリリースに至った経緯を教えてください。

マオ:きっかけは20周年を記念した作品を作りたいね、という話からでした。デジタルシングルのリリースであったり、いろんな仕掛けを考えていく中で、トリビュートアルバムはどうだろうという提案が出てきたんです。そこからみんなと話していく中で、アニメの主題歌になったものを、出演されていた声優さんに歌っていただけたら面白いんじゃないかな、と。当初はまさかかなうと思っていなかった夢のような話ではありますが、それが実現し、今回リリースまでたどり着くことができました。

◆そんな夢のようなアルバムが実現すると聞いた時の心境はいかがでしたか?

マオ:これまでいろいろなアニメとタッグを組ませていただいて今のシドの形があると思っているので、その道中で出会ってきた皆さんともう一度ご一緒できるというのがまず純粋にうれしかったです。僕らもそれぞれ好きなアニメがあり、アニメの持つパワーのすごさを日々感じている中で、声優の皆さんが僕らの手掛けた主題歌やエンディング曲を歌ってくださるというのはもう最高の気分でした。

マオ(Vo.)
マオ(Vo.)

◆今回の収録楽曲は明希さんが作曲された楽曲が多いですが、完成したアルバムを聴いた時の印象は?

明希:声優の皆さんのすてきな歌声を堪能できるのはもちろん、それを超えてもはやアニメのキャラクターたちの姿や声までもが再生されるような仕上がりになったな、と。僕らにとっても宝物のような、素晴らしいアルバムにしてくださって本当に感謝しています。

◆今回のアルバムから、皆さんそれぞれの“推し曲”を挙げていただくと?

マオ:「モノクロのキス」です。すごくハマっていますし、クオリティが高くてさすがだなと惚れぼれしてしまいました。この楽曲は『黒執事』の世界観を意識して歌詞を描いているのでセバスチャン(・ミカエリス)役の小野(大輔)さんが歌ってくださって本当にうれしかったですし、歌声も本当にすてきですよね。

明希:僕は「ANNIVERSARY」です。僕ら自身さまざまな機会で披露してきた楽曲ではあるのですが、シドの「ANNIVERSARY」とはひと味もふた味も違う歌声やニュアンスで、戸松(遥)さんがこの曲をまた別の形で蘇らせてくださったといいますか。聞きごたえもあり、すごく気に入っています。

明希(Ba.)
明希(Ba.)

Shinji(Gt.):僕は「嘘」ですね。朴(璐美)さんがエドとはまた違う美しい声で歌ってくださっていて、いい意味で意外性もありました。あと、この曲ではこーじゅんさんという方がギターを弾いてくださっているのですが、超絶技巧なギタリストで、僕はこーじゅんさんがやられているYouTubeチャンネルをしょっちゅう見ているんです。そんな方が今回偶然弾いてくださることになり、朴さんの歌声とも相まって最強の1曲になったと思っています。

ゆうや(Dr.):どの曲もとてもすてきなのですが、僕は「乱舞のメロディ」かな。原曲より少し低いキーで歌っていただいているのですが、バンドの皆さんも上にいかずにしっかり低いところで弾いてくださっていて、原曲とはまた違う重厚な楽曲になっているんです。なにより、森田(成一)さんの歌い方とこの楽曲との相性がとてもいいなと感じました。

ゆうや(Dr.)
ゆうや(Dr.)

◆続けて、同日にリリースされた「微風」についてもお聞きしたいのですが、このタイトルに込めた思いは?

マオ:「微風」はファンのみんなのことを思い浮かべて付けたタイトルです。20年間共に歩んできた中で、“僕にとってみんなはどういう存在なのだろう、バンドにとってどういう存在なのだろう”と振り返った時に、「微風」という言葉が思い浮かんできて。いつも優しくふわっと僕らを見守ってくれる、まるで「微風」のような存在だな、と。歌詞も、これまで20年の中のどこかだけを切り取って書いた楽曲はあるのですが、「微風」ではシドの20年間を描いています。こういった記念すべき年にしかそういう歌詞は書けないんじゃないかなと思い、全てを歌詞に詰め込みました。

◆明希さんはどのような思いで曲を作られたのでしょうか。

明希:一発で覚えてもらえるような、シンプルかつ強いメロディというのを意識して作りました。歌詞がそういうニュアンスのものになるというのは曲を作る段階で話を聞いていたので、僕もイメージを膨らませながら作っていって。歌詞はもう最初の1行だけでウルっときましたね。あの1行だけで、この曲はすごいなと思いました(笑)。

Shinji(Gt.)
Shinji(Gt.)

◆Shinjiさんのギター、ゆうやさんのドラムについて、それぞれ注目してほしい点は?

Shinji:ギターはかなり構築されていて、終始動き回っているのですが、これをライブでやったら楽しいだろうなとレコーディングしながら感じていたので早く演奏したいですね。あと、明希も今言っていたのですが、マオ君がストレートに歌詞を書いてくれていて、僕も1行目から「ありがとう」という感じでした(笑)。

ゆうや:ドラムの音感やフレーズは基本的にポップスなのですが、ところどころにロック要素を入れ込んでいます。丸くなりすぎないように、というのは意識しながらやっているつもりです。

◆明希さん、Shinjiさんが絶賛されている歌詞の1行目は「夢だけ詰め込んだら 何も乗らないような ハイエース」というフレーズです。これは、自分たちがハイエースを運転して全国を回っていた下積みのころを思い出して…?

マオ:はい。本当に、当時はかなり詰め込んでいましたね(笑)。人も定員ギリギリ、機材もパンパンで、狭くて体が痛かったな…と今2人の話を聞きながら思い出していて(笑)。 でも、当時はつらかったことも今となってはこうやって笑い話にできていますし、それも幸せだったなと思います。

マオ(Vo.)
マオ(Vo.)

◆いよいよ、20周年イヤーの締めくくりとなる武道館公演が近づいてきました。1月のファンクラブ限定ライブから始まり、アルバム『海辺』を引っ提げてのツアー、ファンミーティングなど、さまざまな活動を展開されてきた皆さんですが、このアニバーサリーイヤーはどのような1年になりましたか?

マオ:まず、シドらしい20周年の迎え方ができたなと思いました。というのも、元々シドはライブバンドとして始まり、節目節目でライブを通して思い出をたくさん作ってきたので、今年はとにかくみんなの前にたくさん出ていきたいという思いがあって。ホールからライブを始め、ライブハウスツアー、ファンミーティング、そして最後は武道館と、みんなといろんな形で思い出を作れたのでこれで正解だったんじゃないかなと思っていますし、ファンのみんなも喜んでくれているようなので、いろいろなことができて良かったです。

Shinji:ライブはやれてもお客さんは声が出せなかったり、手も上げられなかったり、そういう制限を目の当たりにして、これって当たり前じゃなかったんだな、とあらためて感じました。これまで20年やってきて、ファンのみんなへの感謝の気持ちというのは年々濃くなっているのですが、コロナ禍を経てさらに大切さを実感したといいますか。若い頃は「どんな環境でもライブやれるぜ」みたいな、ひとりよがりでやっていた自分もいたのですが、応援していただけると倍以上頑張れるのだなと、そういうことを強く感じた1年でした。

明希(Ba.)
明希(Ba.)

明希:ライブをたくさんやれたことが大きかったです。3年くらいライブが制限された大変な時期がありましたが、そんな中でもファンのみんなが僕らのことをすごく支えてくれて…。その思いにライブで応えられたらと思っていたので、残すところは武道館だけですが、最後までみんなと思いを共有し、しっかりと20周年イヤーを締めくくれるようにやっていきたいです。

ゆうや:15周年からここまで本当にいろんなことがあったのですが、20周年を迎えた時に世界が少しずつ回復し、ライブができる環境が再び整い始め、お客さんが声を出せるようになったことが僕たちの追い風になった気がしています。昨年はそれぞれが充電をし、万全の状態で当時延期になった「海辺」ツアーをできたので、前向きに捉えるとこのタイミングで良かったって。今となっては、あの3年間というのも決して悪いことだけじゃなかったなと思っています。

◆たくさんのファンの方へ歌を届け続けた1年だったと思いますが、シドのヴォーカリストとしてあらためて感じたことは?

マオ:ヴォーカリストって、キャリアとともに自分だけの歌みたいなものを追求していく人と、「もっとこう歌えたら」とどんどん欲が強くなるタイプの方がいる人がいると思うのですが、僕の場合はまさに後者。やっと手に入れて「これだ」と思っても、あれも欲しいこれも欲しいとどんどん欲しいものが出てくるんです。そういう意味ではまだまだ満足できていないので、これからもヴォーカルを楽しめそうだな、と。20年経っても求めているというのは、ヴォーカルというパートを選んだ自分の選択が間違っていなかったのだなと思います。

Shinji(Gt.)
Shinji(Gt.)

◆Shinjiさんは折々「今が一番楽しい」ということを発言されていますが、20年経ってなおそのモチベーションを保てる原動力はどこにあるのでしょうか。

Shinji:単純にギターが好きだからですかね。ギターの練習ってなかなか退屈なものも多かったりするんですけど、その練習すらも最近すごく楽しいんです。例えば、プロのスポーツ選手の方々というのは日々練習されていると思うのですが、アーティストである僕もそうありたいなと思っていて。それにギターも、練習したことは嘘をつかないんです。なのでライブがより楽しみになりましたし、武道館の日が待ち遠しいですね。

◆さまざまな形のライブを展開してきた皆さんですが、明希さん、ゆうやさんにとってこの1年の中で特に印象に残っているライブやイベントは?

明希:「海辺」のツアーです。本来やるはずだった時期にできなかったのもあり、幕が開いた瞬間のお客さんの表情であったり、久しぶりに聞こえてきた声援というのは印象に深く残っています。

ゆうや:本当に、ライブを通してお客さんの笑顔と声をいっぱいもらえた1年でした。マスクはしていても、それを超えてみんなの心の声までも感じられた気がしていて。そういう意味では、リアルな声を聞けるようになった「海辺」のツアーやファンミーティングは特に思い出深いです。

ゆうや(Dr.)
ゆうや(Dr.)

◆20年以上、時を共にしている皆さんですが、メンバー同士の絆を感じる瞬間は?

マオ:最近シドでラジオを始めたのですが(※文化放送『SID×RADIO=』)、実は4人でラジオをやるのがすごく久しぶりなんです。お仕事ではありますが、話題が脱線した時などは昔を思い出して、「みんな変わってねえな」って(笑)。メンバーがそろっていると安心感がありますし、ラジオをきっかけにいろんなことを思い出せたので、また始められてうれしく思っています。

Shinji:20年も一緒にいるので、もう家族みたいな感覚なんですよね。マオ君も言っていましたが、ラジオをはじめ、ライブやイベントでも、4人で集まって話すと大人になったみんなの変わらない部分が見えて安心できるんです。メンバーがそろっていると、「ただいま」と家に帰ってきた感覚になります。

明希:そうですね。こうして20年一緒にいますが、仕事の時も4人でご飯に行ったりする時も、いまだに会話に困らないんです。4人でいる時の空気感や時間の流れがすごく心地よくて、いい20年間だったなと思いますし、最近はあらためて絆を感じています。

ゆうや:最近はみんなと頻繁に会えるわけではないのもありますが、20年も一緒にいるのに、会う時はなんだか照れてしまうんです(笑)。でも、何も面白いことがなくても、みんなといると顔が笑ってしまって。本当に、このメンバーがそろっている時の安心感というのは、会うたびに他にはないと実感しています。

シド
シド

◆そんな皆さんで迎える、武道館公演への意気込みはいかがですか?

マオ:20周年イヤーの集大成なので、ベスト・オブ・シドを目指してやりたいです。個人的なところで言うと、今までのライブでは100点を取る気持ちで毎回ステージに立っていたのですが、それが果たして自分にとっての100点なのか、お客さんにとっての100点なのかが最近曖昧になっていて。以前は自分にとっての100点に執着していた部分があったのですが、武道館ではファンやスタッフのみんな、そしてメンバーも含めた上での100点を目指して出し切りたいなと思っています。それが自分にとっては100点に満たなくても、全力でやれば結果的に100点だと思うので、そういう意識で自然体で武道館に立ちたいです。

◆最後に、皆さんの今後に向けての思いをお願いします。

マオ:20周年という節目を迎え、ファンのみんなにお祝いしてもらい、僕ら自身も充実した1年を過ごしてきたのですが、“20”というのは年齢同様にただの数字でもあるとも捉えています。年数よりも、メンバーやスタッフ、そしてみんなとどれだけ濃い時間を過ごしてきたかが重要じゃないかな、と。ここからの10年、20年はさらにそういうことを意識しながらみんなと共に歩んでいきたいですし、個々のスキルアップはもちろん、健康管理なども今まで以上に気をつけながら頑張っていきたいです。

明希:僕は、ファンのみんなへ感謝を伝えたいというのと、シドのこれからをしっかりと見せられるような希望とエネルギーに満ちたライブを表現していきたいです。武道館でもみんなに「シドのファンで良かった」と誇りを持ってもらえるようなライブにしたいと思っているので、ぜひ足を運んでいただけたらうれしいです。

Shinji:武道館では、ギタリストとして今まではできなかったことをお見せして、皆さんに「Shinji変わったな」と成長を感じていただける演奏ができたらいいなと思っています。ただ、決してそれを急いでいるわけではなく、今後もコツコツ努力して腕を磨いていきたいなって。あと、今後はもっと面白い人になりたいです(笑)。

ゆうや:Shinji君が面白くなろうとしていることを知って、今ちょっとびっくりしています(笑)。それは置いておいて、21年目からの流れというところで言うと、ドキドキ感と安心感のバランスが大事なのかなと思ったりもするんです。現役で活動しているバンドなので、ファンのみんなにそういうメリハリを楽しんでもらいながら走り続けていかなければ、と。また、シドが20年やっているということは僕ら自身も一緒に年を取っていますし、今後もしっかり活動できるよう、環境作りや健康管理なども含め、目の前のことを1つひとつしっかりとやっていきたいなと思っています。

シド
シド

PROFILE

シド
●シド…2003年結成。マオ(Vo.)、Shinji(Gt.)、明希(Ba.)、ゆうや(Dr.)からなる4人組ロックバンド。12月27日(水)にSID 20th Anniversary GRAND FINAL 「いちばん好きな場所」として、日本武道館でのライブ公演を控える。

リリース情報

Tribute Album『SID Tribute Album -Anime Songs-』
Tribute Album『SID Tribute Album -Anime Songs-』

Tribute Album『SID Tribute Album -Anime Songs-』
2023年12月6日(水)リリース

初回仕様限定盤(CD+BOX仕様):2,860円(税込)

<CD収録内容>
01. モノクロのキス/小野大輔 from 『黒執事』
02. 嘘/朴璐美 from 『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』
03. 乱舞のメロディ/森田成一 from 『BLEACH』
04. ANNIVERSARY/戸松遥 from 『マギ』
05. 螺旋のユメ/村瀬歩 from 『将国のアルタイル』
06. delete/雨宮天 from 『七つの大罪 神々の逆鱗』
07. 慈雨のくちづけ/福山潤 from 『天官賜福』

CD購入URL:https://kmu.lnk.to/Zxl74B
配信まとめURL:https://kmu.lnk.to/TributeAnimesongs

Digital Single『微風』
Digital Single『微風』

Digital Single『微風』
2023年12月6日(水)配信

配信まとめURL:https://kmu.lnk.to/soyokaze

公演情報

SID 20th Anniversary GRAND FINAL 「いちばん好きな場所」
2023年12月27日(水)日本武道館

チケット料金:全席指定7,500円(税込)
※未就学児童入場不可

詳細:https://sid-web.info/event/350157

WEB

SID 20th Anniversary Special Site:https://www.sid20th.jp/
シド オフィシャルサイト:http://sid-web.info/
シド オフィシャルX:https://twitter.com/sid_staff
シド オフィシャルInstagram:https://www.instagram.com/sid_official_jp
シド オフィシャルWeibo:https://www.weibo.com/sidofficial

●text/片岡聡恵

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