お笑いコンビ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、他誌で始まった連載の話。(TVLIFE 2024年5月22日発売号より転載)
別の雑誌の話をしても許してくれるのがTV LIFE
僕がここ何年もネクストブレイクたる所以のひとつに子供からの支持がなさすぎるというのがあると思う。ブレイクしている人たちを見ているとキッズの心を掴んで離さない人たちが多い。僕の芸風的にもそういった層の人気を博すのはなかなか難しいかなと思っていたところ、なんと最近大きなチャンスが巡ってきたのである。
4月から『ジュニアエラ』という小中学生向けの親子で読めるニュース雑誌での連載が決まった。企画の内容は子供たちに大喜利の楽しさを知ってもらうというもので、毎月みんなから届いた大喜利の答えに僕がツッコミを入れていくというもの。おそらく子供たちが初めて挑戦するであろう大喜利を楽しいと思ってもらうためにはツッコミの存在はかなり重要だ。下手したらその子が今後お笑いそのものに抱く印象すら左右するという重責を担うつもりで臨む所存だ。
連載が始まったのが4月からなのだが、誌面で回答を募集する関係で時差が生じるため、初めの数ヶ月は子供たちではなく編集の男性の方がその指針となるような答えを代わりに出してくれることに。先月のお題が『いつも怖いお母さんがニコニコ。なぜ?』というもので、一例としていただいた答えが『スーパーに買い物に行ったらトマトが10円安かった』というとても子供らしい素敵なもの。それに対する僕のツッコミが
「ささやかでかわいい!たった10円?って思う人もいるかもしれないけど、節約してる人にとってはこれがとても嬉しいんだ!お母さんのこの努力を知ったらいつものお料理もより感謝しておいしく食べられるね!」
…果たしてこれはツッコミなのだろうか?お年玉こそくれるけどうだうだうるさい親戚みたいになっていないだろうか?お笑いってこんなめんどくさいやつが絡んでくるのかと辟易させてしまっていないだろうか?初めて子供向けツッコミをする自分に戸惑いを隠せずにいたが、もしかしたらブレイクに足りなかったのはこの一面だったのかもしれない。蓋を開ければおじさんがおじさんにツッコんでいるだけなのだが、これをきっかけになにかが大きく変わる予感を禁じ得ない。薄暗かった視界に光が差した。
そんなジュニアエラの連載を書き終えた次の仕事が『マルコポロリ!』というゴリゴリのお笑い番組で、収録の中盤までジュニアエラ脳から切り替えられずにしばらくフォームを崩したままひな壇でもがき苦しんだ。どうやら光が差した視界の先に見えたのは、もうしばらく続きそうなネクストブレイクの道だった。
森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。