コロッケが本名の滝川広志として初主演を務める映画「ゆずりは」の完成披露試写会が行われ、滝川に加えて、共演の柾木玲弥、加門幾生監督が上映前の舞台あいさつに登壇した。
拍手で迎えられた滝川は、司会者からいきなり「武田鉄矢さん、映画初主演はいかがでしたか?」と振られ、早速物まねを披露。それでも、その後は“コロッケ”を封印し、俳優・滝川広志として「38年間、騒ぐことが好きだった人間が、動くのを全くやめて、ちゃんとした役を初めてやらせていただきました」と晴れ晴れした顔で語った。
そんな滝川に、加門監督は真面目な葬儀社の社員・水島を演じるにあたって撮影前に3つのお願いをしたという。「1つはトレードマークのもみあげを短くして、普通のサラリーマンに見せること。2つ目はトレードマークの黒縁のメガネを外すこと。3つ目は痩せること」(加門監督)だったという。「死者に真摯に向き合うということで7キロやせていただきました。千葉県の八千代市が舞台ですが、我々は毎日、撮影が終わると東京に帰っていましたけど、滝川さんはビジネスホテルに泊まり込んで市の住民になり、近所のイオンとかにも行くことで役を作り上げていました」と滝川の姿勢に称賛を贈った。
いっぽう、葬儀社の新入社員・高梨を演じた柾木は、「やっとこの日が来たと思うと緊張してたまりません」とやや硬い表情。それでも、滝川の冒頭の物まねを目の当たりにし「和らぎました(笑)」とホッとした様子を見せると、滝川が「好きな食べ物は?」「好きな女性のタイプは?」など、緊張をほぐすべく質問攻めにし、柾木もこれに「ラーメンです」「静かな人です」と答えるうちにリラックスした表情に。
映画にちなんで“ゆずりはのように誰かの思いや言葉を受け継いで生きてきた経験やエピソードは?”と聞かれると、新人時代に先輩の俳優2人が柾木の芝居の間が毎回違うことの是非をめぐってけんかになってしまったというエピソードを。その時、一方の先輩俳優が口にした「芝居は生なんだから、間なんて毎回違うもの」という言葉を糧にずっと頑張ってきたと明かした。
同じ質問に滝川は、譲り受けてきたものとして母親が残してくれたという「“あおいくま”――あせるな、怒るな、威張るな、腐るな、負けるな」という言葉を紹介。「何かあったとき、いつもこの言葉を心の中で唱えています。最初はこの言葉を他人に対して思っていたんですが、相手ではなく自分に対してのものなんだと思うようになって、いろんなことが大きく変わりました。この言葉を糧に頑張って生きてきて、こうやっていい役をいただけたんだと思います」としみじみと語った。
舞台あいさつ後の囲み取材では、舞台上での「真面目に挨拶しなくては」という重圧から解放されたかのように、“エンターテイナー”コロッケに戻り、美川憲一、志村けん、田中邦衛などのものまねを交えつつ、映画をPRした滝川。今後俳優として希望する役柄を問われると、「コロッケとは真逆がいい。邪魔にならない芝居をできるようになりたいし、それができるようになったら、主演ではなくとも何でもやらせていただきたいです」と意欲をのぞかせていた。
『ゆずりは』は。6月16日(土)より新宿K’s Cinema、イオンシネマ板橋ほか全国順次ロードショー。