蒲原トキコ役:吉田羊 コメント
言葉豊かで聡明なジェーン・スーさんを、私のようなものが演じさせていただいていいものかと正直尻込みしました。けれど、読ませていただいた原作と脚本がとてもすてきで、何より、スーさんとお父様がとってもかわいくて、この親子の魅力を、私を通じて皆さまにお伝えできたらと、願うような気持ちでお引き受けいたしました。
お父さん役の國村さんとは9年ぶりの共演です。穏やかで軽やかで、よく通る口笛を吹きながら現場入りされ、関西人ならではの話術でおもしろ話をいつも聞かせてくださいます。尻尾を掴ませないひょうひょうとした佇まいは、どこか今回の「お父さん」にも通じていて、「してやられた!」と最後は笑って許してしまう、そんな人間力をお持ちの方です。
不思議なもので、親子を演じていると似てきて、同じタイミングで空を見上げたり、ため息をついたり、口元を拭ったり…今回、密度の濃い撮影のため、日一日と互いの円が重なっていくのがおもしろいです。その重なりを求めたスーさんの思いを、我々親子が演じることですてきに表現出来たらいいなと願っています。
私自身も、四年前に母を亡くしています。反発ばかりでしたが、それが母の愛を求める裏返しだったと気づいたのは母が亡くなる直前のこと。もっとこうすれば良かったという後悔は未だにたくさん。と同時に、健在の父に対しては、そんな思いはしたくないという決意のようなものは、スーさんと同じかなと思います。
なので、トキコを演じながらも、私自身の人生を生きている感覚。スーさんは書くことで、私は演じることで、皆さんは視ることで、それぞれの家族と向き合い、何かしらのヒントが見つかれば幸いです。家族、友人、恋人、仕事…日々私たちを悩ませるあれこれに響くスーさんの正直で的確な言葉たちに、そしてこの親子の「小さな一大事」に、ぜひ会いに来てください。ふっと心が軽くなりますよ。どうぞお楽しみに。
蒲原哲也役:國村隼 コメント
企画を拝見して、まさに今を捉えた内容だと思いました。“家族”のかたちもさまざまになり、昔のように二十何歳かで娘は嫁にいき、また親は息子やその嫁と同居なんてちょっとしたファンタジーになりつつあります。
ジェーン・スーさんの原作は親の世代も子供の世代もそれぞれの暮らしやすさを追い求めながら、またそれゆえの衝突もあり、少しの苦みとゆるやかな愉しみのなかで人生は過ぎて行く、そんな面白さをまざまざと描き出していきます。
共演する吉田羊さんは、軽やかに過酷な現場を楽しんでおられて、私もそのおすそ分けを頂いている気分になってしまいます。台本を読みながら、そして演じながら、したいことはするしかない。しかしそのしっぺ返しは甘んじて受けるんだぞ。肝(はら)は括っておくもんだ。という人生の教訓・三カ条を頂いたと思っております。
そんな訳で、私にとってこの父親役は十年ほど先の年齢になりますが、今のうちに自分自身がどんな齢の重ね方をしたいのか?と、考えてみるきっかけにもなりました。ま、そうそう答えは出ませんけれど。ドラマをご覧いただいた皆さまのご感想をお聞かせください。大人になってからの親子の物語、ほんわか甘苦いです。