永田裕志×てらそままさきインタビュー「タイガーマスクに夢をもらってプロレスラーになった」『タイガーマスクW』対談

特集・インタビュー
2016年11月09日

 1969年に放送された国民的アニメ「タイガーマスク」のその後を描いた「タイガーマスクW」。新日本プロレスの実在のレスラーが多数登場する本作で、選手兼フロントとして重要な役割となる永田裕志選手と、その声を担当するてらそままさきさんにインタビュー。初代「タイガーマスク」を知る世代の2人が、最新作「タイガーマスクW」の魅力を語ります!

息子が「お父さん似てる似てる」って(笑)(永田)

永田裕志×てらそままさきインタビュー「タイガーマスクW」対談

◆47年ぶりにアニメ「タイガーマスク」が復活した本作に出演される感想をお聞かせください

てらそま:47年前に最初にオンエアされたときは小学校1年生くらい、7、8歳でした。当時まさに見させていただいていて、「タイガーマスク」の世界観を存分に受けて育ったので、その作品で自分が声を出して人物に魂を与えていくことができるというのは大変光栄です。

◆永田さんの声を担当されることについてはいかがですか?

てらそま:実際に現役でバリバリ活躍されている方なので、どうしようかな…とは思いましたけど、やれと言われたらやるぞ!と。自分がやることによって、より永田さんという人が息づいてくれればいいかなと。アニメーションの中での永田さんの息づかせ方というんですかね、それができればうれしいです。

◆永田さんは本作に登場すると知ったときはいかがでしたか?

永田:最初はびっくりしましたが、やっぱりうれしかったですね。うちはいっぱい選手がいますので。
こんな大役で永田裕志が出てくるっていうのは驚きでしたし、素直にうれしかったです。

◆放送はご覧になりましたか?

永田:見ました。顔を見て特徴をとらえてるなって思いました。うちの息子と見たんですが、開口一番「お父さん似てる似てる」って(笑)。
アニメの中ではどういう役どころになっていくんですかね?
ファンからは、社長なのかとか、渉外担当なのかとか、いろんな声があるんですけど…まだレスラーは辞めてないんですよね?(笑)。

全員:爆笑

永田:記者の人が「永田選手」って呼んでるからまだ辞めてはいないですよね?

てらそま:こないだのアフレコでリングに立って実際に戦っていますので、選手、フロント、解説をやっていますね。

永田:本当に重要なポジションをいただけてうれしいです。

アニメの永田さんにどう命を与えていくかを一番に考えています(てらそま)

◆お2人はお会いになるのは今日が初めてですか?

てらそま:初めてです。

永田:今回の取材のお話をいただいて、お会いできるのを楽しみにしていたんです。お会いできて光栄です。

てらそま:この胸板の厚さに驚きましたね。僕もこの年にしてはトレーニングはしてるほうなんですけど、この胸板はちょっと考えられないですね(笑)。こうじゃないとリングには立てないんですね。
僕もとても光栄ですし、こんなことがないとお会いできないですよね。今日は記念になりました(笑)。

永田:うれしいのひと言です(笑)。

◆てらそまさんは今回のように実在の人物に声を当てるときと、キャラクターに声を当てるときで違いはありますか?

てらそま:物をつくるっていうことからすると、基本的に違いはないんです。でも、永田さんが現実の世界で生きていらっしゃるというのはあるので、永田さんがどういうふうに生きていらっしゃるのかは把握しながら、このアニメの世界に入ったときにはおいしいところでどういうふうに使えるかなというのは考えますね。
永田さんのしゃべり方などにただ似せようというふうにはあまり思わないです。僕がやるということで、アニメの永田さんにどうやって命を与えていくかということをまず一番に考えています。描いている魂は同じだと思うので、そこには沿っていきたいとは思います。

◆永田さんの試合の映像などを参考にされたりはしましたか?

てらそま:もちろん!めちゃくちゃ検索させていただきました(笑)。

永田:(笑)。

てらそま:「ゼァ!」もあんまり乱発したくないんですよ。普通の会話でしょっちゅう言うんじゃなくて、ここ!っていうときに使わせていただいています。

◆そんなてらそまさんのお話を聞いて、永田さんはいかがですか?

永田:自分をどう演じてくれるんだろうっていうのが楽しみです。同じっていうのはありえないので、アニメではどういう永田裕志になるのか。
声を聴いたときに、第一印象で「俺、貫禄あるいい声してるな」って思いましたし(笑)、自分もどういう永田裕志が出てくるのか楽しみにしています。
てらそまさんに「タイガーマスクW」の永田裕志を面白く、大きくしてほしいですね

僕が逆にそっちに流れるのもありかなって(笑)。

てらそま:(笑)。永田さんは他の作品で声の出演で出ていらっしゃるでしょ?

永田:何回かはありましたね。

てらそま:芝居にも出ていらっしゃいますよね?

永田:友人の芝居に出たことがあります。でもだいたい永田裕志の役ですね(笑)。昔、車田正美先生の「リングにかけろ」という作品のアニメで、登場人物・石松の幼なじみの永田裕志ってそのまんまの役で出たことがあって。レスリングの選手なのに、なぜかプロレス技をかけちゃうっていう(笑)。

◆永田さんは素で出てもアニメのキャラクターに負けない個性がありますもんね。

てらそま:本当にそうですよ。

永田:いやいや(笑)。

てらそま:アニメで言うと、コミカル要素もあって、ご本人が持っていらっしゃるそういう要素を拡大するところも多々あるので、そこはちょっと怒らないでいただいて(笑)。

永田:怒るなんてとんでもない(笑)。どんどん永田裕志の幅を広げてほしいです。
僕が想像もつかないような、いろんな永田裕志を演じていただきたいです。

◆アニメをきっかけに永田さんの幅も広がっていく可能性も?

永田:その可能性はありますね。アニメを通じて新たな永田裕志が生まれて、リングでも出るかもしれません。ちょっとしたリボーンですね(笑)。

◆アニメには棚橋弘至選手、オカダ・カズチカ選手など、新日本プロレスの選手がたくさん出ていますね。

永田:みんな特徴をとらえてますよね。オカダとは敵対しているので、ああやって普通にしゃべるっていうのはあり得ないんです。そこがフィクションの面白さですよね。でも、僕がフロントに入っても現役を続けていくんだったら、こういうことはあり得るんだろうなって思いながら見ていました。

◆劇中のプロレスシーンがリアルで、制作スタッフのプロレス愛を感じたんですが、永田さんから見ていかがですか?

永田:第2話で、タイガーマスクがロコモーション式のジャーマンを出すんですが、それを実際にやる人がいたんです。で、2代目タイガーマスクの三沢光晴さんがローリングジャーマンみたいなのをやったことがあって、そういうのを思い出しましたね。
あと、スピアーっていう比較的新しい技があって、それをタイガーマスクのタッグパートナー(若松龍)がやっていて、実際の技も扱ってくれてるなって。どうしてもそういうふうに見ちゃいますね(笑)。

“人間ってどういうものなのか?”を
プロレスの世界を借りて表現している(てらそま)

永田裕志×てらそままさきインタビュー「タイガーマスクW」対談

◆最初の「タイガーマスク」と今回の「タイガーマスクW」、それぞれどんなところに魅力があると思われますか?

永田:最初の「タイガーマスク」って時代背景もあったんでしょうけど、すごく泣かせるんですよね。寂しさからの脱却、とにかく夢を持ってという。あれは高度成長期のアニメだったからですかね。
そういう世の中の背景が見えるところに僕らも惹かれたのかなって、今あらためて思います。
今度の「タイガーマスクW」は、似たような“復讐”というテーマが見える中で、どうやって今の時代と連動していくのかなっていうのを楽しみにしています。

◆てらそまさんはいかがですか?

てらそま:“風俗”と“普遍”というものが必ずあると思うんです。風俗だけ流れてしまうと、どうしてもそのときだけということになる。
こうやって繰り返し作られる作品というのは、その普遍性というのをどうやって作品の中で表現しているのか。それは“人間ってどういうものなのか?”っていうことだと思うんです。
「タイガーマスク」だったら、それをプロレスの世界を借りながら表現している。
また、前回のものが持つ陰影と今の状況とをどうリンクさせるかというのがうまくいくと、平成のタイガーマスクもよかったね、ということになると思います。

永田:47年前になるんですね。僕は生まれてまだ1歳のころです。再放送で見てたんですね。

てらそま:夕方にずっとやってましたからね。

永田:その40数年前のものと連動しているというのがうれしいですよね。大人も楽しめるし、子供も新たに見られる。幅広い層の方々に楽しんでもらえるアニメですよね。

てらそま:素晴らしいコンテンツですよ。

◆「タイガーマスクW」をきっかけにプロレス界もさらに盛り上がりますね。

永田:そうですね。それを狙ってると思います。うちの親会社は(笑)。

全員:爆笑

永田:僕も「タイガーマスク」を見ることでプロレスを知ったんです。当時の「タイガーマスク」にジャイアント馬場さん、アントニオ猪木さんが出ていて、実際にいるんだ!っていうのを知って、より「タイガーマスク」が好きになりました。
アニメからプロレスに興味を持つっていう人もいると思うんです。
僕がプロレスに興味を持つようになったのは、「タイガーマスク」もそうですし、「キン肉マン」とか、プロレスじゃないですけど「リングにかけろ」とかがきっかけ。
僕自身がそういうものから実際のスポーツを好きになったので、プロレスをテレビなり会場なりで見て好きになるんじゃなくて、アニメから好きになる人も多いはず。そういうかたちでプロレスの世界にもどんどん入っていってほしいですね。

『タイガーマスク』に夢をもらってプロレスラーになった(永田)

◆てらそまさん、永田さんのプロレスシーンの収録はいかがでしたか?

てらそま:どうしようかな…って(笑)。そこで使ったかな「ゼァ!」は。できるだけ戦っているときに使いたいなって封印してたんですけど。

◆それは楽しみです!お2人とも長いキャリアをお持ちですが、長く続ける秘訣はありますか?

永田:好きじゃなきゃできないですよね。長くやっていると、好きだっていうのを再認識するタイミングが何度かあるんです。
これまでケガとか病気とかで、“もしかしたらプロレスできなくなるのかな”っていうときが何回かありました。その都度、あらためて自分はプロレスが好きなんだなって感じました。
また、プロに入ってもレスリングに携わる機会があって、昔に戻ってちびっこに教えたり、最近ではナショナルチームの練習を見に行ったりして、ここは進化してすごいなとかそういうところにのめり込んでいっちゃう自分がいて。やっぱりレスリングとプロレスって自分の人生だったんだなって感じます。

てらそま:辞めないことでしょう。辞めないということは、結局好きだ、ということですよね。
今回も永田さんにお会いできたり、こういう作品をやらせてもらえたりしましたが、自分がどう転がっていくか、先なんて分からないんですよ。
若い人たちにいつも言うのは、自分の5年先、10年先なんて分からないんだから、もっと希望を持とうよってこと。
そして、希望を持つために、今何をやるかが大事。
だって、誰が自分に期待します? 自分だけですよ。
だから期待してあげなさい、そのためにはやることはやっていかなきゃだめだよって言うんですが、それは僕も一緒。仕事場に出たら若かろうが年をとっていようが一緒ですから、そういうスタンスでいたいなと思います。
だからやっぱり“好きだから”ですよ。あとは、いろんなことに執念深いかどうか(笑)。

◆それでは最後に本作の見どころとメッセージをお願いします。

てらそま:見どころは、魂、ロックだと思います。それを声優陣、制作陣がこの作品にすべてかけられるか。それをどう見ていただけるかどうかです。そのために頑張ってやらせていただきます。楽しみにしてほしいと思います。

永田:この「タイガーマスクW」を通じて夢を持つことの大切さとか、夢を追いかける気持ちを持ってもらいたいです。そういう部分では、すごく見どころのあるアニメだと思います。
これから何十年も人生を歩んでいく子供たちに大きな夢を持ってもらいたい。
僕は「タイガーマスク」に夢をもらってプロレスラーになりました。この作品は、プロレスラーになる、ならないということじゃなくて、もっと大きなものを得られると思うんです。そこを見て、ぜひ吸収してほしいです。

 

■PROFILE

永田裕志
●ながた・ゆうじ…1968年4月24日生まれ。千葉県出身。
1992年、レスリング全日本選手権優勝後、新日本プロレスに入門。2001年8月の「G1 CLIMAX」で初優勝を果たす。以降、さまざまなタイトルを獲得し、人気選手として活躍。2017年にデビュー25周年を迎える。

てらそままさき
●てらそま・まさき…1962年5月8日生まれ。大阪府出身。
1984年、『Wの悲劇』で映画デビューし、数々の映画、ドラマに出演。
1987年、『仮面ライダーBLACK』で声優デビュー。以降、俳優、声優として幅広いジャンルで活躍中。

■放送情報

「タイガーマスクW」東映アニメーション創立60周年記念作品
『タイガーマスクW』
テレビ朝日
毎週土曜 深夜2・45放送

<スタッフ>
シリーズディレクター:小村敏明
シリーズ構成:千葉克彦
キャラクターデザイン:香川久
アクション作画監督:羽山淳一

<キャスト>
八代拓、梅原裕一郎、三森すずこ、森田成一、鈴村健一 ほか

主題歌/「行けタイガーマスク」湘南乃風
エンディング曲/「KING OF THE WILD」湘南乃風

公式サイト:http://www.toei-anim.co.jp/tv/tigermask_w/

©梶原一騎・辻なおき/講談社・テレビ朝日・東映アニメーション

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