お笑いコンビ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、Netflix の「ボーイフレンド」の話。(TVLIFE 2024年7月31日発売号より転載)
どうせ大層な人間じゃないんだから
先日Netflixで全世界で公開された日本の恋愛リアリティショー「ボーイフレンド」はご存知だろうか。こちら出演者が全員男性という今までの恋リアにはなかったコンセプトの作品で、同ジャンルがお好きな方はもちろん、僕のようなビギナーでも楽しめる見応えたっぷりの内容となっている。
なぜ突然この話をしたかというと、この前「ボーイフレンド」を思う存分語るというお仕事をさせてもらったのである。これだけ聞くとご褒美のようなオファーだが、内心は喜びよりも「自分なんかで大丈夫なのだろうか」という不安の方が大きかった。というのも、これまでにいくつか恋愛リアリティショーを観て面白いと思ったことはあってもスタジオメンバーのみなさんが仰るような鋭い意見や感想などは思い浮かんだことがないからだ。人の恋愛に自分なりの見解を言えるほど経験も積んでいないので下手したら「マジおもしろい!最高!」と、映画のCMみたいなことしか言えずに終わるかもという懸念があった。
こういった自らの思考を発言することに対して苦手意識があるということがここ数年で明確になった気がする。今の露出はMCやツッコミとしての役割が多いため、場を円滑に進めたり大幅に逸れた発言を訂正して話を戻したりと、意外と自分の考えを発表しなくてもなんとかなるケースがほとんどだ。しかしそれ以外となるとやはり「自分はこう思う」という芯があるに越したことはない。それはわかっているのにも関わらず結局いつも「まあ人それぞれだもんな」という元も子もない着地をしてしまい、声を大にして言いたいことがなくなっていく。
そんな中迎えた収録当日。初めてお邪魔するNetflixのオフィス。入り口から少し歩くとNetflixオリジナル作品の数々がモチーフとなった壁紙に出迎えられ否が応でもテンションを上がる。楽屋に入ると、見るからに座り心地の良さそうなソファと見慣れたロゴが印刷されたNetflixオリジナルクッション。その前にあるテーブルにはNetflixオリジナルウォーターも置かれており、Netflixヘビーユーザーの僕からしたらワクワクする要素が盛りだくさんだった。
まるで自分がNetflix側の人間になったかのように楽屋で寛いでいるとスタッフさんが打ち合わせをしにいらっしゃった。そこでようやく自分がこの仕事に対して不安を抱いていたことを思い出し、「僕あまり良い意見とか言えないかもしれないです」と姑息にもハードルを下げるようなことを吐露すると
「意見なんていらないですよ。森本さんが楽しんでくれたらそれで大丈夫です」
と言われてハッとした。たしかに他の仕事は楽しみながらやってるのに、今日はなぜか楽しむという選択肢がなくなってしまっていた。それから肩の力がスッと抜け、これから演者の皆さんと楽しく「ボーイフレンド」について語ることができればそれでいいやというマインドになれた。それが功を奏し、本番ではもちろん大した意見こそ言わないものの、作品について楽しく喋れたから自分の中では良しとする。
今回のお仕事のおかげでこびりついていた苦手意識が少し薄れたかもしれない。こうして手に入れたこの自信もまた、Netflixオリジナルだ。
森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。
※Netflixリアリティシリーズ「ボーイフレンド」Netflixにて世界独占配信中