

「第5回アニメ化してほしいマンガランキング」1位受賞、「LINEマンガ」にて2億2000万ビューを突破(2024年11月時点)した話題作『先輩はおとこのこ』。2024年にTVアニメ化された本作の劇場版『映画 先輩はおとこのこ あめのち晴れ』が、2025年2月14日より全国で公開。映画では、テレビシリーズのその後から物語の完結までが描かれる。
本稿では、原作・アニメ・映画を見た筆者M.TOKUが本作の推しポイントをレビュー。物語・映像・芝居と音楽それぞれの面から、作品の魅力を語る。
まことたちの言葉が、誰かの心の支えるになる
本作は、男だけど可愛いものが大好きで、女の子の姿で高校生活を送る“男の娘”・花岡まこと、まことに恋をする元気いっぱいの後輩・蒼井 咲、そしてまことを近くで見守り続け、彼に想いを寄せる幼馴染の大我竜二らの青春模様を中心に描かれている。
見ているだけで楽しくなる3人の日常のやりとり、一方で繊細な人間模様の描き方はもちろん、筆者は誰かの心に寄り添う言葉の数々も本作の魅力だと感じている。
例えば、アニメ第3話で咲の言葉を受けてまことが決意して放った「本当の僕をあきらめたくない」。自分の意思を貫いて、安定を捨てて選んだフリーランスという今の仕事。その選択が間違っていたのではないだろうかと悩むこともあるが、まことのこの言葉は、そんな迷いが生じたときの筆者の心を奮い立たせてくれた。まことは自分の好きを諦めないことにしたが、周りへの気遣いは忘れず、強要もしていない。これは、まことの優しさでありながらも、「自分勝手」と「自分を貫く」ことの境界線でもあるように思えた。


また、第6話でバスケ部に誘われたものの、進路のことや自分が入部することで迷惑をかけないかと迷うまことに、咲がさりげなく言った「それって……どっちかじゃないとダメなんですか?」という言葉もグッとくる。どっちかを選ぶのではなく、どちらも選ぶという選択。自分自身、貪欲にどちらも選ぶことで多くを学び、限界を知ってきた人生だと感じており、この言葉には共感を覚えた。


そして、第9話で竜二がまことの様子を見て「悪かったな。嫌な思いをさせて」「まこと、ありがとう」と別れを告げるシーン。竜二、いい奴過ぎないか? 自分には到底できない、竜二の相手を思いやる単純にカッコいい言動に痺れた。
そんな彼らが他者とのコミュニケーションによって成長・変化した姿が、映画では見られる。個人的には映画の中で咲が言った「それでも私にとって特別? 私にとって本物?」という言葉は、自分にとっての「特別」とは何か、「普通」って何だろうと改めて考えるきっかけとなった。答えをもらえるのではなく、この「考えるきっかけになる」ということ自体が、本作の魅力のひとつでもあると個人的には感じている。


“女の子になりたい”ではなく“かわいいものが好き”ということが芝居から伝わってくる
そんな繊細な物語を美しく彩る映像と音楽。映像面では、一枚絵のような美しい描写とコミカルなシーンが入り混じっており、その落差が面白く、印象的だ。音楽面では、シリアスなシーンでは、木管楽器などを中心に構成して音数も抑えめにしていて、一方の楽しいシーンでは賑やかなサウンドになっているため、物語にさらに没入させてもらえる。
各キャラクターに命を吹き込む声優陣の芝居もまた魅力的。まこと役の梅田修一朗さんの芝居・声からは、“女の子になりたい”のではなく、あくまで“かわいいものが好き”というまことらしさが伝わってくる。咲役の関根明良さんは、基本的に天真爛漫ながらも、特にアニメ中盤以降は咲の心の闇の部分が垣間見えるような芝居が言葉のひとつ、ひとつに込められているように感じた。そして、竜二役の内田雄馬さんの声には、思春期の悩みを抱える高校生感と、いい奴感が共存しているように感じて、より竜二を応援したくなった。
今回は筆者の推しポイントを紹介したが、本作の魅力はまだまだある。筆者とは違うシーン・セリフで共感した・感動したという方もいるだろう。以前本誌で宣伝大使の宮田俊哉さんにインタビューした際、「子供たちと逃げずに向き合う親世代の姿が、自分もそういう年代になったからかすごく刺さりました」とおっしゃっていたが、確かに、そういう目線で作品を見たらまた違った感情が生まれると、改めて発見になった。
楽しい・ドキドキする・切ないだけではなく、見る人によっては心が痛くなるかもしれない本作。だからこそ、誰かの支えになる、拠りどころになる言葉が見つかるのではないだろうか。ぜひ劇場に足を運んで、本作の“優しさ”や言葉の数々に触れてみて欲しい。


映画情報
映画 先輩はおとこのこ あめのち晴れ
全国で公開中
【STAFF&CAST】
原作:『先輩はおとこのこ』ぽむ(「LINEマンガ」連載)
監督:柳伸亮
アニメーション制作:project No.9
声の出演:梅田修一朗、関根明良、内田雄馬、加隈亜衣、葵あずさ、梶原岳人、和久野愛佳、早瀬雪未、田中正彦、さとうあい、村井雄治、いしかわひとみ、宮田俊哉(ほか)
【STORY】
まことと咲と竜二、3人が出会ってからもうすぐ一年。
それぞれが悩みに向き合い少しずつ変化する中、学校は春休みを迎える。
まことが咲を意識し始める一方で、咲は父・裕司に会いにハワイを訪れる。
親子水入らずの時間を過ごし、ハワイを満喫する咲。
そんな中ふいに、裕司に「こっちで一緒に住むか?」と聞かれて……。
父を選ぶか、母を選ぶのか。
自分を「特別」に思っている人は誰なのか。「特別」とは何なのか。
咲が思いを巡らせる一方で、三年生になったまことや竜二もまた、進路に向けた選択をしていく。
3人が決める答えとは――。
公式サイト
https://senpaiha-otokonoko.com/
公式X
https://x.com/painoko_anime
原作情報
ぽむによる原作は、「LINEマンガ」で2019年から2021年まで連載。単行本全10巻が発売中。現在は前日譚「先輩はおとこのこ 出会い編」が、「LINEマンガ」にて連載されている。
「先輩はおとこのこ」の原作はこちらからチェック!
https://manga.line.me/product/periodic?id=Z0000602


text=M.TOKU
©pom・JOYNET/LINE Digital Frontier・「先輩はおとこのこ」製作委員会