1969年に放送された国民的アニメ「タイガーマスク」のその後を描いた「タイガーマスクW」。新日本プロレスの実在のレスラーが多数登場する本作で、タイガーマスクと共闘することになるオカダ・カズチカ選手と、その声を担当する森田成一さんにインタビュー。2人のプロレス愛あふれるトークの模様をどうぞ!
◆47年ぶりにアニメ「タイガーマスク」が復活した本作に出演される感想をお聞かせください。オカダさんは世代的にアニメはご覧になっていないですか?
オカダ:そうですね。アニメではなく、実際のリング上のタイガーマスクとして見ていました。あとは漫画を少し読んだくらいですね。
◆森田さんはいかがですか?
森田:僕は再放送で見ていました。子供のころはヒーローでしたから。
◆その作品で声を当てることになりました。
森田:まさかタイガーマスクが復活するとは思っていなかったので、作品に参加できて非常にうれしく思っています。
◆オカダさんは本人役で出ることを知ったときはいかがでしたか?
オカダ:びっくりしました。みんなが子供のころに見ていたというのを聞いていたので。僕だけじゃなく、新日本プロレスの選手がドーンと出るというのにもびっくりしました。
僕だけでいいんですけどね(笑)。
全員:爆笑
森田:それじゃアニメにならない(笑)。
◆オカダさんはキャラクターになった自分を見ていかがですか?
オカダ:かっこよくしてもらって満足しています。体もすごくかっこよくて…。こんなにいい体してないのに(笑)。
◆いやいやいや。
オカダ:体がかっこよくて、森田さんに声をやってもらえて、満足しています。
◆アニメでは、プロレスの技もきちんと描写されているということが話題になっています。
森田:制作陣にプロレスが大好きなスタッフが入っているので、こだわりは強いですね。
映像を見ていると、ここの動きはかなりこだわって作ったなとか、普通だとここまで表現しないだろうっていうところが表現されていたりするんです。
たとえば、タイガーマスクがジャーマンスープレックスをするシーンがあるんですけど、そこでかかとが上がっているんです。
これは、たぶん初代タイガーマスクの佐山聡さんのジャーマンなんですね。非常にマニアックな話なんですけど(笑)。
◆めちゃめちゃお詳しいんですね。
森田:プロレス大好きなんです(笑)。
一番美しい弧を描くのが佐山さんのジャーマンだったんです。佐山さんはかかとがピーンと浮くんですね。そういうところも描き込みがされている。
それぞれのレスラーの動き、実際にいるレスラーに対してはアニメーターさんたちが研究をしてしっかり描き込んでいるので、そのあたりを見ていただきたいですね。
オカダ:レスラーが見ても、細かいところもちゃんとアニメになってるんだなって思えるくらいしっかりやってもらっていますね。
◆森田さんは、オカダさんを演じる上で意識したことはありますか?
森田:実際の人物を演じることって、役者をやっていればあることですよね。例えば坂本竜馬とか織田信長とか、故人となっている人を演じることはあるんです。
そうではなくて、今まさに生きている人をやるのは初めてで。しかもリング上に立っていて、多くのファンの方もいて、ものすごく有名選手だとなってくると、へたなことをやったら完全なうそになってしまう。役をもらったときの悩みがそこでした。
オカダさんのプロレスは見ていたので、ファイトスタイルなどは頭に入っているんですが、普段どうしゃべっているのかまでは分からないわけです。でもアニメだから当然そういうシーンも出てくる。
実際にお会いしていろいろお話をして、オカダさんの人物像が自分の中で生まれたんですけど、だからといって僕が感じている印象だけで勝手に演じるわけにはいきません。アニメの制作陣が作ったキャラクターとしてのオカダ・カズチカが、実際に僕が肌感で感じたオカダさんとはもちろんちょっと違うわけですから。その真ん中に立って自分がどう整合性をとっていくのか、今まさにそういうことをやっている最中です。
そこが難しさであるし、今も悩んでいるところです。
この物語の流れに沿って作り上げていければいいなと思っています。
◆オカダさんがリングで戦っているシーンの収録はありましたか?
森田:はい、やっています。
◆実際のオカダさんのドロップキックなんて、まさに漫画じゃん!っていうレベルですが、演じる難しさなどはありましたか?
森田:信じられないドロップキックをするんですよね、オカダさん(笑)。
ファイトシーンですが、普通は1人ひとり別々に収録するんです。音が混じるといけないから。
ところが「タイガーマスクW」はファイトシーンだけみんなで一度に録るんです。
オカダ:へぇー!
森田:物語シーンを別に録って、「じゃあファイトシーンやりまーす。ファイッ!」って(笑)。
全員:爆笑
森田:ほんっとにリアルに1回で録るんですよ。だから僕たちも生で戦っているような感じで、ファイトシーンの収録のときはスタジオの熱が一気にグっと上がって。
オカダ:みんな気合が入って。
森田:マイク前に男性声優4人が並んでいて、タッグマッチのときは赤コーナー、青コーナーでチームに分かれて(笑)。そういうときは特に燃えて録れるんです。
◆より臨場感が出そうですよね。
森田:そうですね、流れで撮ってもらうのが一番いいんです。
技をかけたときに、相手が技をかけられたリアクションをとってくれると、自分も次の技につなげやすい。
ファイトシーンはその臨場感が出ていると思います。
オカダ:そのうち、本当にチョップとかしちゃったりして。ちょっと臨場感足りないなって(笑)。
全員:爆笑
◆実際の試合よりも声を上げたりするようなことは?
森田:そこが難しいところなんです。キャラクター的に声を上げてもおかしくないものであればできるんですけど、オカダさんに関しては、実際は声を発さない。
アニメの中では声を入れないと変になってしまう部分があるから、そこはアニメだけのオリジナルということである程度声を入れさせてもらっています。
でも、普通の戦闘シーンのある作品と比べると、かなり少ないですね。抑え気味にやっています。
ただ、“強さ”を見せようとすると、無言のほうがかっこよかったりするので、ちょっとだけしか声を入れないんだけど、そこに逆に強さを感じるようなやり方をしようと心がけています。
オカダさんには、「なるべく声を出してください」ってお願いしたんですけど(笑)。
オカダ:次の試合からどんどん声を出していくようになるかも(笑)。
全員:爆笑
◆アニメに寄せていっちゃう(笑)。
オカダ:僕のほうから寄せちゃう(笑)。
森田:(笑)。寄せすぎて声をいっぱい出されちゃうと、僕が収録のときにいっぱい声を出さなきゃいけなくなっちゃうかもしれないですね。「すいません、もうちょっと黙ってもらっていいですか?」って逆にお願いすることになっちゃうかも(笑)。
◆本作には、新日本プロレスの選手がたくさん出ています。
オカダ:僕がいるチームCHAOS(ケイオス)からは僕と石井(智宏)さんが少し出ましたが、どんどん出てきたらいろいろと盛り上がっていくんじゃないかなと思います。
◆まだ出ていないけどこの人が出てきたらという選手はいますか?個人的にはオカダさんのつながりで天龍源一郎さんとか出てこないかなって思っているんですが…。
オカダ:天龍さんが出てきたら僕が声をやりますよ。
(天龍の物まねで)「あんちゃん」
森田:できてる!これ、声かかりますよ(笑)。
オカダ:僕、天龍さんとのシーンを1人2役で再現できるんですよ。天龍さんを僕がやって、僕は自分をやれるので(笑)。
(天龍の物まねで)「昭和のプロレスを味わう最後のチャンスだぞ」
(オカダの地声で)「天龍さんお疲れ様でした」って。
森田:じゃ、その回は僕いないですね(笑)。
全員:爆笑
森田:それはちょっと見たいですね。たまらないな。
(前のめりで)ほかに物まねできるレスラーはいないですか?
オカダ:ほかの人ですか?最近の人って物まねしやすくないですよね。
(長州力の物まねで)「長州さんくらいじゃないッスカ」
全員:!!!
オカダ:昔、長州さんに超真面目なトーンで(長州力の物まねで)「オカダ、俺滑舌悪いか?」って言われて。
僕は「いや、滑舌悪くないと思います」って(笑)。
全員:爆笑
◆アニメに登場するレスラーたちはかなりすごいトレーニングを積んでいますが、ご覧になっていかがでしたか。
オカダ:僕と同じ練習をしてるなって(笑)。
全員:爆笑
森田:まじっすか!熊と戦う!?(笑)。
オカダ:スクワットを1000回して倒れ込むシーンがあったじゃないですか。そんなんで喜んでんじゃねーよとは思いました。
1000回で倒れ込んでたら、次の練習に行く前に先輩に怒られてますね。
1000回なんてできて当たり前なので。
僕は1000回やった後でほかのスクワットをやったりしてましたからね。そのあと平気でスパーリングしたり。
森田:へぇー!すっげー。
(このあと、新日本のトレーニングに興味津々の森田がオカダを質問ぜめに)
◆新日本プロレスがすごい盛り上がりを見せていますが、その理由はどこにあると思いますか?
オカダ:僕じゃないですかね。
森田:おぉ!
◆確かに!そのとおりですね。
オカダ:僕が盛り上げたという自負はあります。今、プロレスが盛り上がっているから見てみようって会場に来てくれて僕のファンになっても、半年くらいすると全然違う人のTシャツを着て座ってたりするんですけどね(笑)。
森田:切ない(笑)
全員:爆笑
オカダ:そのくらい、いろんな魅力をもった選手がいるっていうことなんです。
今は空中殺法をする外国人選手がいたり、柴田(勝頼)さんや永田(裕志)さんみたいにバチバチやる人がいたり、僕みたいなオーソドックスなプロレスをする人がいたりと、いろんな試合が見られるんです。
テレビでも人気の真壁(刀義)さんや棚橋(弘至)さんもいますし。
いろんな選手がいるからこそ、絶対に好きな選手が1人は見つかるんじゃないかというのはあります。
◆それでは最後に視聴者の方、ファンの方にメッセージをお願いします。
森田:今日オカダさんのお話に聞き入ってしまったんですけど、やっぱりプロレスは深い。
バラエティに富んだレスラーの人たちがいますよね。アニメの世界もキャラクター数が増えてきていて、1つの作品に何十キャラ、何百キャラが登場するような状況になっている。アニメのファンの方、プロレスに縁遠い人たちも実際にプロレスを見てもらうと、「私この人が好き」「俺あの人が好き」っていうような、今までと違うチョイスの仕方というのもできると思います。
そういう目を持って「タイガーマスクW」を見てもらえたら、より一層楽しめると思います。
そして楽しさが分かってきたら、ぜひ昔のプロレスを見てもらって、ここの足の角度が!みたいなところまで見ていくと、さらにプロレスは面白くなってきます。
「タイガーマスクW」はそういうところもしっかり描きこまれているので、そこも見てもらえたら、絶対に大好きになってもらえると思います。
オカダ:僕はやっぱりプロレスを見てもらいたいというのが第一にあります。アニメが好きな方にもプロレスを見てもらって、現実にもいろんなバラエティに富んだ選手がいて、絶対1人くらいは好きな選手が見つかると思いますので応援してもらって、プロレスを楽しんでもらいたいです。
僕は森田さんにお会いして『ティーダ(ゲーム「ファイナルファンタジーⅩ」で森田が演じたキャラ)の声の人だ!』となりましたが(笑)、それが『オカダの声の人だ!』ってなるくらい、森田さんにアニメのオカダ・カズチカを大きくしてもらいたいなと思います。
森田:非常にプレッシャーを感じますけど(笑)、うれしいお言葉です。
オカダ:それくらい「タイガーマスクW」も、僕も、新日本プロレスも、そしてプロレス界も盛り上がっていけたらなと思います。
■PROFILE
オカダ・カズチカ
●おかだ・かずちか…1987年11月8日生まれ。愛知県出身。CHAOS所属。
2004年、16歳の時にメキシコ・アレナ・コリセオにおけるネグロ・ナバーロ戦でデビュー。
2012年、第57代IWGP王者に輝く。同年、『G1 CLIMAX』に初出場し、最年少優勝記録を更新した。
現在、第65代IWGPヘビー級王者。
2017年1月4日に、ケニー・オメガとのIWGPヘビー級選手権試合が控える。
森田成一
●もりた・まさかず…1972年10月21日生まれ。東京都出身。
俳優として活躍する中、2001年に声優デビュー。
その後は声優、俳優、ナレーターと幅広く活躍。
「タイガーマスクW」では、オカダ・カズチカの声を演じる。
■放送情報
東映アニメーション創立60周年記念作品
『タイガーマスクW』
テレビ朝日
毎週土曜 深夜2・45放送
<スタッフ>
シリーズディレクター:小村敏明
シリーズ構成:千葉克彦
キャラクターデザイン:香川久
アクション作画監督:羽山淳一
<キャスト>
八代拓、梅原裕一郎、三森すずこ、森田成一、鈴村健一 ほか
主題歌/「行けタイガーマスク」湘南乃風
エンディング曲/「KING OF THE WILD」湘南乃風
公式サイト:http://www.toei-anim.co.jp/tv/tigermask_w/
©梶原一騎・辻なおき/講談社・テレビ朝日・東映アニメーション