映画「武曲 MUKOKU」の初日舞台あいさつが行われ、綾野剛、村上虹郎、熊切和嘉監督が登壇した。
本作は、綾野演じる矢田部研吾と村上演じる天衣無縫の高校生・羽田融の宿命の対決を軸に、“父と子”“師匠と弟子”の闘いと絆を描く感動の物語。
綾野は、登壇して客席を見渡し「武蔵野館…やっぱりいいですね、この雰囲気」と満席の様子に満足げな表情を見せた。村上は「この日を迎えることができてとても幸せです」、熊切監督は「上映後の舞台あいさつは、どういう反応があるかいつも不安なんですが、皆さんの表情を見てほっとしました。今日は本当に感謝しかありません」とあいさつした。
綾野は「熊切監督とは5年前に『夏の終り』でご一緒したんですが、その時は熊切組に入れるという喜びばかりで地に足がついていなくて、すごく心残りがありました。でも監督は、その後も“必ずまたやろうね”とずっと言ってくださって、その言葉を信じながら今日まで来て本当によかったなと思います。主役として現場に立ちましたが、監督に自分の身を委ねて、“チーム武曲”の一員として現場に臨んでいました」と振り返った。
熊切組参加となった村上は「最高でした!」と語り、「監督とは現場に入ってからはほとんど会話した記憶がないんです。でも、誰よりも、僕らなんかよりキラッキラした目で僕らをずーっと見つめてくれていました。タオルを頭にまいて武士のような恰好でカメラの横で見守ってくれるんです。それで、“いいっすねー”と言ってくれるんです」と。綾野も「カットがかからず“いいっすねー”って…OKなのかどうなのか分からない時もありました(笑)。でも、あの“いいっすねー”を言われるとホッとしたよね」と同意した。
熊切監督は「セリフに頼らず、肉体表現で見せる映画だと思い、ハードルが高いんだけど、挑戦したいと思いました」と、脚本の0稿を読んだ時の感想を語り、「この2人を撮っていると自分の運動神経がよくなったような錯覚に陥れるんです」と笑った。
原作の藤沢周が映画を観た感想として「すごい迫力だった。僕が研吾という人物、融という人物について、こんな人だったんだと逆に教えられた」というコメントが紹介されると、綾野は「本当に恐縮です。原作がいいから映画もここまでたどり着けたと思います。全く救いがなく、自分の役をかわいそうと思ったのはこれが初めてですが、同時に、ここまで生きている実感を得られる役というのもほとんど初めてで、体内に入ってくるものを感じていたので、それに浸食されてもいいと思いながら演じていました」と。
村上は「僕は原作を先に読んでいたのが助けになりました。融は剣道を知らない初心者なんですが、運動神経抜群というイメージを持っていて、古武術のような構えも自分の考えでやってるんです。誰とも話さずこういう感じかな…とやったのも、原作からもらったインスピレーションによるものです」と語った。
続いて、熊切監督の映画人生を変えたというジョン・ウー監督からの「いろんな面で人を勇気付ける素晴らしい映画。剣道という日本古来の武術を題材としながら、現代を生きる若い世代に希望を伝えている」というコメントが紹介されると、世界的巨匠の絶賛に綾野、村上も驚きを隠せない様子だった。
映画のクライマックスとなる台風の中の決闘シーンについて、熊切監督は、「このシーンは3日かけて撮影していて、いろいろ仕掛けもあって2人は本当に大変だったと思います。僕はすごく楽しかったです(笑)」とねぎらうと、綾野は「疲弊していく様子をちゃんと撮ってくれる監督なので、ひたすら疲弊していけばいいと思いながらやっていました。楽しくて仕方なかったです。“殺してやるから早くかかってこい!”みたいな(笑)」と、自身のセリフを交えて撮影を振り返った。
村上は、「このシーンは後日アフレコを撮ったんですが、本当に面白かったです。2人で回りに何もないのにマイクの前で“ワー!”“ウオー!”ってやって(笑)。この時の綾野さんのラスボス感はすごかった…」と語った。
最後に、綾野は「映画のキャッチコピーは“破滅か、救いか――”になっていますが、愛に渇望した男たちが地獄に魅せられて、その中から光を手繰り寄せる作品です。この映画を観た時に皆さんの中に小さな希望や光が見つけられるといいなと思います。撮影の時は相当激しく重い作品になるだろうと思ってたんですが、出来上がった映画には熊切監督の映画への愛や、村上くんの瑞々しさが映っていて、確かな希望と光がそれを求めた人間たちにちゃんと注がれていました」と語った。
「武曲 MUKOKU」
原作:藤沢周『武曲』(文春文庫刊)
出演:綾野剛 村上虹郎 前田敦子 風吹ジュン 小林薫 柄本明
監督:熊切和嘉
脚本:高田亮
音楽:池永正二
配給:キノフィルムズ
公式サイト:mukoku.com
©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会