芳根京子の初主演舞台『母と惑星について、および自転する女たちの記録』が、2019年3月の紀伊國屋ホール公演を皮切りに、高知、北九州、京都、豊橋、長崎で上演されることが決定した。
本作は、脚本家・蓬莱竜太が書き下ろし、2016年に旧パルコ劇場の最後を飾った舞台。日本を代表する演出家・栗山民也が、パルコ劇場最後の新作舞台のために立ち上げた意欲作で、本作で蓬莱は第20回鶴屋南北戯曲賞を受賞した。
「家族とはなにか」「女性の生き方とは」など壮大なテーマの中で、クセのある母娘4人の愛憎による人間らしさあふれる壮絶なドラマが繰り広げられる本作。母親を亡くした三姉妹が放浪の中、それぞれが抱える悩み、葛藤にどう向き合うのかを描く。
再演となる今回は、実力派女優4人が集結。三姉妹の三女・シオを演じるのは、芳根京子。舞台は15年「幕が上がる」に続き2度目の出演となり、本作が初主演舞台となる。
母親には、「フェードル」「にんじん」と近年の栗山演出作品に立て続けに出演しているキムラ緑子。
そして、初演と同じく鈴木杏が次女役を、田畑智子が長女役を演じる。
<芳根京子コメント>
◆出演が決まった時の気持ちをお聞かせください。
すごくドキドキしています。これから本当に始まるんだぁって(笑)。実は、舞台は怖いと勝手に苦手意識を持っていて、怖いから戦う前に逃げたこともあるんですが、マネージャーさんから「怖いは理由にならない」って言われたんです。一度「幕が上がる」で舞台に出演した際、同世代の方が多くて純粋に楽しかったのですが、今感じているのは“舞台”の楽しさなのかなって疑問に思ったんです。舞台によく立たれている方が悩んでもがいて舞台を創り上げている姿を見ていたので「あ、違うかも…。」って感じて。勝手に大きな壁を作ってしまったのかもしれません。
そういった経験もあり、以前から先輩方に「舞台を若いうちにやったほうがいい」とアドバイスをいただいていたんですが、あまりピンとこなくて…。でも、皆さんが言うってことは私には見えていない理由があると思いますし、実際に挑戦して自分もその感覚を味わって、今後私も後輩にかっこよく言いたいと思ったんです(笑)。そして、何より純粋に舞台をやってみたいと思いました。
一歩踏み出せなかった中で今回のお話をいただいて、しかも4人しか出ないので、舞台と向き合うのにすごくチャンスだなと思います。栗山さんにもご指導いただけるので、舞台を創る楽しさを感じられるのかなと楽しみですし、どうなるか想像がつかないのですが、絶対乗り越えたいです。
◆作品の印象はいかがですか。
初演は映像で拝見させていただきました。今回の役を志田(未来)さんは今の自分と同じ年齢で演じられていたということで、自分は果たしてあそこまでいけるのか、とても不安です。
でも新しい挑戦だからこそ、とっても大きな壁ですが、周りの皆さんに「芳根がんばってんなー」と思われるように、先輩方にアドバイスを頂きながら乗り越えていきたいと思います。
台本を読ませていただいて、自分の役のセリフにチェックをしていたら、蛍光ペンが一本なくなるほどセリフが多かったんです(笑)。
でも、それだけセリフをいただけるというのはとても幸せなことなので、一言一句大切にしながら、生のお芝居の楽しさを自分でも感じたいですし、観に来てくれたお客さんにも感じてもらえたらうれしいです。
シオちゃんという役は素の自分に近い等身大の役だな、という印象を受けました。なので、自分の中から出てくる感情を大切にしなきゃなと思いますし、長崎弁を頑張らないといけないので、きっと苦しむ3か月になるんじゃないかなと思ってます(笑)。でもやりがいがあるし、いろんな景色が見えてくるんじゃないかなと思うので、やるからにはどんとこい!って気持ちで挑んでいきたいなと思ってます。
◆本作への意気込みをお願いします。
私自身もすごくワクワクしています。
前回を観られた方も楽しんでもらえないと、もう一度やる意味がないと思うので、そのプレッシャーはあります。
まだイメージが湧かないけど、映像作品をいろいろやらせていただいた中で、舞台で生きる新しい私を見せられると思います。きっと今までにやったことがない役で新鮮に思っていただけるんじゃないかなと思いますし、皆さんが引き込まれるような生のお芝居を感じていただければなと思います。
SNSでも「舞台やらないんですか」とか、地方の方々には「イベントで地元に来てくれませんか」とお声かけをいただいていたので、今回、いろんな場所に行けるのがとても楽しみですし、実際に足を運んでいただけるとうれしいです。
パルコ・プロデュース 2019
母と惑星について、および自転する女たちの記録
作:蓬莱竜太
演出:栗山民也
出演:芳根京子、鈴木杏、田畑智子・キムラ緑子
<公演スケジュール>
■東京公演
2019年3月5日(火)~3月26日(火)
紀伊國屋ホール
■高知公演
2019年4月2日(火)、3日(水)
高知市文化プラザかるぽーと 大ホール
■北九州公演
2019年4月6日(土)、7日(日)
北九州芸術劇場 中劇場
■京都公演
2019年4月12日(金)~14日(日)
ロームシアター京都 サウスホール
■豊橋公演
2019年4月20日(土)、21日(日)
穂の国とよはし芸術劇場 PLAT
■長崎公演
2019年4月25日(木)、26日(金)
長崎市民会館 文化ホール
<スタッフ>
美術:松井るみ/照明:小笠原純/衣裳:黒須はな子/音楽:国広和毅/音響:井上正弘/映像:上田大樹
ヘアメイク:鎌田直樹/長崎弁方言指導:柄澤りつ子/演出助手:田中麻衣子・坪井彰宏
舞台監督:榎太郎・木崎宏司/宣伝:る・ひまわり/プロデューサー:佐藤玄/制作:山口萌/製作:井上肇
企画・製作:株式会社パルコ
<登場人物>
■辻シオ(三女):芳根京子
母親のことがわからない。自分のこともわからない。妊娠しているが産むべきかどうかもわからない。母親の優しい記憶と母親が自分を置き去りにしようとした記憶が混在して混乱する。「母」いうものに恐怖を持っている。
■辻優(次女):鈴木杏
新婚。夫を愛し、愛されている。母親のように結婚を失敗するまいと思い、専業主婦願望が非常に強い。しかし収入の安定しない夫と借金を抱えており、思い悩んでいる。
■辻美咲(長女):田畑智子
未婚。現実主義である。母親のようには絶対になるまいと思っている。しかし気が多く、新たに恋をするたびに別れてしまう、交際期間の長い恋人との結婚に踏み切れないでいる。
■辻峰子(母):キムラ緑子
三姉妹の記憶のイメージの中で色んな顔を見せる。時には荒ぶり、時には穏やかに、海のように大きくもあれば、路地裏のネズミのように矮小であったりもする。
<あらすじ>
三人姉妹は異国を旅行している。
三人姉妹の母親が死んで1ヶ月が経とうとしている。
三姉妹が文字通り、放浪してから1週間を超えていた。
彼女たちは、母の遺骨を抱えていた。
父親を知らない三人姉妹。母親は男を取っ替え引っ替えしては家を空けていた。酒、タバコ、博打が好きな母親だった。三人姉妹は幼い頃からおよそ母親らしい愛情を受けた覚えがない。裕福でもない。徹底的に放任されていた。
「私には重石が三つ必要なの―。」それが母親の口癖だった。
三人姉妹はその母親と闘うため、いつもよりそって生きてきた。
そんな母親の突然死。三人姉妹はどういう気持ちになっていいのか解らず、母親の生命保険の給付金で異国を旅行している。あてのない旅だった。目的もない、帰国の予定もない、特にやるべきこともない、そんな旅だった。
長女の辻美咲は未婚で、子供はいない。結婚はしたくないと思っている。
次女の辻優は結婚したばかりだ。子供がなかなか出来ない。愛に生きると思っている。
三女の辻シオは妊娠していることを隠している。自分だけは父親が違うのではと思っている。三人姉妹は母親の遺伝子を受け継いでいること、母親と同じ血が流れていることに無意識の恐れのような感覚を抱いている。
そしてある日。異国の市場に風が吹き荒れる中、死んだはずの母、辻峰子が立っているのを見る。あの母親は自分にとって何であったのか。母親の突然死は何であったのか――