河瀨直美監督作『光』の映画内映画『その砂の行方』の公開記念トークイベントが行われ、藤竜也、神野三鈴が登壇した。
本作は、『光』の劇中で流れる短編作。『光』のファンからも上映を心待ちにする人が続出したため、公開が実現した。このことについて、本作の主演を務めた藤は「僕もこの映画内映画がこういう形で、上映されることは全然知りませんで、カンヌ映画祭の時に初めて監督から聞いて大変うれしく、びっくりしました。そして下手なことができないと緊張しました」と、驚きと喜びを語った。
撮影時、藤と神野には、シノプシスのみが渡されていたようで、「シノプシスだけだったので、全編アドリブでお話を進めていた。ここにはないシーンもあって、もっと2人の過去や藤さん演じる重三の背負ってるものが描かれてはないけど演じなくてはならなかった。全部アドリブだったので、タンゴを踊るように藤さんにリードを任せて、何をやっても藤さんが応えてくださるので、すごく幸せな時間でした」と、神野は藤との共演の思い出を語った。
一方の藤は、「シノプシスも本当によく出来ていて。すごく重い過去を背負ってる2人で、そのシノプシスを核にして自由に演じられた。それしかないので、そういった緊張感がありました」と、登場人物2人のバックグラウンドを披露した。
また、作中には砂丘で藤と神野がもつれ合うシーンが。藤は「2人で砂丘に座らせられて、河瀨監督に『さあ、どうぞ』と言われるんですけど、台本には『2人求め合う』と書いてあっただけで。河瀨監督は全然カットかけないんです。だから、どこまでいっていいか、と心配になって。僕『愛のコリーダ』の経験があるので、黙ってればどこまでもいってしまうので、ストップかけてもらわないと困ると言ったら(笑)、監督が『砂があるので……』というので、あんまりいっちゃいけないんだなと悟りました」と、河瀨監督とのやりとりを告白。
神野は、藤の行動に驚いたそうで「まずキスか、と思ったらもう1つアクションがあってそれで、頭が吹っ飛んだんです(笑)。役者の勘が全然通じないアクションでびっくりしました」と暴露。そのアクションはどのようなものだったのかと質問が及ぶと「秘密(笑)。でもそれを永瀬(正敏)さんに話したら、『俺もまだまだだなー』っておっしゃってました(笑)」と、周囲も驚くアクションだった様子。
最後に、『光』と本作について聞かれた藤は「河瀨監督の作品は感じるしかない。妙に魂を揺さぶられるような力が作品にある。『光』はそういう映画です。『その砂の行方』も、この2人は逃れ難い過去の事柄に、暗闇の中で魂が何十年もいたような先に光が見えているような作品だから、どちらも『光ってなんだろう』って思わせる作品だと思う。映画は100人いたら、100通りの解釈があるので、好きに感じてほしいです」と。神野は、「誰かの人生を分かち合えるのが映画だとしたら、その映画の魔法を十分に感じられる作品だと思います。観終わった後に何かを感じてくれたらうれしいなと思います。その光が種になっていたら本当に幸せです」とコメントし、イベントは幕を閉じた。
『光』
新宿バルト9、梅田ブルク7ほか 全国公開中
監督・脚本:河瀨直美
出演:永瀬正敏、水崎綾女、神野三鈴、藤竜也
配給:キノフィルムズ/木下グループ
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