◆オープンセットの制作には、どれぐらいの日数がかかりましたか?
野中さん:大体1か月ぐらいかけてオープンセットを作りました。本当だったらもっと時間をかけてやるんですけど、1か月でよくできたなっていうのが僕らの正直な感覚です(笑)。緑山スタジオの敷地に植林して、岩や苔にもこだわって作っています。今回のドラマの設定はSF要素が多いので、映るものにリアリティがないと視聴者も冷めるんじゃないかと思いまして(笑)。なるべく本物の素材を取り入れたオープンセットになっています。立て込みの日数だけで言えば1か月ぐらいなんですけど。その前にいろいろな準備をしているので、総製作期間はもう少しかかっています。
二見さん:時間があったらあっただけ作っちゃう人たちなので、「2か月で」って言えば2か月かけて作っていたと思います(笑)。製作期間は限られていましたが、その中でも最大限見栄えのいいものを作り上げられたのではないでしょうか。立て込みに入ってからは、もともと何もないフラットなところに土を盛っていって、地形の起伏から作り始めました。作中で役者さんがいてよく映っているところは、大体地形から作っています。地面から生えているように見える木も、頻繁に映る場所のものはほどんど我々が植えたもので。奥の方の木々がうっそうとしたところは緑山スタジオの地形です。カメラマンでさえ「ここも埋めてるの!?」って驚いていたので、視聴者の皆さんが思っているより作り込んでいるんじゃないでしょうか。僕らが手を加えたところが200坪ぐらいあって、実はその先にもともとの緑山の地形を使っています。そこも入れると、全体で600~800坪になるかもしれません。
◆この規模のセットは、連続ドラマではそうないものですか?
野中さん:そうですね。連続ドラマだと数年に一度あるぐらいかと。
二見さん:僕が携わった作品で緑山にオープンセットを建てたのは『天皇の料理番』(2015年)以来です。野中さんも『この世界の片隅に』(2018年)っていうドラマをやっていて。それもオープンセットを使ったんですけど、それ以来。数年に1回じゃないですかね。
◆4話で登場したもう1つの車両、6号車も同規模で作られているのでしょうか?
二見さん:6号車の人たちは村みたいなところで暮らしているっていう設定で。その村は千葉の山奥に作って、ロケで撮影してきました。ただ、村の外観的な部分はいろんな地形を利用してCGで合成して作っています。車両については、スタジオセットで撮影しています。
野中さん:車両自体は5号車とほぼ変わらないのですが、6号車には運転席部分があるので、そこだけパネルを追加しています。また台本のト書きで、車両の中が個室のようになっていてそこで生活している設定になっていたので、自然木で電車の中を区切って5号車とは全く違う印象の作りになっています。
二見さん:スタジオセットではLEDパネルを使用して、オープンセットと同様に樹海の風景を再現しているんです。その利点を生かして、6号車ならではの風景を映して5号車とは全然違う場所にあるように見えるようにしています。
◆セットに関して、現場からはどんな要望がありましたか?
野中さん:通常の家のセットなどもそうなんですけど、技術チームからは電車も壁や天井を外して撮影がしたいという要望があって。それを電車でやるのは、通常のセットより大変でした。
二見さん:電車の天井をパカッと外して、真俯瞰からカメラが入ったりとか。そういう撮り方をしています。最初の段階で、オープンセットもスタジオセットも、全体の世界観を決めるためにコンセプトアートを美術が描いて提示しているんです。それを監督やプロデューサーに見せて「こういう世界観でやりたい」と美術から提示しているので、むしろビジュアル面はこちら発信のことが多いです。監督から要望があったもので言うと、杉本哲太さん演じる田中が1人で暮らしている住処ですかね。オープンセットの近くの山の中に作ってあるんですけど、監督から「大きな木の根っこに田中が座れるようにしたい」とリクエストを受けました。巨木の根っこ自体を作って、そこに田中が座れるようにしてあります。
野中さん:地面に穴を掘って、そこから根っこを出して苔むして…と作り上げましたね。場所も含め、こちらから「ここに作ったら面白くなるんじゃないか」という提案でした。
二見さん:5話で出てきた船も我々が準備して、緑山の中に埋めたんですけど。ストーリー上、後から登場するものも含めて、世界観の構築については我々も自信を持ってやっています。