鬼才ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)がチェーホフ四大戯曲を手掛ける人気シリーズの第3弾『ワーニャ伯父さん』が8月27日(日)に開幕した。
不定期上演企画として、これまで2013年『かもめ』(生田斗真、蒼井優、野村萬斎、大竹しのぶほか)、2015年『三人姉妹』(余貴美子、蒼井優、宮沢りえ、段田安則、堤真一ほか)を上演。
第3弾となる今回は、シリーズ前2作での劇場空間(シアターコクーン)を離れ、新国立劇場小劇場にフィールドを移した。舞台と客席が密接に感じられる空間で繰り広げられる、実力派キャストの濃密な人間ドラマや、ギター奏者・伏見蛍が生演奏で登場人物の心情を描き出すKERA演出にも注目だ。
<演出家・キャストコメント>
■上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
「四大戯曲も3作目ともなると、チェーホフとの付き合い方も自分なりに会得できたと思っています。前2作が「交響楽」の趣きとすると、ミニマムで閉塞感が強いワーニャは、いわば「室内楽」。前2作よりも小さな空間で、ポップさを心掛け、細かい表現にもこだわりました。観客の皆さんが我を忘れて劇世界にのめり込める状況をつくることが自分に課した使命でしたが、スタッフ・キャスト・一丸で精一杯やりました。今回が3作中、一番良い出来映えなのは間違いありません」
■段田安則(ワーニャ役)
「登場人物の皆がグチグチと不満ばかりを言っているので、最初は「どこが面白いんだ?」と思っていたんです(笑)。でも、悲劇的な状況の中に喜劇的なニュアンスがある戯曲ですし、何よりも信頼する顔ぶれですからね、チェーホフ好きの方にも、初めてチェーホフに触れる方にも、「おっ、いい感じのヒット打ったんじゃない?」「見に来てよかった!」と思っていただけるものに仕上がったと思っています」
■宮沢りえ(エレーナ役)
「チェーホフは、掘れば掘るほど底なしの深さがあって、演じていて楽しいですね。引き算も足し算もできる難しさがある分、役者として鍛えられます。私が演じるエレーナは多面的な要素をもつ女性。退廃的だけど魅力的で、保守的だけど破滅的。劇中で「肉食獣」とも言われますし(笑)、自分の衝動に対して素直な、人間味あふれるエレーナにできればと思っています」
■黒木華(ソーニャ役)
「最初は暗い印象を受けた戯曲が、KERAさんの上演台本と演出、稽古場での先輩たちの魅力的な姿を通し、不平不満や不幸の裏側の滑稽な面が見えてきて、とても面白くなってきました。ソーニャは一番若いのですが、一番現実を見ているしっかりした人物。難しい役柄ですが、一番感情移入しやすい存在かもしれません。これは、チェーホフが苦手という方でも面白く見ていただける舞台です」
■山崎一(セレブリャーコフ役)
KERAさん演出のチェーホフシリーズには三作続けての演出です。回を重ねて、僕なりのチェーホフへの理解が深まった分、ワーニャは一番手ごわく感じました。僕が演じるセレブリャーコフの見え方で、芝居全体の見え方も変わってくるので難しいなあ、と。でも、誰もまともに言葉通りのことなんか思っちゃいないとか(笑)、そんな現代的な感覚があって、チェーホフは演じていてとても面白いですね」
<ストーリー>
大学教授を引退したセレブリャ―コフ(山崎一)は、都会暮らしに別れを告げ、若い後妻エレーナ(宮沢りえ)と共に、先妻の親から受け継いだ田舎屋敷に戻ってきた。先妻の兄であるワーニャ(段田安則)は、学者であるセレブリャーコフを長年崇拝し、彼の支えとなるために、25年にも渡って領地を切り盛りしながら、教授と先妻との娘ソーニャ(黒木華)、母ヴォイニーツカヤ夫人(立石涼子)、隣人であった没落貴族テレーギン(小野武彦)と共につましく暮らしてきた。長年、尊敬するセレブリャーコフに尽くすことに疑いを抱いたことのなかったワーニャだったが、毎日共に暮らすようになった目の前の人物はいつ体調も機嫌も悪く、尊大で身勝手な態度で人を困らせるただの年寄り…。この夫妻が都会から屋敷に戻ってからというもの、人々の田舎暮らしのリズムは一変。屋敷には、常に重苦しい空気が立ち込めるようになり、そして…。
公演期間:8月27日(日)~9月26日(火)新国立劇場小劇場(東京・初台)
上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
キャスト:段田安則、宮沢りえ、黒木華、山崎一、横田栄司、水野あや、遠山俊也、立石涼子、小野武彦、伏見蛍(ギター演奏)
公式HP:http://www.siscompany.com/ojisan/
撮影:加藤孝、写真提供:シス・カンパニー