『コントが始まる』第5話までを振り返るイラストエッセイが公開

ドラマ
2021年05月15日

『コントが始まる』

菅田将暉主演ドラマ『コントが始まる』(日本テレビ系 毎週(土)後10・00~10・54)のこれまでを振り返るイラストエッセイが公開された。

本作は、「あの頃」に思い描いていた「大人の自分」とはまるでかけ離れた「大失敗」な人生を歩んでしまった20代後半の若者たちが、その「失敗」をしたからこそ出会う人や出来事によって、思い描きもしなかった未知の「幸せ」と巡り合う群像劇。

菅田、仲野太賀、神木隆之介が売れないお笑いトリオ「マクベス」、3人がネタ作りにいつも集うファミレスのウエートレスを有村架純、有村の妹役を古川琴音が演じる。脚本は、『俺の話は長い』などを手掛けた金子茂樹のオリジナルとなる。

公開されたイラストエッセイでは、回を追うごとに話題になる本作の第5話までのストーリーをキーとなるマクベスのコントを交えて振り返る。

『コントが始まる』

解散宣言から始まる物語

一流企業をやめ、ファミレス「メイクシラーズ」でウエイトレスをしている中浜里穂子(有村)は、店の常連である男性3人組のことがなぜか気になって仕方がない。珈琲1杯で粘り、コントのネタを作っている様子から、お笑い芸人だと推測できる。偶然、3人が隣のマンションの同じ階に住んでいることも発覚し、里穂子は少ない手がかりから彼らのことを調べ始めた。一週間かかって判明したのは、3人が「マクベス」というかなりマイナーなお笑いトリオであること。
ネタ作りとツッコミ担当の春斗(菅田)、結成当時から組んでいるボケの潤平(仲野)、5年前に加入した元プロゲーマーの瞬太(神木)。ネットで彼らの動画を見て、雑誌の過去記事などから経歴も調べ上げ、里穂子はすっかり「マクベス」オタクに。一緒に暮らす妹のつむぎ(古川)にはその良さは理解できず、あきれながら姉を見守る日々だ。そんな里穂子が彼らの舞台を初めて生で見に行った夜。終演の挨拶で告げられたのは、「2か月後の単独ライブを最後に、マクベスを解散する」という宣言だった。
もはやマクベスが生活の一部になっていた里穂子は、ショックで呆然としながら会場を後にする。そこに春斗が現れて――この日を境に、マクベスの3人と中浜姉妹の交流は急速に深まっていく。目前に迫った解散へのカウントダウンの日々の中、若者たちを取り巻く物語が動き出した。

『コントが始まる』

青春のタイムリミット

「10年やって売れなかったらやめる」
マクベスの解散は、大学に進学せずコントの道を進むと決めた春斗と潤平が、それぞれの家族と交わした約束だった。高校の文化祭のステージで初めてコントをやった日の帰り、ラーメン屋で春斗が潤平を口説いて始まった「マクベス」。その場に同席していた瞬太も後に加わり、共同生活をしながら続けてきた3人だが、ずっと鳴かず飛ばずの日々である。ブレイクの兆しは見えず、刻々と近づくタイムリミット。
背水の陣で臨んだオーディションで惨敗した日、3人は徹夜ドライブでひたすら西へ向かう。翌朝着いたのは博多。絶品のとんこつラーメンを腹いっぱい平らげたのち、春斗がついに「……解散するか」とつぶやいた。
こらえきれずに噴き出すほかの2人。「オマエってさ……大事な発言する時いっつもラーメン食い終わった後なのな!」と潤平。
「オレのこと誘った時もそうだっただろ? 始める時も終わるときもラーメン食った後ってなんだよ。それが一番おもしれぇよ。10年前の伏線回収してくんじゃねぇよ……」
早朝のラーメン屋で爆笑しながら号泣した3人が、とんぼ返りで東京に戻り立ったのが、里穂子が初めて見に行った単独ライブの舞台だったのだ。

『コントが始まる』

巧みな構成、伏線回収の心地よさ

ドラマは毎話マクベスのコントの冒頭から始まり、エンディングも同じコントのオチで結ばれる。2つのパートに挟まれたサンドイッチの具にあたる春斗たちの物語は、コントのモチーフと絡み、最後には気持ちよく伏線が回収される構成が巧みで、毎週「よくできてるな~!」と感心させられている。
第1話のコント【水のトラブル】は、ファミレスで店員と客として会うよりも前、里穂子が会社を辞めた日に春斗と遭遇していたというエピソードから生まれていた。冒頭で里穂子が見ていた「メロンソーダ」のネタ誕生に、実は里穂子自身が関わっていたのが痛快だ。
高校時代の春斗が作った、マクベスの最初のネタと言える【屋上】には、11年前、高校の屋上で佇む瞬太に春斗が初めて声をかけたときのことが重なる。人生に価値を見出せなかった瞬太が、生きて春斗についていこうと決めたきっかけの日だった。
第1話と第2話では、同じ「10年前の、ラーメン屋でのシーン」が異なる見え方で描かれる。マクベス結成という大きな節目を、三人それぞれの視点で見なおす心憎い演出だ。可能であれば、さかのぼっての視聴をお勧めしたい。

思い合っているから苦しい、家族のエピソード

第3話で登場した里穂子お気に入りの【奇跡の水】は、マルチ商法にハマって順風満帆の人生から転落し、実家で引きこもる春斗の兄・俊春(毎熊克哉)をモチーフにしたものだ。身内をお笑いのネタにしてはいるが、春斗は、兄を苦しめ孤独にした責任の一端が、家族の自分にもあるのではないかと思っている。
中浜家で行われた突発的たこ焼きパーティーでは、里穂子が1年半前に恋人に捨てられ、同時期に会社も辞めたいきさつが語られた。
俊春と里穂子に共通する性質は、周囲を気遣い自分一人で抱え込んでしまう真面目さだ。つむぎの働くスナック「アイビス」の良枝ママ(松田ゆう姫)の「真面目な人ほど簡単に転げ落ちちゃうからね。助けを求めて手を伸ばせばいいのに、周りを巻き添えにしちゃいけないって、我慢しちゃう」というセリフが象徴的だった。
里穂子がつむぎの献身的な世話で廃人同様の状態から回復したように、俊春も春斗の思いを感じて一歩を踏み出す。長いトンネルを抜けたような、希望が見られた回だった。
第4話は唯一瞬太が作ったネタ【捨て猫】。ミュージカル「CATS」ばりのメイクで演じる異色のコントだが、そこからは家庭に恵まれなかった瞬太の寂しさが透けて見える。父親を早く亡くし、母親の友利子(西田尚美)とは折り合いが悪く、長らく絶縁状態。ゲーム、お笑い、金髪――母の嫌うことをすべてすることで、愛されなかった恨みを晴らすように過ごしてきた。
そんななか届いた、友利子の危篤の知らせ。動揺し、それでも母を赦せない葛藤で苦しむ瞬太だったが、最後の最後には、友利子に素直な気持ちを伝えることができた。それをそっと後押ししたのは、つむぎのやさしい説得だった。弱っている人を放っておけないつむぎをみつめる里穂子のまなざしも、またやさしかった。

解散撤回の流れから、ふりだしに

第5話の【カラオケボックス】。客の不倫カップルに店員が「延長するか否か」を問うシーンと、お笑いを続けるか否かの瀬戸際に立たされたマクベスが重なる。各々の家族の状況が変わってきたことや、マネージャーの楠木からの慰留もあり、解散の撤回に気持ちが傾いていた春斗たち。しかし、マクベス結成時のキーマンである高校の担任教師・真壁(鈴木浩介)に相談すると、意外にも解散を勧められてしまった。
将来への不安と焦り、成功した同世代と比較してしまう卑屈さ。これまでの年月が無駄になるのではないかという恐怖――やめても続けても、待ち受けるのは地獄としか思えない。今のマクベスは、数年前に「ああはなるまい」と思った先輩芸人の姿にぴったりと重なってしまった。
改めて解散することが決まったマクベス。活動終了まではあとひと月となってしまった。

「マクベス」の絶妙なバランスと、愛すべき姉妹

お笑いに対して真摯に向き合い実直だが、融通が利かない春斗。高校時代に潤平がコントの相方として最初に誘ったのが自分ではないと知って憤慨し、潤平と大喧嘩に発展するところなどは春斗らしい。潤平は意地と情で動くタイプだ。春斗とマクベスを組んだのも意中の相手の気を引くため。短絡的にも思えるが、実家を継ぐことや10年付き合っている恋人への責任を感じている。
瞬太は少し毛色が違い、親友二人とトリオを組む日々をひたすら楽しんでいる。プロゲーマー界のトップを走っていたにも関わらず、「若い子に歯が立たなくなった」と?をついてまでマクベスに入れてもらったほど。直情的な春斗と潤平はなにかにつけて衝突するが、瞬太が間に入ることでケンカが深刻化しない。バランスのとれた3人なのだ。ボロいマンションで一緒に寝起きし、各自バイトに勤しむ。ファミレスでネタをつくり、深夜の公園で練習。積み重ねた年月は、トリオの絆を特別なものにした。
里穂子のキャラクターがまた秀逸で、スペックが高いのにどうもうまくいかない、好きなモノのことになるとちょっと挙動不審という、こんなお姉さん絶対に実在するよねと思わせるリアリティがある。妹のつむぎの抱える問題はまだ語られてはいないが、皮肉屋だけれど優しくて、自分のことは二の次という彼女が報われるような展開があってほしい。

『コントが始まる』

「こうなるはずじゃなかった」20代後半、彼らの前に現れる【未来】とは

このドラマでは今のところ「アラサー」というワードが出てきていない。20代後半を、もう学生じゃない、でもまだ完全に大人でもない、泥臭いモラトリアムの終わりとして描いている。
インフルエンサーもYoutuberも出てこず「令和っぽさ」を感じないが、この作品は、きっと10年後に見ても古びない。公式サイトのトップ画像の5人は、各々のアルバイト先の衣装を身につけている。春斗は深夜の工事現場、里穂子はファミレスの制服――彼らが本来目指した姿ではなく、社会とつながる「仮の姿」。「こうなるはずじゃなかった」自分を抱えながら、虚勢を張って踏ん張っているようにも見える。
「独自の何かを持っていたい」と焦がれ、「自分の人生の花がまだ咲かない」と焦れる。
エンディングに流れるあいみょんのテーマソングの歌詞がぴったりとハマるのだ。

後半戦も期待大! 壮大な伏線回収が待っているかも?

さあ、ドラマの前半戦が終了したところで、マクベスに迫った事態はふりだしに戻った。つむぎは新しい部屋を見つけ、中浜姉妹の同居生活も終了の兆しが。5人はバラバラになってしまうのだろうか。マクベスの鉄の掟に【ファンとの恋愛禁止】があるが、徐々に近づきつつある春斗と里穂子の関係も、気になっていたのだけれど……。
この5週間で、私もすっかり里穂子と同じく【マクベス推し】になったので、本当は解散ライブは見たくない……けれど、彼らの行く末はしっかりと見届けたい。
第6話では、これまであまり心情が語られなかった潤平の恋人・奈津美(芳根京子)
にもスポットが当たる。何度も告白しては玉砕を続けてきた潤平が、ついに奈津美を射止めたエピソードも明らかに! 春斗たちとかかわる多くの人生も巻き込んで、コントは続いていく。
(文・イラスト:藤沢チヒロ)

『コントが始まる』
日本テレビ系
毎週土曜 後10・00~10・54

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