薬剤師・葵みどり(石原さとみ)と患者の交流を中心に、知られざる病院薬剤師の世界を描いたドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系(木) 後10・00)。物語が佳境を迎える中、野田悠介プロデューサーが撮影エピソードとともに見どころを語ってくれました。
◆撮影を振り返って、この作品ならではの苦労などはありましたか?
一番大事にしたのは、薬剤師としてのリアリティですね。キャストの皆さんに薬剤師のしぐさや振舞いみたいなものはかなり練習していただいて。今はもう皆さん、本当に調剤できるんじゃないかというぐらい上達されています。石原さんはみどりらしくテキパキしていますし、調剤室のトップである刈谷を演じている桜井ユキさんは、手さばきがきれい。それと瀬野(田中圭)はシーンとしては8話が初めての調剤だったんですが、いきなりでも“できる感”を出している田中さんはさすがだと思いました。普段の田中さんはわりとちゃめっ気がある方だから、クールな瀬野とのギャップもすごいですね(笑)。
◆8話といえば荒神(でんでん)にスポットが当たる回でしたが、でんでんさんはマジックの練習もされたんですか?
していただきましたね。ただマジックそのものというより、話しながらやるのが難しいとおっしゃっていました。でんでんさんって実はいろんな特技をお持ちで、イラストもお上手なんです。なので劇中のイラスト、6話で出てきたパッチワークの原画なども書いていただきました。そういえば荒神って“調剤の魔術師”と言われているけど、一度も調剤しているシーンがないんですよね。実は調剤、あまりうまくないのかもしれません(笑)。
◆他にも隠し設定みたいなものはあるのでしょうか?
そうですね、小野塚(成田凌)はグリーンピースが嫌いとか。だから中華料理店「娘娘亭」でのシーンをよく見てると、チャーハンのグリーンピースだけよけて食べているんです(笑)。チャーハン自体はあの店の看板メニューで、最初はよくラーメンを食べていたみどりもチャーハンを食べることが増えていって。もう1つ「娘娘亭」に関する裏話をすると、最初は実際のお店で撮影していたのですが、新型コロナウイルスの影響で撮影できなくなってしまって。美術さんが本物そっくりに作ってくれたセットでの撮影に切り替えました。
◆先ほど現場での田中さんはちゃめっ気がある方だと話されていましたが、他のキャストさんはどんな様子でしょうか?
主演の石原さんはこの作品の座長ですが、自分が引っ張っていくんだみたいなものを表に出さないですね。1人ひとりに気配りされて、さりげなく支えてくれている感じです。くるみを演じている西野七瀬さんは、話し方やしぐさが愛らしい。石原さんも「ナチュラルにかわいい」とおっしゃってました。ふわっとした雰囲気だけど言いたいことは言う、みたいなくるみにフィットしているなと思います。
◆9話(9月10日放送)はどのようなストーリーになるのでしょうか?
9話で登場する患者は、薬物に頼り多量摂取してしまうオーバードーズの若月陽菜(徳永えり)。オーバードーズというのは普通の病気と違い、何か特定の薬で治すというものではないんです。言い換えれば、治療するのが難しいということでもあります。そのためみどりは彼女とどう接すればいいか迷うんですが、瀬野が解決にひと役買う感じになります。
◆8話のラストで吐血した瀬野の体調も気になるところです。
瀬野の性格ですから、余計なことを話して周囲の不安をあおるようなことはしないんですが、みどりはどこか先輩ではなく患者として瀬野と接するようになります。9話で精密検査を受けて、10話(9月17日放送)からのラスト2話は瀬野を中心に話が進んでいきます。命が助かるかどうかはさておき、まず薬剤師としてどうするか。病気になったことで患者のつらさを知り、また同じころ、ある患者と知り合うことで仕事を続けるべきか、治療に専念すべきかの迷いが生じます。あとは関係性で言うと、七尾(池田鉄洋)との因縁と言いますか。2人の過去に何があったか、七尾が抱えているものも描かれます。今まで瀬野と七尾が交わしていた会話を思い返して“そういうことだったのか”と合点がいくと思います。
◆みどりや瀬野以外の人物の見どころはどの辺りでしょう?
小野塚はみどりの良きライバル的な位置付けですが、みどりが在宅医療を学びたいと考えていたように、ドラッグストアの薬剤師として生きる彼にも胸に秘めた思いがあって。ある種、薬剤師として生きる覚悟みたいなものですね。目の前にある現実を踏まえながら、自分にできる理想を追ってみよう、という感じで。くるみの場合、患者への接し方なんかはみどりに影響を受けているんですが、実は刈谷の背中も見ていて。2人のいいところをバランスよく自分のものにし、彼女なりの薬剤師の道を見つけていきます。他の薬剤部メンバーにも、瀬野の病状が明らかになったことをきっかけに転機が訪れます。1人ひとりが薬剤師としてどういう人生を選択していくか、注目していただきたいです。
番組情報
『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』
フジテレビ系
毎週(木)後10・00~10・54
●text/小山智久