Netflixと制作会社スターサンズが企画製作する、Netflixオリジナルシリーズ『新聞記者』が1月13日(木)に全世界同時配信。それに先駆けてワールドプレミアイベントが1月10日(月・祝)に開催され、主演の米倉涼子をはじめ、綾野剛、横浜流星、藤井道人監督が登壇した。
2019年6月に劇場公開され、大きな話題を呼んだ映画「新聞記者」。近年の政治事件やスキャンダルに正面から切り込み、タブーに挑戦したといわれる衝撃的な内容とスリリングな展開、スタイリッシュな映像で第43回日本アカデミー賞の最優秀作品賞を含む主要3部門を獲得したほか、多くの映画賞を受賞した。
そんな衝撃の問題作がキャストを一新し、新たな物語として全6話でドラマ化。“新聞業界の異端児”と呼ばれる主人公の東都新聞社会部記者・松田杏奈役を米倉涼子、理想を抱きつつも組織の論理に翻弄される若手官僚・村上真一役を綾野剛、そして新聞配達をしながら大学に通う就活生・木下亮役を横浜流星が演じ、監督は映画版に引き続き、藤井道人が務める。
このたび、そのワールドプレミアイベントが1月10日(月・祝)に東京・イイノホールで開催。幕が落とされ、キャスト・監督が「新聞記者」の大きな文字の前に現れると、観客の熱い拍手で迎えられた。
本作の主人公を演じる米倉は抜群のスタイルが映える美しい白のセットアップスーツで登壇し、「松田杏奈という新聞記者をやらせて頂きました米倉涼子です! 今日はどうぞ、よろしくお願いいたします」とまずは丁寧にあいさつ。
MCから出来上がった作品を見た率直な感想を聴かれると「このドラマは“私を見て!”というより、みんながあって、監督が創造した空気があっての『新聞記者』というのが私の見解です。『新聞記者』というタイトルだけど、みんながどんなふうに生きていってどんなふうに我慢して、どんなふうに夢を見て一歩を踏み出すか、というドラマです。ぜひ考え抜いてもらいたいと思います」とキャスト・スタッフのチームワークで作り上げた作品だと振り返る。
続いて、綾野は「全編を通して自分も学ぶところがたくさんありました。演じた僕らでさえもたくさんの気づきを教えて頂いたような気がしていますね。何より藤井組という最高のチーム力を踏襲しているので、楽しんで見てもらえたら幸いだなと思います」と、「ヤクザと家族 The Family」『アバランチ』に続いて3作目となる藤井監督とのタッグに期待が膨らむコメント。
横浜は「ドラマとは思えないほどクオリティの高い作品になっていると感じましたし、僕自身も亮と同じで政治とか世の中の出来事に対して少し他人事な部分があったけど、この作品を見て若者目線が入ることによって自分事として捉えられると感じたし、改めていろんなことを考えるきっかけになりました」と等身大の思いを語った。
また、映画版に引き続き監督を務め、新聞記者、官僚、ごく普通の大学生という3つの視点から物語を紡いだ藤井監督もコメント。「それぞれが主演として世の中にたくさんの作品を生み出している人たちが1個のチームになって1個の作品を作りだすエネルギーは本当に強くて、世代とか時代とか全部飛び越えて良いものを作ろうという純粋な時間はかけがえのない体験でした」と、豪華キャストの競演から生まれた唯一無二の作品づくりを振り返る。
藤井組には初参加となった米倉は「藤井監督とお会いするのが初めてだったので、どういう撮影スタイルなのか分からないまま飛び込んでいって、本当にドキドキしました。スタッフさんも特に若い方が多かったのですが、最年長に近いくらいの年齢なのに引っ張っていけない自分がいて。そして粘り強さでいったら右に出る者がいない藤井監督、つらい時もありました(笑)」と、撮影当初の心境を告白。
「けれどこの監督に委ねようと思ったのは、どんな質問にもすぐ返ってくる、意見がある。そんな監督に出会えて幸せだなと思いました。皆さんが思われる“元気で強くてパワフルな米倉涼子”として我慢した部分も多かったです。いち早く作品を見て、自分が出てないところで本気で泣いてた自分がいる、という不思議な体験もさせて頂きました」と藤井組での挑戦を語る。それに対して、監督も「平常運転でしっかり頑張らせて頂きました(笑)」と米倉への信頼をのぞかせた。
綾野も「作風はシリアスな部分もありますが、ちゃんと支え合って立っていられる現場でした。本来美味しいはずのご飯が美味しくなくなっていくのはラッキーだなと思ってました」と“綾野節”でコメント。
すかさず米倉が「それって、なんでって聞いてほしい?」と突っ込むと、「美味しいと思っているご飯が(追い詰められていく)村上として生きているとどんどん味がしなくなっていくんです…」と答え、綾野の演じる役への没頭ぶりが改めて示された。
また監督と話し合ったことについて聞かれた横浜は、「藤井さんに自分が描きたい役目を託したいと言われて。若者目線ということで亮の考えに共感できる部分があったので、皆さんにも感情移入してもらえる役柄だと思いました。皆さんにそういうふうに思ってもらえるように、逆に変に作りこみすぎずに素直にいるというのを意識していました」とまるで藤井監督の分身のような亮を、横浜自身もまた等身大で演じたことを述べた。
ここでこの日が「成人の日」であることにちなんで、まさに今なにかに挑戦しようとしている観客たちから事前に質問を募り、キャストと監督が答えるというQ&Aタイムに突入。まずは「ずっと看護師を目指していて、看護学生になれたんですけど実際に勉強してみると、周りと比べてしまって自分は向いてないんじゃないかなって思って落ち込みます。自分が俳優業に向いてないと思った瞬間はありますか? その際、どうやって乗り越えましたか?」という看護学生からの質問が。
これに対し米倉は「私は自分がこの仕事が天職なのかどうかは、まだ確信したことはないんです。ただやってやれ! という思いと、せっかくやり始めたことはやり通したい思い。あと隣の芝が青く見えるタイプで自分に納得できなくて“あの人のほうがいいなぁ、悔しいなぁ”と思って生きてるタイプ。まだまだ自分には足りないと思っていて、自分に向いてないのかな? と思ったことも超えてやろう! という思いで、悔しいと思いながら生きています」と。
そして「どんな居場所でも楽なことはきっとないと思っているし、ぶち当たってみないと分からない壁に当たって、泥まみれになったほうが大人になった時に楽になる気がする」と自身の経験も織り交ぜた的確なアドバイスを送った。
横浜も「僕も今の自分に満足しないからこそより頑張れるし、自分の代わりなんていくらでもいるので、自分も十代の頃は比べてしまうこともあって、その都度向いてないんじゃないかって思うこともありました。ただ、自分が決めた道だし、単純に芝居が好きだし、辞めるっていう選択肢はなくなりました」と。
その上で「時間はどんどん過ぎていくので、落ち込んでる暇も比べる暇もなくて、全力を尽くしているうちに、そういうことは僕は考えなくなりました。応援しています!」と力強く質問者の背中を押した。
2問目は綾野に向けて、「現在役者を志し日々、レッスンを受けているのですが、その中で脚本読解を課題に挙げて取り組んでいます。綾野さんが台本を受け取って読解に入る中で最も重視している点はどこですか? また、今作において綾野剛さんが演じた村上真一という役の最も大切しなきゃいけないなと感じた部分はどこでしょうか?」と、俳優の卵だという観客からの質問。
これに対し綾野は「好きなふうに読んだほうがいいと思います。脚本は数学のように答えがあるものではないので、今日まで生きてきて体感してきたことだけで読んでいいと思います。自分自身を否定する必要はなく“僕はこう思った”という部分がより大事だと思いますし、それを僕は受け止めたいと思います」と。
続けて「本作は村上から何かが伝わっていくのではなく、村上を通して松田や亮の眼差しから最終的に感じ取ってもらうような感情を線に繋いでいたので、僕から何かを発信していくというよりかは最終的には未来を生きる若者でもある亮に行きつくにはどうしたらいいかと考えて役を生きていました」と具体的な例を挙げながら、後輩の疑問を解決した。
藤井監督へは「漠然と映画やドラマなどの映像作品に携わる仕事をしてみたいと思うのですが、明確な職業が決まっているわけではありません。どういった視点からこの業界を調べたり、考えたりしたら自分のやりたい職業が見つかるのでしょうか?」という、進路に悩む学生からの質問が。
これに対し藤井監督は「僕は元々脚本家になりたくてこの業界に入ったのですが、脚本が全然上手くならなかったのでとりあえず大学の映画サークルに入りました。そこでの映画作りがすごく楽しくて、録音も撮影も助監督もやって…気づいたら映画監督になっていた、という感じです」と。
そういった経緯も踏まえ、「今でも監督が向いているとは思わなくて、夢は脚本家だったりするのですが、映画は楽しいので、飛び込んでみて学んでみてください」と手探りながらも前に進む行動の大切さを語った。
また、自身の20歳の頃の話に及ぶと、米倉は「時は戻せないからやりたいなとちょっとでも思ってることはすぐにやってみたほうがスッキリする。若いうちにやりたいと思ったことは続けてほしいし、間違ってたと思うことは辞めたらいいし。いいことも悪いことも何か始めないと何も進まないから、一歩出る勇気を持てたらいいなと思う」と大人目線で新成人にエール。
いっぽう、綾野は「いっぱいご飯食べて! 食べるパワーは生きるパワーに直結していると僕は思ってて。仕事がない時もとにかく食べるということはしてました。あと仲間を見つける。仲間に教えてもらったことが自分の夢になったっていい。僕だって自分が俳優になるなんて思ってなかった。大好きな仕事を見つけてくれた人がいたので、それが大事だと思います。まずは食べよう!」と“食”と“仲間”の大切さを伝えた。
20歳がたったの5年前だという横浜は「まだ言える立場じゃないですけど、今この瞬間を大事にしてほしいなと思います。どんどん時間は過ぎていくし何が起きるか分からないので、今を全力で楽しんでくれたらうれしいなって思います」と今の正直な思いを述べる。
最後に藤井監督も「大学生の時に出会った仲間と会社を立ち上げて仕事をやっているので、青春がずっと続いています。若い時の何者でもない自分と一緒にいてくれた人たちと楽しいことができていて、今横にいる人を大事にすることで10年後20年後に楽しかったねと言えるんじゃないかと思います」と具体的なアドバイスで新成人たちの背中を押した。
イベントも終盤を迎え、藤井監督は「コロナの中で一丸となって作り上げて、1人の人間としてどう生きるのかを真摯に向き合って素晴らしい俳優とスタッフとともに妥協なく作り上げた作品です。日本の皆様、そして世界の皆様にどういうふうに届くのか自分もとてもドキドキしてるのですが、これが終わりではなく始まりになるように思いを込めて撮りました」と、全世界配信が目前に迫った今の気持ちを素直に表現。
続いて横浜は「皆さんと共に魂を込めて作った作品ですので、たくさんの方にこの作品が届くことを祈っています。この作品を見て感じることは人それぞれ違うと思いますが何かを残すことができたらうれしいです。そして感じたことを大事にしてほしいなと思います」と思いのこもった作品をアピール。
綾野は「とても楽しかったです。新聞記者を通して、何かを始めようとしていることをたったひとつでもいいので気づいて受け取ってもらえたらうれしいです。本作にとって一番大切な部分を僕たちはきっと横浜流星という役者に託したんだなと改めて話を聴いて思いました。それぞれいろんな見方がありますが、楽しんで頂けたら幸いです」と未来を生きる若い世代へバトンを託す。
そして最後は米倉が「藤井組が思いを込めて作った作品です。想像以上に素晴らしい作品になってると思います。どうやって生きていこうとか我慢していこうとか、1人の人としての生き方を考え直すような作品になっていると思います。13日からの配信を楽しんで頂ければと思います!」と本作の座長として作品を最大限にアピールし、イベントを締めくくった。
作品情報
Netflixシリーズ「新聞記者」
2022年1月13日(木)よりNetflixにて全世界同時独占配信
監督:藤井道人
出演:米倉涼子
横浜流星/吉岡秀隆 寺島しのぶ/吹越満、田口トモロヲ、大倉孝二、田中哲司、萩原聖人/柄本時生、土村芳、小野花梨、橋本じゅん、でんでん/ユースケ・サンタマリア、佐野史郎/綾野剛
脚本:山田能龍、小寺和久、藤井道人
エグゼクティブプロデューサー:坂本和隆、高橋信一
企画・プロデュース:河村光庸
プロデューサー:佐藤順子、山本礼二
ラインプロデューサー:道上巧矢
製作:Netflix
制作プロダクション:スターサンズ
Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/新聞記者
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